2017年10月12日木曜日

帯広の家 付加断熱+気密工事

苦労して通気胴縁を解体し、気密工事と断熱工事を行った「帯広の家」。写真は既存の青色のスタイロフォームの上に黄色の気密シートを貼り次にフェノールフォーム50mm、そしてタイベックを貼ったところ。これでGW200mm相当の外張り断熱の家に生まれ変わる。既存の断熱材もいよいよ30年ぶりに本来の性能が発揮できるというわけである。
 
写真中央より左がビフォアー、右がアフター。既存の断熱材は全て上から気密フィルムを貼り気密性を与えることで極力再利用する。
 
壁の最頂部は付加断熱が野地板にぶつかるがそこも極力外部側からウレタン等を充填して隙間を塞いでおく。
 
当時は隙間に充填するウレタンや気密を確保するテープ等の補助部材がなかった。気密が伴わねば断熱材を張ったというだけで、ほとんど断熱性は引き出せない。要はぜんぜん断熱材が効かない。当時は不思議がられたが、その秘密は気密でした。壁内に充填する断熱材の効きが悪いのは気密不足による躯体内気流の発生。外張り断熱材の効きが悪いのは壁と屋根の気密が取れていないから。
 
当時から熱の逃げ場、隙間風やダウンドラフトを一番感じやすいところとして窓の性能UPは盛んに行われた。「帯広の家」もその例にもれず、内窓を後から追加し部屋によっては写真のように3重サッシとなっている。一方で外壁面積全体でわずかな面積でしかない窓だけを性能強化しても確かに窓近辺の表面温度や隙間風は多少改善するが全体的に見ると費用対効果はけして高くない。
 
むしろ窓の漏気が減った分、他の部屋の漏気量が増えたり、今までは気にならなかったところに新たな結露が発生したり・・・当時はこうした後付の部分断熱が引き起こす現象を終わりの見えない・・モグラたたきのように感じる住い手も多かった。「帯広の家」は幸運にも30年の月日を要したが、最後の仕上げとして外壁と屋根の断熱+気密までを行えた数少ない例といえる。
 
今にして思えば・・窓をまず全て直してから数年後に壁そのまた数年後に屋根を直そうなどと言う悠長な人は少ない。窓+壁+屋根をセットにして安価に直す。というストーリーを前提に断熱リフォームや部分断熱は考えねばならず、それに必用となる技術やノウハウを研究し蓄積しておくべきだったのだと思う。それなのに私たちは新築に忙しく、解体技術や後付でも問題を起こしにくい断熱気密の技術開発を怠ってしまったのではなかったのか?その結果・・行商のように飛び込みで風除室や断熱サイディング、内付け樹脂サッシを・・てんでバラバラに切り売りする市場を生み出し、結果的にはずるずると放置してきたのではないだろうか。聞けば「帯広の家」の部分断熱リフォームも全ては竣工を担当した工務店以外の施工店によって無計画に行われてきたとのこと。今度こそ自戒を込めて最後までかかわりたいと思う。
 
付加断熱は高性能なフェノールフォームを50mm増し張りする。
 
こちらが長さ15cm以上にも及ぶ特製のスクリュー釘。30年前に恐らく特注されたものかもしれない。通気層側の釘頭は見事に腐食し釘抜きであおると頭がちぎれてしまい抜くことが難しい。
 
西面はタイベックの上に通気胴縁を打つところまで来た。あともう少し。
 
こちらは屋根の野地裏からウレタンを吹きつけた所。気密のよくない外張り断熱構造なのは屋根も壁と同様。但し屋根は継続使用するので壁のように屋根のトタンをはがして気密+断熱というわけにはいかない。そこで吹き付けるだけで断熱と気密が取れる現場発泡ウレタンの特性を生かして室内側から始末する方法を選択した。屋根の架構が渡りあごによるものなので天井に人が入れるフトコロがあったこと、なにより当時一般的だったGWブローイングが小屋裏に全くないので天井を開口した際のゴミの量が圧倒的に少なかったことも幸運だった。
 
今日はMr.Bigなんていかが

発寒の家Ⅱ 杭打ち工事

昨日は「発寒の家Ⅱ」の杭打ち工事でした。敷地の間口が僅か7.5mしかないので、杭打機も極小ですがそれでもマストを立てると10m弱もあります。オペレーターさんとアシスタントさんの阿吽の呼吸で4m杭5本、3m杭20本。計25本を約1時間40分で打ち終えました。平均すると約4分/本。雨が来る前に全て打ち終えることが出来てよかったです。

杭はH型RCパイル。敷地奥が想定より地盤が若干緩く、地表面まで杭を一端打ち込みその上にキャップを被せて、杭打機の自重を掛けて規定の反力を得るまで杭頭を突き込みました。

写真は3m杭をセットした直後。この後油圧で圧入し最後には自重を掛けて反力を確かめ杭打ち完了となります。
 
今日は久々にバンアパなんていかが

2017年10月9日月曜日

BELS

 
今年度の「地域型住宅グリーン化事業」から、当事務所も加盟する一社)北海道ビルダーズ協会の提案にBELSによる評価と★取得が加わった。従来は外皮性能のみだったが今回からいよいよ2020年を目指した確認申請とほぼ変わらない設計図書(図面)内容となった。
 
一社)北海道ビルダーズ協会HP http://www.do-ba.net/about.html
 
設計者としてはたいへんなこと極まりないが・・(笑) 住い手や社会にとってはむしろ良いというのか、当然な流れになりつつあると言ってよいだろう。
 
現在、木造戸建住宅(4号建物)の確認申請は非常に図面数も少なく簡単な手続きと言ってよい。構造と詳細に関しては特例が使えるので、実質必用な図面は一般図と採光、換気(排煙)チェックとシックハウスの書類等が中心だ。一方、外皮計算とBELS(一次エネの削減率を示すBELSは当然ながら設計しようとする建物の外皮性能を基に必要となる冷暖房をはじめとする各種の負荷を積み上げたものなので外皮性能が明らかでないと原則的には成立しない。)が加わるとなると申請の難易度は激変する。
 
平たく言えば、1:建具表(断熱サッシのU値やη値を記載したもの)、2:矩計図(床、壁、天井のU値を計算するためにはその構造を詳細に示せなくてはならない。)、3:外皮面積求積図(従来のQ値からUA値へと平成25年基準より外皮性能の指標が変わったが、それに伴って総熱損失量qを割る面積が床面積から外皮面積(床+壁+天井/屋根)へ変わったためその根拠を示す図面等が新たに必用となった。)実際にはこれら新たに増えた設計図書に加えて開口部の性能試験証明書や自己適合宣言書、断熱材なら物性特性書等が要求される。つまり2020年から住宅の確認申請はえらく厄介な手続きに姿を変えることが明らかになっている。
 
当事務所も国や地方自治体が推進するさまざまな補助施策に積極的に参加する中でこうした複雑化する手続きやさまざまな建物評価やその考え方を吸収してきた。今にして思えば、アトリエに閉じこもり自分を愛してくれる少数のクライアントの仕事だけをしていたらと思うと怖くなる。
 
また、施工者が非常にしっかりしているのが北海道の建築会の特徴だ。極論するなら、設計者がたいしたことなくても、施工者側で正しく補正して(図面を描き直して)まともな建物にしてしまう(していただいている/笑)という状況は今後、急速に見直さざるを得ないと思う。特にこれからを生きる若い設計者にとってこうした時代のもたらす意識改革の波は避けることが難しいだろう。
 
最近、東北を中心とした若手設計者、施工者の視察や現場見学の申し込みが多い。地元の若手設計者からの電話といえば、困った時ばかりである。両者と話してみて、明らかに北海道は今後、どんどん追い抜かれて行く立場になったと感じた。 若手のみなさん・・・頑張ってね!

「住宅ストック循環支援事業」にもBELSの評価が必要となる。設計者にとって自らの設計した建物のBELSを示すためには、外皮はもとより使用する設備機器(基本的にエネルギーを使うもの全て)に対する広い視点が求められる(設計者を名乗るなら当たり前だけど)。従来のように設備は御社の標準でお任せしまーす!なんてことだと・・・確認申請すら出せなくなりますよ(笑)

今日はJAZZなんていかが
https://www.youtube.com/watch?v=HsJavr4AI5M

2017年10月8日日曜日

発寒の家Ⅱ 地鎮祭

本日は爽やかな秋晴れの空の下、「発寒の家Ⅱ」の家の地鎮祭でした。地元の宮司さんが笛を吹き、朗々と祝詞を読み上げ建て主さま一族の家内安全、合わせて現場の安全も祈念していただきました。
 
いよいよ現場も始まります。連休明け、まずは杭打ちから。みなさん頑張って行きましょう(笑)。
 
若き宮司さんにお払いをしていただきました。
 

2017年10月7日土曜日

発寒の家Ⅱ 着工します!

ちいさな四角い家「発寒の家Ⅱ」が着工します。明日はいよいよ地鎮祭。完成予定は来年の3月です。担当していただくのは株式会社アクト工房さんです。札幌では外張り断熱を得意とする工務店グループ「ソトダン21」に所属する同社は性能もさることながらデザイン指向の高い工務店として知られています。
 
 ㈱アクト工房HP http://www.actkoubou.com/
 
実は「発寒の家Ⅱ」は壁にボード状断熱材を用いた300mm断熱。私の事務所でここ最近定番化している全てグラスウールの300mm断熱とは異なる仕様です。実は2010年の「南あいの里の家」と「菊水の家」で類似の工法を用いたこともありましたが室内の水蒸気を防ぐ防湿シートは充填断熱と同様に室内側でした。しかし今回は完全な外張り断熱よろしく防湿シートは全て柱の外側に梁の外側。要は構造を防湿シートですっぽり一度ラッピングしてその外側に主となる断熱構造を作ります。この構造はなかでも非常に高い気密が出ますので今から楽しみです。どうぞよろしくお願いいたします。(笑)

野幌の家 2017.10.07現在の様子

10月に入って毎日雨に悩まされています。それでも屋根の防水の後は、なんとか外部廻りに人員を集中配置して付加断熱を完了させていただきました。タイベックで覆われた外壁を見るとほっとします。この日も気紛れな空からはぽつぽつと雨が落ちてきました。

タイベックの下には石膏ボードが貼ってありタイベックが膨らまずにきれいに貼れる。もちろん通気層もばっちり効きやすい。

こちらは苦労の末にサッシを10枚連窓にした2階居間の窓。トリプルガラスのYKK430の普及は益々、北海道の住宅の窓を大きくしてゆくと思う。昔はガラス色は断熱性の高いグリーンが多かったけれど最近は明るめのニュートラル。

現在の室内はこんな感じ。あともう少しで外部が終わると基本的には中仕事に移ります。

晴れ間を狙って、1m以上跳ね出した庇を袖壁に載せる棟梁。
なんとか天気が回復してほしい。
 
今日はシシド.カフカ&横山剣なんていかが・・カッコイイ!

2017年10月2日月曜日

帯広の家 外壁解体工事 その3

通気胴縁をあらかた取り去り、いよいよ雨水や室内水蒸気の浸入によって傷んだ部分の断熱材を取り外して躯体へのダメージを確認する工程に入った「帯広の家」です。
 
最初は、屋根面から通気層に流れ込んで通気胴縁を激しく腐食させていた部分の断熱材を解体して行きます。

外張り断熱材を全て取り去った写真がこちら。まだ当時は耐力面材ではなく筋交いによって耐力壁が作られていた様子が分る。壁の奥に見えるグレーの部分は内装の石膏ボードの裏側。カビの痕跡もなく一安心。

こちらは懸案の土台と柱脚廻り。蟻が残した木屑の下が気になります。

こちらが木屑をブロアーで吹き飛ばしたところ。打診検査でも土台が傷んでいる様子はなく、柱、土台共、継続使用が可能なことを確認しました。

こちらは浴室のサッシの下部。かなり湿気が回り窓台の約半分くらいまで木が腐っています。

こちらがその拡大写真。こうなると一端サッシを取り外し、新規の窓台に入れ替えねばなりません。

念のために窓下の土台のダメージを確認すると。こちらも継続使用が可能な状態でした。

今回もリフォーム特有の「解体」という工程を通して私たちが普段、何気なく使っている釘やビスに対する貴重な気付きを得ることが出来ました。写真中央に写っている釘は5寸(約15cm)のスクリュー釘です。100mm厚の外張り断熱材、18mmの通気胴縁、それに打ち込み深さを考慮するとこうした長さの釘が必要だったのだと思います。当時は打ち込むのにもずいぶんと手間が掛かったことでしょう。
 
今回の断熱リフォームで通気胴縁のみ取り外し、断熱材の表面をフラットにしたところで厚手のビニールを貼り、付加断熱50mmを加え、その上から新たな通気胴縁で押さえる予定でした。ところがこのスクリュー釘の頭が錆びて脆くなっており、釘抜きを掛けて抜こうとしても頭だけちぎれてしまうことが判明、仕方がないので急遽、釘抜きをセーバーソーに持ち替え、胴縁と断熱材の間に刃を入れて1本、1本釘を切断しながら胴縁をばらすという状況になりました。
 
実は、私たちが普段使う留めつけ用の釘やビスは簡単、確実に取り外せるという視点がもしかしたら・・不十分なのでは?と現場からの声を聞いて感じた次第です。
 
私たちが今後目指すべき、ストック型社会の実現のためにはこうしたマテリアルに限らず、総合的な解体可能性(実はそれこそ持続可能性?)を充分意識した頭が必要なのかもしれないと感じました。
 
今日はスティングなんていかが

2017年9月29日金曜日

野幌の家 屋根防水工事

台風の後も続いた雨を上手くやり過ごしながら、上棟を迎えた「野幌の家」です。現在、仕上げ工程に入っている「西野まちなかの家」から壁→屋根だった工程を反転し、一番最初に屋根の断熱と防水を終える、本来の在来木造の作り方に順番を変えました。
 
雨の少ない夏場に上棟した「西野まちなかの家」の時はそうでもありませんでしたが、雨の多い季節に入った今回は効果絶大(笑)。雨に濡れないってほんとうにいいもんです。 
 
屋根は完全に外張り断熱、一方壁は充填断熱+付加断熱なので防湿シートの位置が屋根とは反転します。
こちらが0勾配のシート防水の屋根。カーポートの上部の屋根になります。

こちらが大屋根、これから雪止めを取り付ける予定です。

水平部分に薄く溜まった雨水が勾配0を物語っています。

勾配部(左)と水平部(右)との交点に設けられた堰上の立ち上がり。雨水や融雪水が想定外のところにこぼれ落ちぬように屋根上で工夫します。

こちらが先行して完了した屋根の断熱と防水。跳ね出した分の厚み(140mm)の付加断熱を下から積み上げて屋根と一体化させます。
 
今日はJ.Dukeなんていかが

2017年9月21日木曜日

西野まちなかの家 階段工事

室内にボードが貼られ内装がどんどん進む「西野まちなかの家」。リビングに掛ける階段をどうしようか?と色々と悩みましたが、店舗什器製作所さんに素敵な階段を作っていただきました。材質はカバの集成材。段板は北海道産白樺の合板です。オイルで拭くと温かな木目が引き立ってとてもきれい。残念ながらありふれて感じるせいなのか・・・北海道の人にはぜんぜん人気のない白樺ですが、私は大好きで使い続けています。(笑)
 
階高が2520mm、蹴上げ180mmなので14段目が2階の床。1階の天井高は2150mmと抑えて行きます。2階の床の厚みに相当するフトコロは370mm。高断熱+高気密空間として設計するとダクト空調はもちろんのこと、天井フトコロを要しないパッシブ換気のようなダクトレス空調が使えるので矩計(カナバカリ/垂直方向の寸法設計)の自由度が増します。階段の段数を抑えることが出来るので最近多い30坪以下の間取りとの相性も悪くありません。
 
段板の厚みは24mm。丈夫な白樺合板なら意外にもぜんぜんたわまず大丈夫です。お子さんが落ちないように手摺の間隔は狭く詰めますが空間を圧迫しない充分な開放感だと思います。
 
(有)店舗什器製作所HP http://tenpo-kagu.jp/
 
瀧澤ベニヤ株式会社(白樺積層合板)HP http://www.takizawaveneer.co.jp/
 
 
 
 
 

野幌の家 建て方工事

二階の居間にはスパン5mを超える登り梁を複数掛けなくてはいけない「野幌の家」。本日はクレーンを敷地内に据え付けて、梁掛けです。大工さん3名も準備万端、前日には順調に2階の低層部まで梁掛けが終了し今日は朝一番から大梁に挑みます。
 
クレーンで順調に吊り上げられ両端部金物接合の柱と梁にがっちりと接合。緊張の一瞬ですが・・見事に・・
 
接合完了!と喜んだのも束の間、上の写真を見て大切な加工が一切なされていない事に気付き・・あえなく建て方は中断。台風が上陸する前にべストのタイミングで終らせようと思っていたところに残念な結果となったのが9/16(土)。そうここまでの写真は先週末のものです。
 
しかしそこからが素晴らしかった、すぐにプレカット工場に連絡し加工記録を確認、バグの発見と理由を見つけ、未加工の梁11本を引き取りに来れるかどうかを相談。現場の大工さんには掛けた梁の解体をお願いし、プレカット工場の担当者も昼前に現場に到着して問題は解決。どのみち台風が上陸するのでその間を再加工の時間にあて、連休明けから建て方再開となったのです。
現場を担当指定ただいている飛栄建設さま、ニッショウさま、そしてチーム野幌のみなさまに心より感謝いたします。
 
           
これが週明け建て方が完了して合板を貼った状態。最初の梁の写真には上のように細い垂木を落としこむ欠き込みの加工が全くありません。これでは隣り合う梁をつなぐことも出来ないために合板を貼ることも出来なかったのです。この垂木、約20cm間隔で細かく入れることで重たい合板を敷くまでは大工さんの大切な足場になります。特に傾いた屋根は危険な高所作業を伴いますから作業中の安全も出来上がった後の意匠性も考えてよく採用するディテールなのです。
 
工場で全ての構造材を加工するプレカットを大工の腕が落ちると毛嫌いする向きもありますが、私はその加工性の高さを生かしてプレカットでしか出来ない在来木造の美しい小屋組みが出来ないものかと思っています。本州でよく見る赤味の効いた美しい杉材の小屋組みに憧れているので、地元の林産試験場が苦心の末に開発してくれた唐松集成材の梁を使います。もちろんその梁に組み合わせる垂木も唐松材、ここまで来れば合板も地元と行きたいのですが・・最近はなかなか良いものが手に入らないので今回は石巻産です。(笑)
 
もちろん壁や天井で隠蔽されることが前提のプレカット加工を顕しで仕上げに使おう!等というのは大変なことで・・・(いつもスイマセン/笑)、担当してくれるCADオペレーターの人も接合金物から切削機械の歯の切れ味から・・全て見られることを前提に打ち合わせや了解事項の共有が必要になります。おまけに今回は合板がよくないとか、梁の木目が美しくないとか色々と大工さんに言われるわけです。(笑)でもちょっと待ってくださいよ、隠して使うしかなかった時代はこんな話しみんなでしただろうか?唐松の色変わりがきれいに見えるようだとか、合板の木目がきれいだと気持ちがいいとか、顕しなんだから傷が残らんように金槌はゴム製のを使えとか、建て方の丁寧さからそもそもぜんぜん違う。隠れるのだから仕事も相応でいいという空気があっけないほど簡単に吹き飛ぶ、これはこれで気持ちがいいし大切なことだと思う。改めて日本の顕す文化の意味を感じました。
 
二階の小屋まで組みあがった「野幌の家」。屋根型も従来よくある殺風景で四角い北海道風陸屋根ではない部分的な片流れ屋根。ここ10年のシート防水の発達と普及は色々と問題の多かったスノーレーン型屋根を駆逐しながら地域の屋根にデザインの自由を取り戻しつつある。 
 

         
厳重に養生したにもかかわらず台風通過時の豪雨で少しだけ雨が気密シートの裏側に回ってしまった。天気は通過直後の快晴。すぐさま資材を動かして・・
 
すぐにビニールを開口し天日で充分に乾かす。水が合板下の唐松の骨組みにまで染み込むと、タンニン成分の多い唐松は黒く変色してしまう。
 
こちらはスパン3m超えのカーポート。屋根を薄く見せると同時に積雪荷重に耐えるために梁成150の木梁の両側から鉄鋼の梁で挟み付けて補強する。
 
うーん・・竹内まりあっていいですよね~



帯広の家 外壁解体工事 その2

 
 
 
前回お伝えした、外屋の雨水が壁に侵入し通気胴縁を腐らせた部分の拡大写真です。この部分はどうやら竣工直後から問題があったようです。写真の胴縁に映るビスの頭に注目。30年前にはなかった角ビットです。要は竣工後の外壁補修の際に同じような状態が見つかり、補修したのでしょう。しかし根本的な漏水を始末しなかった(出来なかった?)ために同じ状態を繰り返してしまったようです。この状態だと板金の裏にまで水が入り込み土台を痛めているかもしれません。大工さんにお願いして一度断熱材を全て取り除いて現状を確認する必要があります。
 
こちらは黒アリの蟻道です。一般に板状断熱材、特に押し出し法ポリスチレンのXPS等は耐水性が高いと思われがちですが、実際はかなり吸水します。なので通気層に対しては水に弱い繊維系断熱材と同様に、防風+防水+透湿シート(タイベック等)で表面を覆います。水分は必ず蟻を呼び被害を拡大させてしまいます。1階の面積が大きくて2階が小さい建物。平たく言えば外屋が多い建物は特に雨仕舞いが大切だな~と実感します。
 
こちらは通気層内部を流れた雨水がサッシとの隙間から躯体に入り、それに呼応するように蟻が入り込んだ痕跡です。
 
こちらは断熱材自体を食い破り濡れた柱や桁を目指した痕跡です。重要点検箇所になります。
 
建物の気密不足は、恐らく大量の隙間風を室内にもたらしたのだと思います。北海道の家は冬場室内を丸ごと暖かくするのが当たり前ですから、内外温度差の拡大で換気量(隙間風)は増大します。原理的には柱の外側で気密+断熱されているはずなのに室内が寒くてたまらない。この現象は当時の作り手も気付いていたのだと思われる痕跡が上の写真です。外張り断熱なのに壁の中に部分的にグラスウールが入れられています。これは壁の中を通り天井裏に吹き抜けようとする隙間風を止めるための気流止めです。写真で見ると断熱材が落ちないように幅広の横材が見えます。ここが解体前の天井のライン。グラスウールがなければ壁内の空洞と天井裏がつながるのがよく分ると思います。しかしそうした努力も虚しく壁内の気流を止める事は難しかったようです。写真を見るとグラスウールの上部がかなり黒く変色しています。これはダスティングと呼ばれ水分を含んだ空気が通気性の高い繊維系断熱材の中を通り抜けた際に残す痕跡です。
 
話は変わりますが、30年前に外張り断熱派と覇を競い合ったもう一つの断熱構造、充填断熱派が気密性を確立するために苦心したのもこの気流止めでした。そもそも在来木造の家というものは極力家の内外をなくし徹底的に外気に開放するように作ります。要は壁も床下、屋根裏、間仕切壁に至るまで通気性を確保し前述のような水による害から自身を守るという自己保存の設計思想こそその本質です。一方「断熱」とは内外を明確にすることを意味します。外気が入ってきてよいところとそうでないところ、水分も全く同じです。両者は特に相互依存の関係が強いですから、慎重にディテール(詳細)を詰めねばいけません。

しかし今改めて見ると、本質的に隙間風の確保を目的に作られて来た在来木造を、それとは反対の構造に作り変えることは至難の業であったのがよく分ります。剛床と呼ばれる床先行工法の発達、壁の中の筋交いをやめて、外周部の柱外に合板を貼る耐力面材の普及。こうした構造レベルの進化や革新なくして問題は解決しなかった。現場はいつも新鮮な気付きを与えてくれます。

敷地のある十勝地域の作り手の多くがこうした現実の中で、気密化の難しい在来木造から枠組み壁工法にシフトしていったのもある意味自然な流れだったのかもしれないと、今にして腑に落ちた感じがしました。
写真は厚み45mmの隙間(通気層内)に作られた鳥の巣の痕跡。在来木造によく見られる小屋裏や床下といった未利用空間はさまざまな動物の営巣場所でもある。街の生態系を健全に維持するために共存できる方法はないものだろうか?と考えさせられる。
 
さすがに奥行き45mmの家では窮屈だったと見えて断熱材を破って小屋裏に入ろうとした跡。
 
当時のユニットバスは気密もよくない。特に浴室内の換気を疎かにすると大量の水蒸気が窓の隙間から外部へ移動しその過程で露点を生じる。UBを交換するのでその際の重点修理ポイントです。
 
こちらは2階バルコニーの柱が屋根の板金と断熱材を貫通し1階の桁上につながっている十字交差部分。柱の根元から漏水し下の桁を痛めここにも黒アリが侵入している。こちらも重点修理ポイントとなります。
 
ところでこの人凄い!松原正樹よ永遠に