2016年5月21日土曜日

ニセコの家Ⅱ 断熱下地工事 その2

文字通り、カブトムシの甲羅のように合板を面貼りした構造体の外側をすっぽりとビニールで覆ってしまったところ。窓はまだ付いていない。もちろんこのビニールは屋根面から連続している。こうすることでより簡単に「連続した気密ライン」が完成する。

次は断熱サッシの取り付け。ビニールを窓の形状に沿ってカッターで切断開口し、外部側よりサッシを取り付ける。国産サッシの特徴である、ツバをビニールに被せその周りをぐるりとアクリルテープで気密する。要はサッシのツバと躯体でビニールを挟み付けるようにして従来は別工程とならざるを得なかった、1:窓の取り付け、2:気密化、3:止水処理を一回で完了させる。 詳しい人はもうお分かりのようにこの工法では建物の気密構造が断熱より先に完成する。つまり屋根も壁もビニールが完全に露出(目視可能)な状態で気密試験を行えるのである。もちろん漏気部分が見つかった場合は室内側からでも屋外側からでも自由に修理が可能となる。
 
□補 足
一般的には壁の断面構造の中で窓の取り付け位置と防湿+気密を担うビニールの位置は対極(←両端→)に離れてしまうことが多い。要は気密ラインと窓の取り付け位置が一致することは少ないのだ。これがどんな結果をもたらすのかといえば、壁の中心から見て外側では窓の気密+止水作業が発生し、今度は反対側に当たる室内側でもう一度ビニールの気密化が必用になる。もちろんこの作業は壁内に断熱材を詰め込んだ後に行わざるを得ないから、外部の窓が第一段階、内部の断熱材充填とビニールの気密化が第二段階とツーアクションを経ないと建物の気密化が完成しない。
写真は取り付けられ、気密化+止水を終えた開口部。もう不意の雨にも構造体が濡れることはない。 
 
今回の300mm断熱工法の改良に際してヒントとなったのは、従来の充填断熱+付加断熱の概念。要は壁の中にまず10.5cmの断熱材を詰め込んで不足する分をその外側に追加して(付加して)貼るという発想からの卒業だった。「ニセコの家Ⅱ」では屋根の構造と同じく主たる断熱は、建物構造の外側で取り一端完成させてしまう。その上で予算や必要性に応じて壁の内部(従来は主断熱と考えられていた壁内の充填断熱)を丸々【付加断熱+(配管、配線層)】としている。もちろん外部側で既に気密工程は完了しているので室内側の内装ボードの下に気密ビニールは必要ない。
 
余談だが暮らしにおける暖房エネルギーの消費量が全国一高い北海道では国の進めるZEH【注:ゼロエネルギー住宅と呼ばれ、断熱外皮で省エネ、太陽光パネル(PV)で創エネ(発電)することで実質の年間エネルギー収支が0となる住宅】も今のところは太陽光パネルの設置を免れている。積雪や現状の太陽光パネルの性能では不足等々・・・これから色々と議論は進むのだろうが、いずれにせよ今後は構造体の寸法で断熱性能が決まってしまうような設計思想は急速に陳腐化して行くように感じる。構造体に制約されず充分な断熱が出来る新たな道をたくさんの人たちと考えてゆきたい。
 
今日はT.フラナガンなんていか https://www.youtube.com/watch?v=_EcsQDHKkfs