2011年10月22日土曜日

西野の家 建具について

最近、室内の建具は引き戸が圧倒的に多いです。本来引き戸は空間と空間を曖昧につなぐ日本特有の建具形式で不透明なものを襖(フスマ)、半透明なものを障子(ショウジ)と称してきました。北海道の間取りが全国に比べて圧倒的に自由で豊かなところはLDKを抵抗なく受け入れたこと。本家や分家、格式や階級制度といったものに対するしがらみが希薄で、敷居の高低や上座、下座の別といったような旧来の間取りに対する暗黙の掟に大らかだったことが原因でしょう。しかしそんな大らかな北海道の間取りでも空間を都合によっては仕切る必要性が出てきます。そんなときに壁の外側に簡単に吊り下げるスタイルの引き戸(アウトセット引き戸)は大活躍します。最近の建築家は壁と同様に建具を白く塗装したり、または銘木の突板(つきいた:主に広葉樹の木目が美しいベニア板)を貼ったりといろいろと工夫をしますが、私の場合は襖よろしく紙貼り(和紙やビニルクロス、網代紙等)が多いのです。他の人と同じことは嫌!というへそ曲がりなところもありますが、フスマやショウジを現代感覚で蘇らせて使うことにこだわりがあるのと、どんどん消え行く表具(掛け軸や屏風に絵や書を貼りこむ伝統工芸。フスマも当然この延長線上にあります。)の技術を大切にしたいという想いからです。一見洋風な空間にもしっくり馴染み、主張しすぎず、開けていても閉めていても気にならないデザイン。しかし一旦気づくと凝視にも耐えられる細部の美しさをもつ建具を目標にしています。

全景はこんな感じ。吊り下げられているために足元にレールはありません。

開くと、引き残しなく壁にピタリと吸い込まれ気になりません。普段は開放して使い、必要なときのみ閉めるという、ドアにはけして真似のできない柔軟性を可能にします。ドアは基本的に閉まっているもので、開きぱなしだとだらしがなくみえますよね。不思議なことにドアの文化ではない日本人でもこの感覚は共感できるものです。

菊水の家の四枚引き建具。高さが2.15mあり空間を簡単に二分することが可能。

柄は竹久夢二の「桔梗」。夢二は美人画で有名ですがたくさんの優れたテキスタイルデザインも残しています。意外や日本的でありながらも古さをまったく感じさせません。

愛すべきスーザンボイルに!