2025年12月15日月曜日

マンション外断熱改修 2025.12.15

ここ数年、築深コンクリート造マンションの外断熱改修に積極的に取り組んでいる。

ご承知のように積雪寒冷地として知られる札幌市マンションのニーズが高い。戸建てに比べて、修理や管理、除排雪の容易さや利便性の高い都心の暮らしに魅力を感じて分譲マンションを選択する。隣戸に対する生活音や近所付き合い等の不安がありつつも、都心にそびえる我がマンションの雄姿に頼もしさを感じる人も多い。


その一方で、一見頑強そうに見えるマンションだが実は12~15年毎の修繕工事(修理&修繕)が欠かせない。コンクリート造は意外にも脆いのだ。さらに言うならば外壁にタイルを貼っている建物は必ず経年と凍害によるタイルの剥離や落下を経験することになる。タイル仕上げのマンションの多くが、定期修繕の際に浮いたタイルを貼りかえることが多く、遠景から見ると既存タイルとの色違いが気になる経験をした人も多いと思う。

マンションにとって壁と屋根(躯体)は雨漏りや凍害で傷むと最も修理にお金が掛かる部分でもある。したがって定期修繕の際、配分すべきコストの優先順位を下げることは難しい。これ以外にも、エレベーター(EV)や給排水管のような日常生活のインフラに当たるものにも当然ながら定期修繕は必要となる。

住民にとってこれら1:躯体、2:EV、3:給排水といった三大工事をいつのタイミングで適切にスケジュールすべきか?、必要となる修繕積立金はどの程度用意すべきか?当然ながら定期修繕を重ねるたびに建設物価は上がるのだからそれらも想定し積立金の計画的な値上げをどのように意思決定し合意形成しておくべきか?・・・思わずそれは管理会社の仕事・・と口から出そうになるが、そもそもこの問題の当事者はどこまで行っても住民なのである。
マンションによっては”揺りかごから墓場まで”・・よろしく販売会社のみならずその系列の管理会社に改修工事業者まで取り揃えて、煩わしさなし!を強調するケースもあるが、住民なら誰でも疑問に思う瞬間があるはずだ。

上のグラフを見て頂きたい。黒点線が一般的な通常改修(15年毎)を繰り返すと仮定した場合、必要となる修繕積立金の推移を示し、黒実線がその際に躯体修繕にかかる工事費の額を示している。当然ながら工事費だって15年毎に価格上昇するのだから、上昇する工事費に見合った修繕積立金の値上げが必要となる。

例えば30歳でマンションを購入した人の場合、1回目の大規模修繕工事が45歳の時、2回目は60歳の時となる。近年は働き手不足の影響で定年も延長傾向であるとはいえ、定年後の75歳で必要となる修繕積立金を負担できる住民は果たしてどのくらい残っているだろう?現実的には難しいと言わざるを得ないのではないだろうか。

そこでまだ返済能力が十分な1回目又は2回目の定期修繕を15年しか持たない通常改修ではなく、より耐久性向上が期待できる外断熱改修に切り替えるとどうなるだろう、本来ならば3回必要だった定期修繕工事を2回に圧縮してしまえば一番出費の厳しい3回目の定期修繕の時期をさらに後ろ倒しにできる(時間に余裕ができる)。もちろん通常改修に比べて外断熱改修はより高価な工事となり易いが、返済能力が健全な内に15年以内(通常改修のサイクル以内)の返済期限で可能な資金計画が立てられたとしたら十分に魅力的な方法となる。

黄色点線は毎月の修繕積立金の中からその一部を返済に回した場合の修繕積立金残高の推移を示す。従来のように全額を積み立てる訳ではないので貯まる速度は落ちるが、躯体の長寿命化が実現できるので積み上げを急ぐ必要はなくなる。躯体が傷む心配がなくなるので、躯体のために割いていた修繕積立金は余る。結果的に躯体にかかる修繕費は減る。管理組合としてはそうして安全かつ合理的に節約したお金を様々なところに回す余裕が生まれる。

市内には20年前に外断熱改修を終えたマンションが存在し、それ以降に外断熱化されたマンションも年々増えている。その多くで改修サイクルを延長することのメリットが聞かれるようになった。札幌市もこうした実績を受けて様々な施策を設けている。

札幌市既存集合住宅省エネ改修コンサルタント派遣事業(相談に対する補助) https://www.city.sapporo.jp/toshi/jutaku/konsaru.html

札幌市既存集合住宅外断熱改修事業補助金(工事に関する補助)

今日はHSCCでクリスマスカバーなんていかがでしょう