2016年8月1日月曜日

円山西町の家 建て方開始

気温32℃、湿度80%の暑くて息苦しい空気の中、予定通り始まった建て方工事。まずは気密レール、土台敷き、大引、鋼製束、根太の順。明日はクレーンを入れて一気に建ち上げて行きます。
 
今日は大工さん4人で暑い中、ほんとうにごくろうさま。
脱水症状に気を付けて、お茶の差し入れです。(笑)
 
土台と大引の間に見えるのが床下暖房の温水パイプ。最近では大工さんの土台敷きの前に終らせてしまいます。床下に僅かな熱源を入れることで建物の完成時期を気にせずいつでも床下のコンクリートを温めて乾燥を促すことが可能となります。結果的に床下はいつでもすぐに乾燥するのでカビや結露を避けることができます。比較的乾燥した気候と言われる北海道でも床下に熱源と換気の備えが不十分だと基礎断熱の良さを生かすことができません。
 
300mm断熱の家の場合はほとんどの場合、家全体の暖房用熱量(外気温:-13℃、室温22℃時)は最大で3kw以下(換気:0.5回/時)とできますし、照明や調理、家電や人体の発熱も有効な熱源として利用可能になりますから、床下の温水パイプは写真のように基礎外周部に少しだけで充分です。私も昔は住い手さんに寒いと言われるのが恐くて床下全面パイピングのような現場をやりましたが、熱源の面積を増やすことで、かえって部屋ごとの温度調整は難しくなり、最小にしても暑苦しいと言われる始末。(笑) しかし今では断熱に応じて、安全に減らしてよい暖房設備の大きさが分ってきましたし、暖房を「快適温度」と「快感温度」に分けて捉え、それぞれに適した解決策(暖房器具や方式)を割り振ることで、人によって感覚の異なる「暖かさ」という課題に概ね答えることができるようになりました。
 
従来のように、断熱化に伴って、設備もどんどん大規模になり同時にコストもUPするといった悪循環から開放されると、設計者本来の仕事である空間作りやそれに関連する様々なマネージメントの余裕が生まれてきます。この感覚はぜひ若手のみなさんに伝わるといいと思います。(笑)
 
 設備的な新機軸に飛びついてコストの調整に悪戦苦闘することもひとつの経験かもしれませんが「断熱」や「温水暖房」のような地味な地域の「当たり前仕様」を徹底的に使いこなして、安くて良い家作りを目指すのも素敵なことだと思います。笑顔で同級生の仕事だってできるようにね。(笑)
 
そのためには断熱とトレードオフ(交換)可能な設備の減らし方(費用対効果の高め方)や商流の種類、建材の決済や支払いについてもよく学ぶ必要があります。よく減額調整に行き詰まった若手から相談をいただきますが、設備ばかりか、建材やその商流も全て工務店やその協力各社にまる投げの人が多くて驚きます。その反面、室内の石膏ボードは全て9.5mmにしました!とか、仕上げを止めて化粧釘打ちとしました!布基礎の厚みを15cmから13.5cmにしました!なんてよくあります。
 
子育て前提の家庭に壁の強さは大切なことですし、せっかく仕上げを減らしたのに、簡単なボードビスではなく、ピッチ(間隔)を割り付けて化粧釘を使うのなら減額とは言えません。(笑)もちろん地震国で基礎のコンクリートを減らすのも賛成できません・・・
 
話しが脱線しましたが、マイホーム取得中心世帯の年収がどんどん下がりつつある現在、「環境建築」が高価になることにはある種の矛盾を感じます。やはり地域の特性をよく掴んで健全なコストダウンに前向きに取り組むべきだと思います。

今日はバラードでも
https://www.youtube.com/watch?v=bvtdjIIcgWQ