2011年8月31日水曜日

コストも設計しています。

建築家としての基本的な能力の中にVE(バリューエンジニアリング)に関するものがあります。VE?なに??とお思いの方もきっと多いと思いますが、実は数多くの要素が補完し合い、複雑に絡み合って完成する建築においては、コストに対する設計能力が欠かせません。どんなに合理的で高性能で美しく知的な建築であろうとも、世間並みの価格を大きく上回るものは建てられる人も限られるでしょうし、結果として希少であるがゆえに価格的な分野で洗練されることはありません。もちろん建設費に制限のない環境は建築家として魅力的ではありますが、反面あまり社会的ではないように思うのは私だけでしょうか?(笑)。前置きが長くなりましたが、旭川の家と宮ノ丘の家(平成開拓者の家)の予算が概ねまとまり、近々着工を迎えます。バランスよくコストを下げ健全な予算の中で着工を迎えられることは毎回ながら大きな喜びです。辛抱強く見守っていただいたクライアントさん、あらゆるコストダウンの検討に嫌な顔一つせず付き合ってくれた橋本川島コーポレーションさんそして剛建築工房さん、積算担当者のみなさん、仕入れ担当のみなさん、営業担当者のみなさん、各協力業者のみなさん。この場をお借りして心より御礼申し上げます。皆さんで力を合わせてよい家づくりにいたしましょう。
                                        建築家  山本亜耕

ところでVE:バリューエンジニアリングとは?
http://www.sjve.org/ve/summary/

デフレパードなんてよくないですか?
http://www.youtube.com/watch?v=somG2lTarE8

西野の家 気密測定

 本日は西野の家の気密測定です。先日、チーム稚内が出した0.2cm2/㎡に近づくために棟梁をはじめ、電気屋さん、設備屋さん各人が自分の割り当て部分をしっかり気密化し検査に臨みます。仕事の確実さが問われるこうした試験は、ヒューマンエラーを防止するためにも、工事中と完成後の最低2回は実施したいところです。しかし断熱や気密に対する意識が比較的高い北海道ですら、完成後の確認に1回のみの現場が多いのが実に残念です。壁や天井が全て仕上がってしまってからでは、たとえ気密測定の数値がわるくても、原因や場所を特定するのは難しいのが実情です。建物の品質を上げることが目的なのですから、工事途中の修正が可能な時期に行うことが大切なのです。

気密測定中の室内の様子。減圧装置で室内の空気を抜いてゆきます。気密が高ければ高いほどビニールは装置の排気口の方向に引っ張られてゆきます。逆に気密が低ければ低いほど、室内の空気を抜いた分すぐに外から空気が入ってきますからビニールが引っ張られることは少なくなります。

室内のビニールがピンと張り、気密工事の成果が出ているのが目視で確認できます。余談ですがもうひとつ気密が高いかどうか感覚的に知る方法に、減圧装置のファンの音があります。気密が高ければ高いほどファンの風切音は静かになります。反対に気密が低いと大きく、ひどい場合には漏気部分に気流感を生じたり、笛鳴りのような現象が生じます。

1回目は0.3cm2/㎡。良い数値ですが、武田社長は少々不満げな様子。さっそく全員で漏気部分を探し、怪しい部分にはウレタンを充填してゆきます。

壁貫通部分が、稚内よりも遥かに多い西野の家ですが、大工さんは頑張ります。そうしてついにサッシの取り付けのビス穴からわずかな漏気部分を発見。さっそく武田社長自らシーリングを行い再検査へ、結果は下記の通り。家全体で23cm2に気密性が向上。すなわち、仮に家中の隙間を一箇所に集めたとしても5cm角にも満たないという結果になりました。1平方メートルあたりの数値に直すと、C値:23cm2÷108㎡≒0.2cm2/㎡、稚内と同等の数値を達成しました。現場全員が「ホッ」と安堵。最終的には計測限界ぎりぎりのC値:0.1cm2/㎡を目指します。


上段の右の数値が総隙間面積(家全体)、私を含め男5人が漏気部分を探して汗をかいたために計測開始時点では25℃だった室温が27.5℃にまで上昇。(上段左)くしくも300mm断熱の効果を体感することにもなりました。ちなみに普段は断熱のおかげで室内は外の暑さとは対照的に非常に涼しい状態です。

本日はきっとビールが美味しいでしょう。(笑)
現場の皆で成果を分かち合いたいと思います。




2011年8月25日木曜日

お宝?

日曜日は現在着工間近の「発寒の家」(平成23年度R住宅の予定)のオーナー夫妻とニセコの家の見学に。ちょうどニセコの家のオーナーと都合が合い、三者で有意義な時間が過せました。久々に見る羊蹄山。やっぱりよいところですね~。(笑)

ニセコの家ではパッシブ換気やらトリプルガラスの木製サッシやら、はたまた全体計画や窓の位置の理由とか、実は部屋の配列自体に意味があるんです。とか、照明器具は極力見えないほうがよいのはなぜか?等々、たいへん有意義なお話ができました。印象的だったのはパッシブ換気があまりに単純な原理で拍子抜けした様子の「発寒の家」のオーナーの顔でした。日本人の平均的な感性で私の仕事を眺めると確かにその単純さに驚く人が多いのも事実です。(笑)みなさんきっと「あっ!!」と驚かせてほしいのだと思いますし、暖房費が簡単に半分になったり、夏場も実に涼しかったりといった事柄に、十分な理由が(素人では想像すらできないほどの)ほしいのだと思います。(笑)確かにその気持ちは分かりますが、種明かしは少々違います。

 簡単に言えば、「自然の法則を注意深く観察して科学的に設計を行う。」これ以外になにもありません。もう少し営業上手ならばよいのでしょうが(笑)残念ながらこれが全てなのです。したがって部分的にパーツを眺めると実に原始的で、人によってはせっかくのわくわく感を裏切ってしまうかも知れません。しかし誤解を恐れずに言えば、そうした当然の設計思想や哲学によって、自然の法則に沿って科学的に北海道の気候や生活習慣に合うように家を考え作ってきた歴史こそ希薄であったことも同様に大切にしてほしいのです。

 今までの北海道の家を簡単に表現すると、「エンジン建築」と呼ぶのがぴったりくるのではないでしょうか?寒さの克服のためにひたすらカイロの数と性能を競った日々、当初のカイロの動力は石油でしたがその後ガス、電気と変わりました。30年前の家と現在の平均的な全室暖房の家では、実は暖房費はほとんど変わらないかむしろ高いのです。もちろん30年前は居間にしかストーブはありませんでしたから、家全体を暖房して価格が同じならむしろ安いと考えてもよいのかもしれません。しかし現実はそんな慰めがむなしくなるほどCO2の排出量は増加の一途をたどり、3.11に東北を襲った大震災は、今まで当然としてきた価値観を簡単に吹き飛ばすと共に、私たちの社会にさまざまな問題を突きつけています。

 「スピード感を持って安価に簡単に問題を解決する知恵」震災以降国民が政治に期待したのはこうした事柄ですが、現実はご覧の通りです。私は北海道の建築もこうした閉塞感を抱えているように思うのです。むしろ私はこうした閉塞感を打ち破るのは、新たな設計思想によるありふれた既存技術の再評価や誰でも知っている自然法則の積極的な活用だと思っています。自動車メーカーのマツダがガソリンエンジンで30km/Lの省燃費を達成しましたが、意外やほとんどニュースになりません。価格も140万円と同性能のハイブリッド車よりも100万円も安いのです。この車ならばすぐに普及が見込めますし、導入の際の国庫補助金もより安価で済みます。車検や保険も既存のものと変わりませんし、最近調達が難しさを増しているレアメタルも使いません。よいことずくめなのに日本人の価値観で見ると地味な感じがするせいか、思うほどは「おっ!」という人が少ないようです。(笑)
電気自動車(EV)やハイブリッドカーが日本的なハイテク感を満足する商品であることを否定はしませんが、必要以上にハイテクでマニアックであれば、インフラが未発達の国では敬遠されるでしょうし、価格の高さや必要以上の便利さは、本質的な価値をかえって見えなくしてしまいます。日本の携帯電話は世界一なのに、発展途上国のシェアは中国や韓国に遅れをとるのはなぜか?世界一の技術が必ずしも世界一の競争力を持ちえなくなった理由を考えること。日本の製品が喜ばれた時代、それを作り出したのは同じく日本人の価値観であったことを思い出す必要がありそうです。


発寒の家のオーナーをお送りした後はニセコの家のオーナーと駅前の倉庫を見学しました。日本でも、地域再生の鍵はもはや中央からの太いパイプ(爆笑)ではなく、自らの歴史の再発見やご当地の食、地域に暮らす人々のかざらない人柄にあることが認識されつつあります。そんな意味でも、ニセコ駅前の倉庫群はまさに町の宝ではないでしょうか?その中でもお宝の中のお宝は室内から見上げた小屋組みの木製トラスです。(三角形に組んだ部材で構成する構造体の事)材料に掛かる力を圧縮と引っ張りに単純化し(日本の和小屋は曲げ力という厄介で難しい力が掛かる)結果、非常に細い部材で安価に経済的に大空間に屋根をかけることが可能になります。ご覧のように左右の壁の上にトラスの両端が乗るので部屋の真ん中に柱は必要ありません。ちょうど体育館のようながらんどうの内部を簡単に作ることができるのです。正しく施工すれば頑丈で、豪雪地帯のニセコでも何十年間も雪の重みに耐えてきました。住宅だってこんな風に作って、高齢化や子供たちが独立又は帰ってきたときに自由に間取りを変えられたらよいと思いませんか?こうした技術はずっと以前から身の回りにあるのに、なぜか市民の多くは知りません。不思議だと思いませんか?

現在も鉄骨でトラス構造の小屋組みを作ることは珍しくありません。しかし木造のトラス構造が圧倒的に優れているのが上の写真です。なぜかって??それは分解することができるからです。溶接で繋いでしまう今の鉄骨トラスト違ってこの当時はトラスは貴重品でありまして、払い下げになった農協の倉庫のトラスが小学校の体育館の屋根に再利用されたりなんてことも普通にあったんです。まさに屋根に合わせて基礎と柱だけ作る。すっごくECOでしよう?(笑)でもなぜこうした思想や技術が発展しなかったんでしょう?

簡単な構造計算でこんな大空間を作っていました。

圧巻なのは以前にも一度登場した、増毛小学校でしょう。うーんこれならB29でも入りますね~。これを80年前に作ったとは...でもなぜ発展しなかったんでしょう?
人の大きさと比較するとどれだけ凄いか分かりますよね~。(笑)これを組み上げた大工の名前や当時の記録が少ないのはいったいなぜなんでしょう?80年後に見たって凄いのに。ここらへんの感性を磨く必要があるように思いませんか?

お話は変わりますが、ニセコの倉庫群を見学していてR住宅の生みの親、都市計画コンサルタントのH氏にばったりお会いいたしました。コンサルタントの仕事を簡単に説明すると「仕組み作り」、私たち建築家は「ものづくり」となるでしょうか?日本の住宅が世界一短いサイクルで使い捨てられていること、物を直す力が衰え、薄っぺらなものを簡単に作る分野がいびつに発達していること、銀行や不動産業から見ると減価償却を終えた建物(要は古いほどに価値がない??/なんと野蛮な!)
したがって建物の安心できる中古市場がない。(車は立派な中古市場が存在し、査定や評価基準も充実し市民に普通に受け入れられています。)そんな誠に??な先進国に一筋の光明、それがR住宅システムという、住宅再生の仕組。ご興味のある方はH氏のHPを覗いてみては?

㈱CIS計画研究所 http://www.cis-ins.co.jp/index.html

本日は、大好きなバンプどうぞご一緒に!

2011年8月20日土曜日

西野の家 上棟式

今日は西野の家の上棟式です。宮司さんを招き家内安全と現場の無事故、なにより立派に出来上がるように全員でお祈りをします。地元の神社の宮司さんは若いのに朗々と響く声が素晴らしく皆で晴れ晴れとした気持ちになりました。

設えられた祭壇。

建物の四隅を払い清める宮司さん。

午前中の雷雨がうそのように晴れ上がり、絶好の上棟の日和となりました。

皆の名前の刻まれた棟札は塔屋に納めます。

稚内へ 気密測定

8月19日は竣工が目前の稚内のオフイス案件の気密検査です。もちろん道中の相棒はDr.タギ氏、弊社の設計上すっかり欠かせないキャラクターになりました。実は今回の稚内のプロジェクトはいつもお世話になっている物林㈱さんのお手伝いです。平屋の事務所ながら、極力環境的な省エネ建築にしたいとのご相談を受け、間取り以外の部分をお手伝いさせていただきました。

外壁は、木材酸化塗料によるナチュラルな風合いが特徴です。


右が無塗装の杉材、左側が塗装したものです。通常の塗装のように木肌に塗膜を形成するのではなく、木材の表面そのものを酸化し皮膜化することで長期間木材を保護します。色はよく見るとグレーパープルの味わい深いものです。

匂いも少なく美しく枯れた風合いに仕上がります。
いよいよ気密試験開始、今回の大工さんは、ここまでの気密施工は初めてとのことですが、たいへん丁寧に取り組んでいただいて、なんと最初の1回目でC値(隙間相当面積)が0.2cm2/m2を達成しました。というわけでなんと30分で検査は終了してしまいました。(笑)今までの現場で新記録です。

押縁にビスを打ち下ごしらえをしているところ。

たいへん丁寧な仕事をしていただいたM棟梁。

現場をまとめるハート建築設計事務所(という名前の工事店さんです。)の齋藤社長さんと、最高の性能が出て満足げなDr.タギ氏、もちろん齋藤さんも大きな「ホッ!」が出ていました。

道北の夏は短い。空には秋の気配が。

大工さんが宿泊するのは、町内に借りた一軒屋。ハートさんの事務員のSさんは、凄腕の料理人でもあります。本日のお昼のカレーライス。これぞ正しき日本のカレー。量も具の大きさも現場で働く男の一人前です。けして大盛ではありません。(笑)
次の日、札幌に帰り着く頃にはオドメーターは900km目前。さてこれから上棟式です。

帰りの車の中で道北の空を見ながらこんな歌が聞こえてきました。

2011年8月12日金曜日

西野の家 上棟

みなさん暑いですね~。お元気ですか?きっと今日あたりからお盆休みの方も多いと思います。そんな中、西野の家が無事上棟を迎えました。棟を上げると書く上棟(じょうとう)は建物が無事建ちあがった大切な節目。棟梁も私も現場を預かる武田社長も一安心です。どんなに優れた設計も実際に現場で作ってみるまで分からない。一見楽に見えて矛盾があるかもしれないし、そんな意味では屋根まで作ることで、はじめて全体が見えるようになるのです。建築家にとっては今まで紙の中にしかなかった建物が実物大のラフスケッチのように現れる時間帯といったらきっと分かっていただけるでしょうか。(笑)

尊敬する先輩建築家の小室さんから教えていただいたシート防水とフラットなテーブル屋根。屋根の排水構造や凍結防止設備が必要ないために、シンプルに陸屋根を作れます。もちろん雪下ろしの必要はありません。雨水はテーブルに溢したコップの水よろしく、軒先から地面へ落ち、一般的な雨水同様、敷地内で浸透処理されます。写真はシートの専用溶着液、シートの溶接に用います。

重ねたシートの中に溶着液を注入しているところです。

屋根屋さんはおなじみ、旭川のプロテックさん。仕事は早くてきれい。屋根の上は灼熱地獄なのでこのいでたちです。

出隅の水切り部は丁寧な仕事が求められる部分。溶着下地を増し張りし対応します。

断熱に限らず、防水や日射遮蔽といった技術力を高めることで建築の可能性が飛躍的に高まります。写真はシンプルな垂木組(屋根組)を断熱された天井の上にちょんと載せていることが分かる写真。屋根の寿命が来たら、写真中央の白い紙の上のみ修理or交換すればよいという設計になっている。一方現在主流の屋根組み自体が建物の構造を兼ねるスタイルだと、屋根の痛みは≒建物の構造の痛みとなってしまう。弊社の設計の特徴は建物の外皮を容易に着替えるスタイル。要は外装と構造(断熱+気密も含んだ)のフィル、インフィルを実現しています。


屋根の上に突き出た3階部分のはと小屋。これにより建物の高さを稼ぎ、安定した自然換気(パッシブ換気)を実現する。(もちろん屋根に出ることも可能です。眺めもよいです。)

垂木と直角方向に空気が流れるよう欠き込みを入れている。現場を担当する内野沢棟梁のきめの細かな仕事です。

現時点で外壁の厚みは25cm、さらに室内側に5cmの断熱材が加わるので合計30cm断熱のGW(グラスウール)の入る西野の家です。

全体の坪数は33坪と、こじんまりした西野の家ですが、LDKは一体で19畳もあります。その写真が上、一見分かりづらいですが、大断面の梁を通常の1.8m間隔ではなく90cm間隔で掛けることで、間口、奥行きそれぞれ5.5mの無柱空間としています。天井は外貼り断熱化されているので豪快な梁姿が室内から楽しめます。構造が隠れていないということは、普段からメンテの目視が利き、天井を貼る事で部屋の高さも低くはなりません。

天井を見上げたときにリズミカルな印象となるように落とし根太としてあります。ハシゴ状の連続が西野の家の天井の特徴です。この状態で梁の下で2.23m、梁の上までだと2.5mもあります。

羽子板ボルトや隠蔽部分の気密化の様子。後から手が届かない部分は幾重にも手をかけておきます。

二階の一部が跳ね出し、下が玄関になる構成。水平線と垂直線でシンプルに外観デザインをまとめようと思っています。先ほどの天井パターンが見えていますね~。(笑)

今日は建築に恋している全ての人に贈ります。

2011年8月11日木曜日

素敵なお店

実は、仕事場のすぐ近くに気になるお店がありました。オープンしたのは半年以上前、しかしなんとなく気にはなっていてもずーっと入れなかったのです。先日勇気を出して行って来ました。
この雰囲気で焼き鳥屋さん。お店も店主と共同経営者二人の手作り、なかなか雰囲気があって気に入ってしまいました。メニューも豊富で美味しくてリーズナブル。発寒に事務所を移して5年目になりますが、帰りに寄れるお店が増えて幸せです。
 実はこのお店の隣にも先日新しいお店がオープン。ラーメン屋さんなのですがこちらもなかなかに美味しいです。一時は寂れる一方(今でも少々そのきらいはありますが/笑)の印象の発寒でしたがこんな風に少しづつ活性化してほしいです。

最近は若い人ほどセンスが良いですよね~。

お店でも聞こえていました。

2011年8月7日日曜日

お勧めミートソース(お父さんと作る)

 明日は妻と子供たちが札幌に帰ってきます。夏休みで妻の実家に一緒に帰省したのです。かくいう私は、昨日旭川から戻り、今日は事務所で図面を書きつつ予算調整の仕事をしています。最近、巷では「育メン」といって積極的に子育てや家事に参加する男性が増えているとのことですが、私としては誠に嬉しい限りです。日本の男性ももっと家族のための時間を大切にするべきですし、家族と楽しみながら、子供たちに家庭の味を(昭和の頃、味の分野はもっぱら「おふくろ」まかせでしたが/笑)伝えてほしいと思います。
 さて今日は我が家のミートソースをご紹介します。もともとは学生時代にバイト先の洋食屋の料理長から教わったレシピですが、たいへんシンプルで美味しいので子供たちには大人気です。男の子なら、カレー、ハンバーグ、ミートソースといえば三大好物なのではないでしょうか?そんな意味ではこのブログをお読みの数少ない独身女性の方にもぜひ試していただきたいと思います。(笑)

材料:(4人前)
ひき肉300g(70g~80g/人として計算)
トマト1kg(家庭料理なので種類は問いません。)
にんにく一かけ(みじん切り)
たまねぎ中1個(粗みじん切り)
赤ワイン(安価なもので可)
ハーブ類(特に決まりはないが、ローリエ、セージ、パセリ、オレガノ等)
スパイス:ナツメグ(ひき肉料理にはたいへん愛称がよい。)
水:100cc
塩:少々

まず材料をよく洗い。

大きなトマトは半割にしてスプーンの柄を使って種を出します。本来のよい仕事はトマトに隠し包丁を入れ熱湯にくぐし湯剥きした後にこのように種を取りますが、今日はながら仕事の間に作る家庭料理ですから、ざざっと大雑把に簡単に行きます。

完熟したトマトならミニ、中球、大玉なんでもOKです。大きいトマトの種だけとったら、小さいものはそのまま乱切りにします。

100CCの水と塩一つまみを入れて水煮にします。

沸騰したら焦げ付かないようにかき混ぜながら、中火で火を入れてゆきます。レストランのよい仕事は、ここでトマトのあくをとりますが家庭料理なら植物のあくはさほど気にしません。

七分目まで煮詰めたらピーマンを一個丸ごと入れます。但し投入後10分程度したら取り出すので、けして最初から入れてはいけません。

投入直後は水っぽかったトマトソースが約10後には

こんな感じになります。やく半分のかさになるまでトマトを煮詰めたらトマトソースの完成です。

これからは、もう一つのレンジでミートソースのお肉部門を解説しますが、実際はトマトの調理と平行して行っています。
 フライパンにオリーブ油大匙一杯を熱しひき肉300g程度を炒める。

ひき肉を使った料理で大切なことはひき肉の水分を十分に飛ばしてから次の工程に移行すること。このコツを守らないと、なんとなく獣臭さ(肉のあく)の残る仕上がりになってしまいます。目安は油が澄むまでしっかり炒めること、水分が残っていると、油は白く濁って見えます。

もう一つミートソースを一段美味しくするコツは狐色にひき肉を焦がすこと。但しけして焦げ付かせてはいけません。最初はずっとフライパンとにらめっこかもしれませんが、慣れてくると弱火にして仕事をしながらたまにかき混ぜるといった程度で、なんとなく上のような感じになればOKです。
 料理長曰く:「なぜ家庭で洋食のプロの味が出せないか?焦げ=苦味=旨みを知っている人が少ないから。」だそうな、たしかに家庭では焦げることは、失敗=わるい事と考えられる傾向が強く、はじめて聞いた時は目からうろこでした。

しっかりきれいな焦げ目が付いたら、たまねぎの粗みじん切りとにんにくのみじん切りを投入する。

よく混ぜて、再び弱火にして蓋をし、たまに見ながら、たまねぎがなくなるくらいまでしっかり火を通してゆく。料理長曰く:「第二のコツはたまねぎを普通の家庭の三倍じっくり炒める」だそうな、理由を聞くと、洋食では基本的に砂糖やみりんを使わないから、旨みの根幹になる甘みはねぎ類をじっくり炒めることで得ることが基本との事、旨みはコンソメや旨み調味料と考えていた自分にはまたまた目からうろこ。

ここで隣のトマトソースの濃度を確認しておく。この程度の濃度は必要なので薄い場合は煮詰めておく。パサパサとしたトマトの皮の食感が苦手な人はこの後ざるなどで裏ごししておく、種も皮もきれいに取れてソースがより滑らかになります。

先にも書きましたが、ひき肉に狐色に焦げ目を付ける事で、獣臭さはほとんどなくなりますが、それでもお肉くさいのは苦手という方は、ハーブをそのまま投入して下さい。写真はパセリ+オレガノ+セージ。後から取り出しやすいように刻んだりはしません。蓋をしたフライパンで蒸し焼きになったハーブが香りをお肉に移してくれます。

たまねぎがどんどん炒められ水分が甘みに変りかさが減ってきました。しかしここで油断してはいけません。もう少し根気よく炒めて...

このくらいになるまで炒める。ほとんどたまねぎの姿は消失。ひき肉の苦味に甘みが加わり、このままでも十分美味しい。何度も書きますが、最初は加減が分からないのでフライパンとにらめっこだと思いますが、慣れると弱火にして→蓋して→放置で全く問題ありません。もちろん途中で数回はかき混ぜますけど。
ひき肉はかなりぽろぽろ、たまねぎは姿を消してしっとり。が頃合です。

フライパンに、でき上がったトマトソースと赤ワイン(100cc)を加え再び加熱します。(10分程度)目的はアルコールを飛ばすことと、肉とトマトを馴染ませること。料理長曰く、焦げの苦味、たまねぎの甘みに、ワインの渋みを加えるのだそう。渋みというのも、そういえば、家庭料理ではほとんどお目にかからないジャンルの味覚。料理って奥が深いよなーと当時も思った次第。

最後にナツメグを二振り程度投入し完成。旨み調味料もチキンブイヨンもまったく使わない。料理長曰く:「洋食の煮込み料理は次の日が旨いよね、前の日に仕込んで次の日の夜に出すのはそういう訳なの。」だそうな、しかしここまで読んでくれた方はきっと辛いでしょうから、そのままパスタと絡めてください。(笑い)、最後に料理長曰く:「ナツメグの後に塩+コショウをしないのは、パスタをゆでる際に、お湯に1パーセントの塩が入っているから、」なのだそう。実際に、料理長はフライパンに茹で上がったパスタと昨日作った塩の入っていないミートソースをいれ、レードル(お玉)でパスタのゆで汁を加えながらソースの伸び具合を調整し、最後に塩+コショウで味を付けていました。

最終的なソースの濃度はこの程度、理想を言えば次の日が食べごろ、冷蔵庫に入れると乾燥が進み、水気がさらになくなるので、調理長のように、塩味の利いたパスタのゆで汁で濃度を緩めパスタにからみやすくした後に味を付けるのが理想となります。

タッパーに入れて家に持ってかえります。今の時期でも冷蔵庫で一週間はもちますから、時間のあるときに作り置きもよいのでは?

ところで、料理の話題の後にこの曲懐かしくない?(笑)/蘇れ~っ!!

http://www.youtube.com/watch?v=Kg1IjbIBXZQ&feature=fvwrel