2016年12月24日土曜日

北海道の 冬のあるある

今日は冬の北海道あるある!で行きましょう(笑)
 
まず最初は雪庇(セッピ)冬場、卓越風の風下にできる文字通り、雪でできた庇です。見た目は柔らかそうですけど実は凄く硬くてこのクラスの雪庇が下に落下すると下屋も壊れるし車なら大破ですね~恐ろしい・・・根本的な対策は中々難しいんですが巨大に成長する前に雪庇カッターでこまめに切って落とすのが正解。重量も凄いんで軒も丈夫に作っておきませんと折れます。冬場、北海道で屋根が壊れると悲惨なので屋根型は悩みますね~。
 
お次も雪庇ですがこちらは3階建てのアパートの様子。怖くて車を車庫から出せませんよね~。ここまで来ると、除雪屋さんを頼んで落としてもらい、ダンプで排雪ということになります。日本のほとんどを占める温暖地が主に気体と液体の水に対して注意を払うのに対して寒冷地は雪や氷のような固体の水まで検討の範囲を広げます。
 
ニ~三日暖かい日が続いて、暖気で緩むとこの数百キロの雪庇がギロチンのように垂直に落下しその際にレンジフードやセルフードを持って行かれます。北国の子にとって雪の積もった屋根に近づかないのはもちろん、間違っても軒下で遊ぶことがないように親からきつーく叱られて育ちます。

固体の水がどんなことをしでかすかの図。三角屋根はその形状が雨も雪も下に落とすと言う点で素晴らしく合理的なものだといえる。構造的にも積雪加重が無くなるんだからね・・・その一方落ちる先が1階の下屋だとその屋根を壊し、さらに滑って1階の窓の前に落下すると窓を破ってしまう。そこで本州(温暖地)テイストの間取りの家は上の写真のように窓を雪避けで塞ぐのが冬支度となる。最近は減ったけど固体の水を扱うという経験は時に屋根の形の合理性よりも落とした後の影響の方が支配的に屋根の形まで変えてしまいかねない・・・「落とす」という時点では液体の水、固体の水問わずに合理的なんですけど・・・その後の始末を考えると結果はぜんぜん異なってくると言うお話しでした。(笑)
 
昔は窓が屋根の雪で埋まるなんて毎年のことだから、軒下に積んでおいた半割の足場板をすぐに窓の前に取り付けられるように窓の両脇に金物まで付けていました。



こっちは巻き垂れ。緩勾配の屋根は高さを抑えると同時に落雪の速度を落として安全だって考えられていた時代があって、雪はゆっくり、ゆっくり低いほうに滑って軒を出たところで少しづつポキリと折れて落下するとイメージされていた。しかし結果はまったく正反対だった。屋根の上の雪は昼間の日照で融かされ夜間の寒さと風で硬く鍛えられる。これをクラストと呼び特に表面が硬くなりやすい。そうやって鍛えられた雪は軒先でポキリと折れるどころかみるみる巨大に成長しそのまま放置すると窓を破り、軒が落ちる。後に断熱と気密が貧弱だと屋根表面の雪を溶かしこの現象を助長することが明らかになった。北海道ではこの緩勾配の屋根をフラットルーフの呼ぶけど最近じゃ雪止めとセットじゃないと危険である。

よくこの写真を見て「馬鹿だな~こんなんになる前に窓から叩けば下に落ちたのに」なんておめでたい反応をする人がいるけど、窓から見える巻き垂れの裏側はびくともしない青氷なんですよ。屋根の雪を室内の熱で溶かしてスースー落とそうなんて誰が考えたんでしょう?(笑)
 
最後は氷堤(ヒョウテイ)読んで字のごとく氷の堤防。こんな勾配45°の家の雪がまったく落ちないなんて不思議ですよね~。この現象はズバリ気流止めの欠落。壁の中に高湿度の室内空気が流れ込み躯体内気流を生じてそのまま小屋裏に吹き抜けている。室内で温められた高湿度の空気は屋根を暖めながら最頂部の小屋裏換気口を目指す。その過程で暖められた屋根面の雪は水となって軒先めがけて流れ出す。さてもう少しで軒先から地面に・・・と思った矢先、軒裏の通気で冷やされた軒の真上で氷結し、氷の堤防が生まれる。一度できると待っているのは負の連鎖、次々に屋根面から流れてきた水が軒の上で凍り、巨大な氷の堤防に成長する。こうなってしまうと実に厄介。無理につるはしで氷を割ろうとすると必ず屋根を壊してしまう。さりとて放置すれば氷の重量で軒先が折れるのが先か・・うーんどうしたものか・・・