2020年4月28日火曜日

常盤の家 板金工事

「常盤の家」の窓下水切り。いつも先端を15mmでピシッと曲げて下板と合わせて薄くシャープに作ります。

飛栄建設さんの板金屋さんは(有)赤塚板金工業さん。飛栄さんの協力業者さんは若い社長さんが多いけど、赤塚さんもその一人。設計者の好みをよく聞いてくれていつも凄くカッコよく納めてくれます。
有限会社 赤塚板金工業HP https://www.akaban.jp/business.html

こちらが水切りの上板。先端に下板をひっかけるレの字の加工が見えますか。ここに短い下板を引っかけて水切りを下から見上げても裏地が見えずかつ二枚合わせにすることで丈夫に作ります。

こちらは下板を加工しているところ。職長さんは短い差し金とハサミ一丁で鉄板を自由自在に形作って行きます。本当に見ていて気持ちがいいくらい。

見る見る水切りの形になってきました。今は水切りの裏を見ています。先端は二枚合わせで丈夫に、見上げても板材の裏のグレー色が見えないように・・・

ペンチで掴んでくいッと曲げて、狂いが出ないように正確につかんで整形します。

端部を折り返して、木口方向(断面方向)に蓋をします。

ボンドを付けてシュッと下地に滑らせるようにかぶせて隠し釘打ち。見てよ0.35mmの薄い鉄板でこんなにきれいな水切りを作るなんて・・何度見ても凄い!

釘は外装の板で隠れる絶妙の位置・・くう~っ職長!さすが~っ(笑)

折り紙と同じ要領で薄い一枚の鉄板が山折り谷折りを駆使して、こんな風に直進性の高い立体に仕上げられるんです。

こちらは小屋根の軒廻り。こちらもピシッと・・今度は継ぎ目なく加工されているのが分かるでしょうか。

山本さん、私らが運搬しやすいように短く切って現場でつないだら嫌だろうと思って一枚加工にしておきましたよ(笑)そんな赤塚社長の声が聞こえてきそうですね。
                     
通常はこんな風につなぎ目が入ります。

こちらは、薪ストーブの煙突の屋根欠き込み。色が白っぽく見えるところまでが屋根のシート防水。その下に黒く続くのが板金。

つまりシート防水の屋根を完璧に作るためには板金屋さんの優れた技術が欠かせません。

屋根のシート防水の立下りとそれに取り合う板金の軒包み。こちらは樋と取り合うので軒の出が10cm短いタイプです。

今日はエンニオ モリコーネを聞きながら一日テレワーク・・
なんだか映画が見たくなりますよね~(笑)



2020年4月25日土曜日

常盤の家 防風透湿シートまで完了

屋根のシート防水が完了し、軒先とシート防水との取り合いや、腰水切、窓水切がほぼ完了した「常盤の家」です。

ここまで来ると後は、通気胴縁(外装下地兼)を打ち付けて外装の木貼りを始められるようになります。 
こちらは薄く跳ね出した軒先を下側から包み込んだ板金の仕事。

こちらは屋根面のシート防水。端部の立ち上がりは壁の通気層に屋根面の水を回さないための工夫。 
壁との取り合いの両端部をしっかり確認します。

二階のテラスの下地もこんな風に防風透湿シートとの取り合い部分をしっかりテーピングします。 
階段室の踊り場が空中に跳ね出した南西側立面です。外壁の防風透湿シート(タイベック)が全部赤文字(3m広幅)なのが分かりますか?赤文字のシートは幅が広いので継ぎ目を減らして建物全体を覆うことができます。

こちらは赤文字のシートと青文字のシートが混在しているのが分かりますか?青文字は幅が1mの防風透湿シート。常盤地区は山から降ろす風が意外に強いので防風と開口部の保護のために袖壁付の庇を取り付けています。

窓が木製でも樹脂でもほんの少し軒や袖壁で開口部を保護しておくと、後々の耐久性がぜんぜん違います。北海道の家の屋根は重たい雪を意識的に落とさないように作ることが多いですから、雪のない地域のように深く跳ね出した軒の出が難しい場合もありますが、開口部を守るための軒の出や袖壁は非常に有効です。

意外なことですが壁を厚く断熱する「300mm断熱の家」を主に作るようになってサッシのトラブルは減りました。壁の断熱が今の半分だった頃は、サッシが外壁より飛び出してしまい、そこで通気層内の水が堰き止められ・・サッシの上枠から漏水なんてこともありました。しかし壁が厚くなったことでサッシは外壁より室内側に引っ込みそうしたトラブルもなくなりました。

今日はなんかビートルズが聞きたいです。

話しは変わりますが・・新型コロナウイルスと日々戦う医療従事者のみなさん、子供たちを見守って下さる先生方、平常業務をこなしながら道民や市民の不安と向き合う公務員さんたち、不安を抱えつつも日々精一杯現場で働く職人のみなさん、工務店さん、現場監督さん、建材を供給いただく多くの生産者やサブコンストラクターのみなさんに心より感謝申し上げます。現場がある以上・・テレワークでロボットに作らせる訳にもいかない・・だからくれぐれも注意深く。GWはしっかり休んでまた頑張ろう!

宮の森の家Ⅱ基礎工事

「宮の森の家Ⅱ」は型枠の組み立て中です。コンクリートの打設は今回を含めて後二回。基礎をなんとか連休中に終わらせて、連休明けから建て方開始予定です。

半分枠が付いた状態。鉄筋の見える内にケーシング(管)等の確認を終えておきます。

白く見える断熱材は基礎の外周部分。排水管の個所数と高さを確認。また正面には、外周に直行する袖壁部分が見えます。床近くが暖房管用のケーシング、上に見えるのはお湯と水の配管用です。

こんな感じで、二回目のコンクリート打設まであともう少し!頑張れ基礎屋さん。

基礎断熱部分に直行する地中梁の鉄筋です。しっかり通っています。

今日はビートルズなんていかが


2020年4月22日水曜日

常盤の家 現在の現場の様子

ガデリウスの玄関ドアが設置された「常盤の家」の玄関ポーチ。もちろん多雪地域なのでGL~1階FLまでの高さは屋外のポーチで稼ぎます。

温暖地でよく見られるようなGL+100のポーチで玄関に引き込みそこから式台2段で1FLみたいな高さ処理は私の場合はあまり行いません。

チークの突板が貼られたガデリウスのSV00はすっかり定番になりました。幅1m×高さ約2.2mのドアとしては今のところ非常に高いコストパフォーマンスです。

普段のメンテナンスも付属のワックスで拭くだけなので簡単です。こうしたスウェーデン系列の玄関戸は北海道では昔からスウェドアの愛称で数社からリリースされてきたので信頼性も高くて安心です。

さて本題の付加断熱ですが、下地にGWを充填したら上から石膏ボードで覆います。これは木張り外壁の防火性を高めると同時に、22条地域(屋根の不燃化地域として札幌市では全域指定)内で必要な準防火構造を満たすためです。

防風+防水+透湿シート(タイベック類)はこの石膏ボードの上からピシッと貼りその上から通気胴縁で押さえます。

GWの膨らみにタイベック類が影響されなくなるのでもの凄く通気が効くようになります。

開口部を守る庇や袖壁もタイベックの上から取り付けます。屋根も壁も基本的に断熱構造を優先させ軒の出なり庇や袖壁はその外側に後付けして行くという考え方で、断熱構造をあちこちで切断しないことがとても重要です。 
左側に袖壁の梯子が出来上がってきました。


屋根の通気垂木(軒の出)はタイベックで覆われた断熱構造の上に通気と断熱構造を絶対に邪魔しないように取り付けます。 
通気垂木の間隔は45cmですが、その間が通気層と雨水混入時の排水路として機能します。排水路ですので当然壁の通気層と連続させておいて、雨水が地面に落ちるようにしておかねばなりません。

もう一つ大切なことは通気層の通気は低いところから高い所へ抜けるというような、一方向の流れのみを想定して作るのではなく直行方向にも抜けるように、通気垂木を加工しておくことです。また通気垂木の高さを9cm以上取ることも充分な通気量を確保する上で大切です。

今日はBuena Vista Social Clubなんていかがでしょ・・うーんハバナを歩いてみたい。



2020年4月20日月曜日

常盤の家 付加断熱下地工事

「常盤の家」の現場では、14cm厚のグラスウール(以降GW)による付加断熱の下地が完成しました。

今まで何となく300mm断熱の現場を進める上でのコツが伝わったでしょうか?

1:急いで屋根から作り一日も早く雨の心配を除く。屋根のタイベックは壁に垂らしておいて壁ができたらすぐにつなげるようにしておく。

2:屋根ができたらすぐに外部の付加断熱を優先し一気に タイベックまで集中して終わらせる。屋根とつないで一安心。

3:大工さんを外部班と内部班に分けて作業を進める。
なんとかここまで来ました。屋根直下に30cm間隔で並んだ屋根通気の欠き込みが見えます。

付加断熱は内部の柱、間柱と約20cmずらして熱橋にならぬように工夫します。上の写真は中央に釘が二列見えますがここに柱があります。

こちらはコーナー部分。付加断熱下地が跳ね出して、コーナー部分に熱橋を生じることなくGWとGWが直接連続します。

屋根の通気は必ずクロスに取ります。屋根の通気層は最低30mm以上と決まっていますが、効果を確実に狙うならば90mm以上が必要です。

みなさん、今晩はStay The Nightで(笑)


2020年4月19日日曜日

屋根巡り


写真は「氷堤」(ヒョウテイ)と呼ばれ、冬の北海道の屋根にはアルアルな現象です。

その原理は1:室内の暖房熱が小屋裏に逃げることで屋根を温め→2:屋根に積もった雪が融けて軒先に向けて流れ出す→3:しかし軒先の下には熱源となる部屋がないために落ちずにそこで凍り付く→4:そのサイクルが繰り返され軒先の上で重たい氷の塊が成長する→5:氷の重さに耐えかねて軒先が折れる・・・というものです。

こちらがその折れた軒先。見事なほどポッキリ行きました。たかだか60cmも出ていない軒でも、氷堤を生じてしまえば、軒先なんて実に脆いものです。

日本建築の伝統は深い軒で雨から建物の足元を守ることですが、北国では中々そうも行きません。こんな風に既存の技術が果たしてどこまで通用するものなのか?

理想の雪国の屋根を求めて・・長い長い試行錯誤の旅が始まりました。
こちらは軒裏から撮った写真ですが・・破風も軒天場も見事に壊れてしまいました。


一時期、厄介者の雪は屋根から早く落としてしまえ、屋根に載せたままだと地震が怖いから!という・・一見・・さも正しく聞こえそうなコンセプトを取り入れて雪の落ちる屋根を街中でも作った時代がありましたが・・結果はこの通り。軒下にある1階の窓は落雪の衝撃で吹き飛ばぬように、分厚い足場板で塞ぎ、最大積雪時はほとんど採光も難しくなりました。

写真を撮ったのは3月ですが、無落雪の家(雪は屋根の上に載せたままの家)の軒下にはほとんど雪が無くて歩道も使えるのに、落雪型の家の方は多くの残雪が残り歩行者は車道を歩くしかありません。
最近では見た目は勾配型の屋根でも、雪は落とさず載せたまま。太陽熱で効率よく融雪させて安全な水に戻してから軒先の樋で排水します。

家中で最も日当たりの良い屋根は、さながら融雪用のフライパンに早変わりし、凄まじい効率で安全に融雪を行ってくれます。

パッシブな設計!等というと・・とかく窓からの日射熱で暖房費を抑える話しになりがちですが、雪という気難しい隣人とどう付き合うべきか?たいへん長きに渡った問いの答えは実に意外なものだったのです。

屋根から雪を落とすという発想は一見、理にかなっているように感じますが、雪を融かす上で、最も都合の良い場所から、わざわざそうではない場所へ危険まで冒して雪を動かすという・・誠に?な設計思想だったというオチに今は気付いたのでした。
今でこそ考えて見れば分かりますが・・小さな住宅でさえこんなに積もる屋根の雪を落とそう、落ちた雪はどうしよう?なんて真剣に一時期は考えていたなんて・・笑っちゃいますね・・でもそれが人間なのだと思います。中々最初からスマートには行きませんよね(笑)

こうした難題が解決できたのは卓越した技術を持つ地域の板金屋さん、氷堤の原理を解明した研究者さん、解決策を普及させるために尽力した地元各自治体さん、北海道建築指導センターさん、そして学びを深めた作り手のみなさん・・多くの人の力が従来の屋根の常識を覆したのだと思います。

今日はU2なんていかがでしょう。







2020年4月18日土曜日

宮の森の家Ⅱ耐圧板打設

工事看板も立てていただいて現場は順調に進行中です。



「宮の森の家Ⅱ」は現在、床下の耐圧板打設が完了いたしました。

そもそも従来の「床下」というものは作り手が作ろうとして出来るのではなく・・床を貼ることでその下に結果的にできる(残る)空間でした。けして床の上に作る部屋のように、こう作ろうとして得られるものではありません。その一方、床下を室内空間として使うためには、その目的を見付けることと同時に、雪解けや大雨等による水の侵入を防ぐ必要があります。

床上の部屋を少しでも良く作ろうとするのと同様に、作り手が積極的な視点で、床下を水の侵入から安全で、断熱された室内としてしまえば、北国の住まいにとってたいへん好都合なあらたな空間が手に入ります。

もちろん見た目は床下でも室内の延長ですから計画的な換気や暖房。空間として使い、維持管理するために必要な照明を設置すれば、天井は低くとも・・ほぼ一階の床面積に等しい広大な空間が出現します。

こうして得られる床下空間が画期的なのはその費用対効果からも明らかです。

まずは防湿コンクリートと呼ばれ、なんと床下を使う?使わない?に関係なく設置が義務付けられているのです。本来の目的は床下の防湿→結果的に床として使える(〇)

は布基礎と呼ばれ家の土台を水分の多い地盤から少しでも遠ざけるために最低40cm以上の高さで作ることが定められています。
本来の目的は木材の保護→結果的に壁として使える(〇)

天井は1階の床を貼ることで結果的に出来上がります。
本来の目的は1階の床を貼ること→結果的に床下から見上げると床材の裏が天井に(〇)

実は同じ30坪の家を建てても床下が使える家と床下はあれど入ることも使うことも出来ない家とでは全く住まい手に取っての価値が違ってきます。
                     
写真は「澄川の家」の床下空間ですが、実はこれだけの空間があることに通常は気付かづに私たちは床の上で暮らしています。(笑)私は北国の設計者としてこうした空間を住まい手のために使えるようにしたいと思います。

このゴム製の板のようなものが止水板。コンクリートのつなぎ目の漏水を防止します。 
こんな風に室内とする床下の外周部分に取り付けて、外部からの水の侵入に抵抗します。細かな点ですが、上からコンクリートを流し入れた際にこの止水板が倒れぬように、鉄筋で挟んであるのが分かるでしょうか?

基礎屋さんの経験から来る技量の差がこんなところでもよく分かります。

今日はThe Policeなんていかがだろう・・カッコイイ




2020年4月16日木曜日

常盤の家シート防水工事

昨日は「常盤の家」の屋根防水工事。担当するのはプロテックさん。
北海道の屋根は雪を落とさない無落雪屋根が今やお約束。そのためには誠に長い道のりがありました。 
特に半年にも及ぶ冬場・・屋根上に長期間雪を止め置かねばならぬ場合、板金での施工が難しい勾配3.5寸以下の緩勾配屋根は高価なステンレス防水しか選択肢がない時代もありました。

そんな中、11年前に先輩建築家の小室さんに教えていただいて始めた画期的な屋根がこのシート防水の屋根です。自分的には「小室屋根」と呼んでいます。

最初は勾配0の陸屋根から始まり、11年の間に勾配屋根でも雪が落ちないように雪止めを開発し改良を加えました。

屋根の上から見ると従来のスノーレーン(内樋)式のM型屋根(一般的な北海道の陸屋根)が見えます。

実は北海道の屋根と温暖地の屋根の決定的な違いは雪や氷という個体を相手にするか、はたまた雨という液体を相手にするか・・つまり元は同じ水でも、固体か液体かで求められる形は全然違うということです。

北海道の板金屋さんにとってこうしたM型屋根の板金工事は珍しくありませんが、「軒先に向かって勾配を取るのが屋根である」と教育された専門職にとってはある意味、非常識な屋根型かもしれません。だって建物の中央に水を集めなさいと言うんですから・・(笑)

シートはデスクで屋根の垂木に点留めされ上から防水パッチを溶接して行きます。全面接着ではないので夏冬の温度差にもシートは楽に追随します。

こちらは工業用ドライヤーによる溶接の実演。まずはシート同士を温めて少し溶かし

くっついたらもう剥がれません。こんな風にして緩勾配ながら非常に防水性の高い屋根を作って行きます。

たかが無落雪・・されど無落雪、屋根における北海道の独自進化の裏にはこんな事情がありました。

今日はやっぱバンアパがいいっす!