2010年9月6日月曜日

家作りとは春夏秋冬なり。



家作りを目指す方々へ

拝啓

いつもブログをお読みいただいてありがとうございます。ほんの少しだけためになるアドバイスを目指して今日は、建築と旬のお話です。

いまや社会のキーワードは便利。そう ベ.ン.リ であります。
便利を辞書で引くと

【便利】
1:目的を果たすのに都合の良いこと。あることをするのに重宝で役に立つこと。
だそうです。しかし現代社会の便利とは

1:工夫せずに目的が達成できる事。(面倒くさくないこと)
2:常識的な時間や時期、方法を守らず又は知らずとも思い通りになる事。
更に付け加えるなら、
3:慣れすぎると自らのためにならないこと。(知らずに損をしていること。)
最後には、4:そんな自分にいつの間にか気付かなくなっていること。

とはならないでしょうか?(笑)けして皮肉を言うつもりはありませんが、実はこの便利というのを少しだけ見直すと、家作りを目指す方々にとってとても良いことが多いのです。

1:土地は秋にじっくり探す。
一般的に春先に物件はよく動きます。ほんとうによいものは、わざわざ広告掲載料を払ってNET広告など打たなくても売れてゆきます。広告に載せる理由は、売りずらい又は上手に工夫しなければまともな家が建ちにくいからです。狭小地や旗竿敷地のような一見難しそうな土地が良い場所に格安で出ても、売買の足が速いために、買い手はその有効な使い道を考える間がありません。私たち建築家も年度始めの着工前準備やあと一歩の見積もりの詰めやらでそうした工夫を要する土地の相談(シュミレーション)に時間が割けない場合も多いのです。

土地は秋口から雪が降る前に手に入れましょう。その理由は1:お盆明けの一番土地の売れない時期にじっくり土地を探す方が時間的に有利。2:価格も底値が出やすい。3:雪がないので土地の測量や地盤調査が容易に行えます。4:来春の着工が前提なので心理的に余裕が持てます。

意外や意外この4項目だけでも知っているのとそうでないのは大違い。私のクライアントさんのお話でも、「家作りでたいへんだったことは、時間がない中で決断せねばならなかったこと。」とおっしゃる方が多く、当初想像していた、予算やデザインはむしろ建築家がさまざまな提案をしてくれるので、苦労はあれど心強かった。」という感想の方が多いのです。

2:冬にはじっくり考える。
土地を手に入れて、測量やら地盤調査を終えたなら、北海道の長い冬を使ってじっくり設計をします。考えてみれば雪が降って全てが凍りつくこの時期によほどの理由がない限り、ものを建てる事はお勧めいたしません。旬に逆らって現場を始めても毎日の除雪や凍害防止の養生に現場の採暖、春先に行えば、本来まったく必要のない経費ばかりが掛かります。お金を捨てているようなもので実にもったいないことになります。出来栄えも春先の気候の良い時期に比べるとばらつきが出易いのが気になります。

3:雪解けをまって春~夏には着工します。
春は着工の季節です。夏に向かってどんどん季節は穏やかになり木材を乾燥させ、コンクリートから水気が抜けて強度が増します。現在の木造の主流は狂いの少ない集成材ですが、この時期の建物が最も材の狂いが少ないのをご存知ですか。

4:秋から根雪の降る前に完成させます。
9月後半から遅くとも12月前半までに完成引渡しを行います。夏場の太陽によって程よく湿気の抜けた家は、最初の年から暖房の効きもよく、冬も暖かに感じます。北国の冬を旨とした作りが実感できるのもこの時期ならではです。

まとめ

今の時期、毎週住宅展示場に通っている方はむしろ土地選びに集中してください。雪が降ると土地は自然と選べなくなってしまいます。一方家の性能は季節の厳しいときに行った方がむしろよく分かりますし、現場が暇な時期ほど考え事には最適です。ほんの小さなことですが春夏秋冬、時期を見て、その季節のよさを精一杯引き出して、皆さんにとって悔いのない家づくりにして下さい。日本人なら誰もがもっている旬の感覚を思い出して楽しみながら家作りに臨んでほしいものです。みなさんの健闘をお祈りしています。

南あいの里の家 型枠工事

南あいの里では基礎の型枠工事が始まりました。本日も少し涼しくなったとはいえ、蒸し暑い中工事は進みます。
設計では、外側10cm、内側7.5cmの断熱材を用いる予定でしたが、両方とも10cmにして基礎の断熱性能を更に上げることにしました。左に見えるのがアンカーボルトでです。基礎巾の中央に来るように調整します。


左側より外断熱10cm、基礎巾15cm、内側断熱に10cmです。

菊水の家 配筋検査

本日は、菊水の家の配筋検査です。要領は構造図とよく照らし合わせて、鉄筋のサイズ、本数、間隔、結束の具合、ぐらつき、定着長さ、補強筋の位置、ベース底盤の被り厚さ(鉄筋がコンクリートに覆われる厚み)等々を確認します。最近では、医療で言うところのセカンドオピニオン。施工者と設計者の他に瑕疵担保責任保険の検査員(建築士)の検査にも合格せねばなりません。監理者としては緊張しますが、長い目で見るとむしろ良いことの方が多いのです。自分以外の目で客観的に現場を見てもらったり、アドバイスをもらうことに聞く方も言う方もどんどん慣れることで結果的にはミスが減り品質も向上すると思います。


基礎の十字交差部は鉄筋の混み合うところ。縦筋(垂直方向の鉄筋)に対して外廻しか?内廻しか?後ほどセットされるアンカーボルトが基礎の中央に入るクリアランスは取れているか?確認して廻ります。余談ですが、菊水の現場は、現場所長の好みで、基礎の底に捨てコンを敷く方法です。ビル物出身の所長の多くはこの捨てコンに直墨(直接線を引くこと)を出してゆく方法を好む人が多いです。反面、木造出身の所長達はあまり捨てコンを使いません。作る基礎の横に平行に水糸を張り、そこを基準に寸法を追い出します。つまり図面の寸法に平行に離れた分の寸法を絶えず足して図面通りか否かを確認してゆくのです。図面寸法が3.6m、逃げ寸法が0.2mならば基準から3.8mで図面どおりといった具合です。前者は洋風の工法に属し、後者は和風の工法に属します。寸法の押え方一つでもいろいろな工法があって興味深いものです。