2017年3月15日水曜日

旧荒谷邸特集 建築知識ビルダーズ


 
ブログでも何回かご紹介している旧荒谷邸。約40年前に当時の北海道大学工学部教授、荒谷先生の手で竣工した超断熱の家である。驚くべきは40年も昔の家が最新の新築の性能を遥かに凌駕していることである。この度、建築知識ビルダーズ誌で巻頭16Pの特集を組んでいただきました。お忙しいところ取材と見学をお許しいただいたタギ先生、激務の中、全体校正をお手伝いいただいた登尾さん、入院中にもかかわらず校正にご協力いただいた荒谷先生、淑子さま。この場をお借りして心より御礼申し上げます。
 
過去ログもよろしくおねがいいたします。
 
 
 
まだまだ知られていない北海道の断熱。建物を断熱することに戸惑いを覚える人間は北海道には少ない。しかし全国に目を向けるとかなり実情は異なる。主に温暖地と呼ばれる国内の多くの地域では四季の暑い寒いを当然のこととして住いに受け入れそれとともに暮らすことを歓びとしてきた。という伝統を持つからだ。その一方で先進国の一つとして将来的な地球環境保全のためには建物の断熱を法制化し2020年の完全義務化に向けた動きが既に始まっている。
 
特集では1979年竣工の荒谷邸の各部を紹介しながら、現代に通じる荒谷先生の哲学を当時の講演録とともに紹介している。ぜひお近くの書店でお買い求めいただければ幸いである。私も久々に原稿に汗をかきました。(笑)
 
木藤編集長さま:ありがとうございます。先ほど受け取りました。編集部のみなさんの思いの込もった号になりましたね~。心より御礼申し上げます。年末のお忙しい最中、北海道取材までしていただいて、ほんとうにごくろうさまでした。パッシブ換気の西方邸に旧荒谷邸特集、全国でエコハウスに取り組む皆さんのお仕事の数々・・これからじっくり拝読させていただきます。後ほどJIA北海道支部にも一冊届けてまいります。おかげさまで支部長も喜んでいます。(笑)今後とも若手を含めまして積極的に環境的な建築を発信して行きたいと思います。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

今日はバンプなんていかが・・いい曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=plXjYiRcBtA

2017年2月10日金曜日

20170214 ソトダン21セミナー

 
みなさん、面白いセミナーに行きませんか?
ご存知、日本の中では寒冷地に属する北海道。その反対に温暖地の中の温暖地・・沖縄。それぞれの地域に暮らす建築家と全国を飛び回る環境の研究者が一同に会するなんて、考えただけでも凄く貴重な経験ですよね。これは絶対面白い!席にはまだ余裕ありとのこと。予約はお早めに!


2017年1月26日木曜日

北海道 冬のあるある 4

今年はよく降りますね。こちらは先日の「西野里山の家」。西区の西野地区は札幌市内屈指の豪雪地帯、やっと1月が終るというのにこの調子だといったいどこまで積もるのでしょう?軒先の構造補強はがっちりやってありますが、端から見ると片流れの屋根型のせいか、雪が落ちてこないかと心配する人が多いのだそうです。

それと言うのも軒先に沿って遊歩道が通っていて、冬場も歩くスキーやスノーシューで附近を散策する人が多いのだそうです。その人が上を見上げると落ちてきそうな屋根雪にぎょっとするようで親切心から指摘をしてくれるのだと思います。昔はこうした勾配型の屋根には後付の雪止めを付けていましたが近年は屋根の板金形状そのものに雪止め効果を持たせ融けた融雪水だけ軒先の樋で受けるようにしています。
 
よく北海道は粉雪だから軽いでしょ!と笑う人がいますが粉雪は1㎡+積雪1mで約100kg/㎡程度ですが春先の重たいざら目雪になると同じ量で重さは4倍になります。

やはり落雪の怖さを知っているだけに見た目に安定感のある陸屋根はそうした忠告を受けることは少ないようです。不思議なもので昔は雪の落ちる屋根に安心感(建物が雪の重みで潰れないという)を感じていたのにふと気付いてみると雪の落ちないかたちを求めている自分がいます。
 
話は変わりますが雪を頂いた屋根は美しい北国の風景です。暖かく厚着をして久しぶりにスノーシュー(カンジキ)を履いて散歩をしたいと思いました。
 
今日はPharrell Williams で行きましょう!やっぱいいですよね~(笑)

2017年1月12日木曜日

広島からお客様が

昨日は寒かったですよね~。そんな中、広島からお客様が・・・
北海道の環境建築の今を視察にいらっしゃいました。

詳しくは http://pleasant-design.com/blog/details/543

2017年1月5日木曜日

北海道 冬のあるある 3

以前の投稿で、「北海道に多い陸屋根は屋根として考えるなら、お世辞にも合理的とは言い難い。」と書きました。勾配付の屋根はそのかたち自体に雨や雪を受け流す力があるのに対して、四角な陸屋根はそれを持たないからです。それどころかむしろ屋根にとって不要な雨や雪を溜め込み易いかたちをしています。それでは「なぜそんな非合理な屋根が北海道に広がったのか?」と言えば、「暮らす上でどうしても必用だったのではないか・・・」 そこまでが前回までのお話でした。今日は実際の街並みを見ながらこの屋根にとっての合理性と暮らしの関わりを考えてみたいと思います。
 
上の写真は陸屋根と三角屋根のアパートを並べたものです。もちろん左側が最近でもう一方が40年以上前のものです。前者の屋根には大量の雪が載り、後者の雪はきれいに落ちていることが分ります。それでは落ちた雪を見てみましょう。

この三角屋根のアパートは角地に建っていますが屋根の雪が落ちると道幅を半分にしてしまいます。まだ1月が始まったばかりで本格的な降雪はこれからだと言うのにもう既に1階の窓はほとんど埋まってしまいそうです。

交差点を渡る歩行者の視点で見ると落雪する屋根の恐ろしさがよく分ると思います。

落雪する雪は大きな力を持っていますからほんの少しかすっただけでも壁から突き出ているものは大きなダメージを受けます。もちろん外壁も傷みますから注意が必要です。

こちらのアパートは窓の前を除雪しています。もちろんガラスの破損を防ぐためと採光や換気を確保するためです。落雪は別の視点で見れば非常に大きな力を片方向に集中させることですから、作り手はその反作用に対する備えを絶えず考えておかねばなりません。厄介なのはその非常に大きな力は年毎の雪の量や重さによって刻々と変わるために充分な備えと言っても具体的に特定が難しいことです。結局、作り手にはある程度余裕をもった?(笑) 落雪対策を対症療法的に講じて置くことが精一杯となります。

窓の両脇には落雪から窓を守るために板を渡す金具が付いている。落雪は単に溜まり積み上がるばかりでなく軒先から落ちた融雪水でかちかちに凍り、もの凄い重量になるためにこの板がないと簡単に窓を破ってしまう。意外にもこうした開口部の一時補強は北海道以外の雪国から伝わったものであり、道外の金物店では今でも販売されている。
 
丸松工具(新潟)HP http://marumatsu-sash.xyz/?page_id=1178

落雪の量に応じて一段、二段と取り付けた。

もの凄い雪の力に耐えるために多くは6mm以上のFB(鉄板)が使われ、陸屋根が一般化するまでは冬に向けた地元鉄工所の主要な仕事のひとつだった。

たとえ軒を出しても雪は巻き垂れし、外壁のすぐそばを垂直に落下するから壁の排気口は必ず破損した。 
 
落雪型の屋根だと落雪方向以外の壁面しか、基本的に使えない。窓や出入りの自由を失うということは暮らしのために必用となる地上の余白を著しく制限されてしまう。

狭い敷地条件で落雪を少しづつ四方に分散させざるを得ない屋根の場合は特にたいへんで1階の窓は方位を問わずこうした雪止めが取り付くこととなる。日射を奪われた室内は暗いばかりか極端に寒く、北国の住いとしての基本さえ満たさなくなります。
 
たとえ半年間、屋根にとって厄介な重たい雪を載せたままにしたとしても、暮らす上で欠かせない地上の余白が確保されなければ、そこに生まれる北海道の暮らしを続けることは難しかった。そのためには屋根を第二の地面と考え、降った雪は落とさない。このあまりにも単純な発想の転換に到るまで実に長い年月を要したと思う。温暖地の屋根も注意深く見ると雨を受け流す屋根面とそれを集める軒先の樋でできている。雨は流してもそれを広範囲にばら撒いてしまっては暮らす上での用を成さない点はむしろ北海道となんら変わらないのではないのだろうか。
 
今日はMaroon 5なんていかが
 
 
 

2017年1月4日水曜日

2017新年明けましておめでとうございます。

 
 新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
年始は、昨年末の大雪がまるで嘘のようにとても穏やでした。今年は1月~2月にかけて日本各地から多くの方々が北海道に視察にお越しになります。全国のみなさまにお会いするのを今から楽しみにしています。この数年間で少しづつ北海道の住いと暮らしが本州に知られるようになりました。今年も一年、精一杯楽しんで家づくりに取り組みたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
この場をお借りして、みなさまのご多幸を心よりお祈り申し上げます。 2017年 元旦

2016年12月29日木曜日

2016年 御礼


2016年は前年からの着工分を含めて合計5軒の300mm断熱の住宅が完成した年になりました。2009年の「銭函の家」を皮切りにスタートした300mm断熱プロジェクトでしたががふと気付けば最新の「円山西町の家」で22棟目となります。平たく言えば、普通の家の3軒分の断熱材を使う300mm断熱プロジェクトは当初は「絶対に続かないよ!」なんて言われたものでした。



がしかし、人気が人気を呼んで口コミで広がり、最近では必ずクライアントさんにリクエストされるようになりました。家中に有害な寒さが無いこと、結果的に家を細かく間仕切る必要がなくなって広々とした空間が簡単に手に入ること、もの凄く静かなこと、簡単に一般的なオール電化住宅の半分の光熱費にできること・・・先輩たちが切り開いてくれた北海道の環境技術を使ってもの凄く簡単に質の高い住いが作れるようになりました。もちろんそういった地域の資産に投資し、私たちに家づくりのチャンスをいただいた全道のクライアントさんにもこの場をお借りして、心より御礼申し上げます。

全国に加え北欧や中東からもたくさんのみなさんが現場視察に来てくれた一年でした。温暖地の工務店さんや設計者さんが真剣に現場を眺め、次々に質問をしてくれることに驚き、自らの能力の無さにがっかりした年でもありました。来年はもっと精進したいと思います。(笑)

東北や四国、九州にまで講演でお招きいただいた年でした。北海道以上の素晴らしい実績に心から驚くとともに、全国にたくさんの仲間が増えたことは一生の宝物だと思います。

パッシブ換気がついに海を渡り青森の工務店さんが自らの現場で取り組みを始めた年になりました。高い外皮性能は断熱建物にとって欠かせない、計画換気と計画暖房を自立的に獲得するヒントになるという事実が少しでも全国に広がれば嬉しいと思います。

温暖地の建築家のお手伝いをさせていただく機会を得た年でした。普段は出会うことの少ない温暖地と寒冷地の建築家の協働はたいへん刺激的なものになるでしょう。

北海道の環境建築の歴史を少しだけ全国発信できた年になりました。1979年竣工の荒谷邸。がちがちの性能論ではなく情緒的な文化論でもない荒谷先生の魅力を東京の編集者さんに見つけていただきました。全国で環境建築を目指す若い人たちに響くといいなあ~と思います。

今年一年、お世話になった皆さんに心から御礼申し上げまして今年一年の結びとさせていただきます。みなさん、ありがとうございます。 よいお年を!(笑)

来年は1月6日より仕事始めとさせていただきます。

やっぱり第九でしょうか(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=EfViz-62ux8

「箱の家」をお手伝いする その4

12/10(土)久しぶりに難波和彦さんよりメールが届く。江別の「157S邸」の基本計画を煮つめる上でのアドバイスの依頼。クライアントに指摘されたことにはじまり、初めての北海道プロジェクトとあってかたくさんの質問をいただいた。

実はこの12/10から12/26(月)までに実に11回のメールでのやり取りが続いている。不思議なことにご本人の口から「やり取りを深めてみてますます「箱の家」らしくなってきた。」との言葉をいただいた時には安堵が半分少し意外な気もした。

私の勝手な印象で恐縮だが難波和彦さんは自らの作風を振り回すタイプの建築家ではない。静かに建築の成り立ちを観察しその振る舞いや仕組みを読み解くことを信条としているように見える。自らの建築に注ぐに等しい興味を周囲の建築に注ぐスタンスは巷でいうデザイナーズ建築家像とは全く異質なものだった。

具体的には難波さん側で作成した計画図を挟んでまずは、北海道目線での問題の抽出や双方の設計常識の差を埋めるべく合意の共有を行う。雪の話し、屋根型の話し、雨水と落雪の話し、換気や断熱構造の話し、構造やコストの話し・・・・・対話の中で生まれた興味はブログを更新する動機ともなった。

お互いにやり取りをして気付いたのは、私自身、普段何気なく行っていることの理由を説明するために多くの時間を必要とした。という笑えない事実だった。設計というのは不思議なもので、結果と解決の方法論さえ覚えてしまえば、その問題がそもそもなぜ生じたのか?とか、なぜそれ以外の方法では難しかったのか?と言ったそもそもの動機?は急速に忘れ去られてしまう。あまり良くない方法とその訳を憶えておくより、確実な方法を一つ覚える方が作り手にとって遥かに楽だからだ。

以前の投稿でも述べたように、私の役割は現地の技術アシスタントとして北海道で最初の「箱の家」を無事完成に導くお手伝いである。北国のレンズを通った箱の家がどんな風に出来上がるのか、今から楽しみである。

今日はリシッツアのワルトシュタインで
https://www.youtube.com/watch?v=wSs-2NDG4Ao

2016年12月25日日曜日

北海道 冬のあるある 2

 
昨日の投稿がウケたので本日は屋根編の第二段「簡易ダクト編」と行きましょう!ちなみに上の写真で凍った縦樋の上に見える三角形が後付された「簡易ダクト」の本体です。
 
昨日の投稿でもお話したように、勾配屋根はその形状で雨や雪を自然に受け流すところが、温暖地、寒冷地の区別なくたいへん合理的であると書きました。建物にとってみれば屋根のかたち次第で構造を痛める恐れのある雨水や耐震上不利な重たい雪を排除できるのなら、それこそまさに自己保存の原則に適うものでしょう。それではなぜ温暖地ではこの合理的な屋根が多いのに対して北海道には少ないのでしょう。そこを考えるために今日は落雪の応急処置として一時期流行った「簡易ダクト」を取り上げてみたいと思います。
 
この「簡易ダクト」、簡単に説明すると落雪に悩む家の対症療法として考え出された後付の内樋です。後付なので融雪水を流す縦樋は既存の軒天井を破って露出します。要は固体の水である雪は屋根上に留め置いたまま融けた分だけ流すと言う工夫で落雪の問題を解決しようとしているのです。勾配屋根と陸屋根のいいとこ取りのような考えですね。もちろん肝心の融雪水が通る縦樋は凍結に強い材質の管ですが、断熱性に乏しくおまけに屋外の低温に曝されるのですから中の水は管の途中で再び凍ってしまうかもしれません。そこで内部には強力な熱線ヒーターを仕込んであるのです。外気が零下を下回ると自動的に(又は手動で)ヒーターがONになり管内を温め凍結を防ぎます。もちろん生焚電気ヒーターですから電気代もかなりかかります。
 
この写真は見ての通り、簡易ダクトが深刻な状態であることを示しています。屋根の上で縦樋の入り口が詰まり水が溢れて軒先の中に浸水しあろうことか縦樋の外側を伝って下に流れ落ちています。当然管内のヒーターは何の役にも立たず管の表面を流れる水はどんどん凍って氷柱が成長するモードに陥っています。一度悪循環に陥るとたいへんでそれが今や1階の下屋にまで及んでいます。

こちらが下屋の簡易ダクト。二階から落ちる融雪水が軒先で重たく凍りつきどんどん成長しています。このままだと軒先が壊れてしまいそうです。
 
合理的なかたちに安易に手を加えたばかりに自己保存のかたちから一気に自己破壊モードに陥ってしまった例。ですから無落雪屋根は最初から陸屋根で設計しましょうね!ちゃんちゃん!と落ちを付けたいところですが実はそうではありません。
 
実は北海道で一般的なスノーレーンを備えた陸屋根も原理的にはこの簡易ダクトと大差ないのです。年に二回程度のドレン(排水口)の点検と清掃、凍結抑止ヒーターのチェツクがあるからこそ使えるのです。みなさんちやんと点検しましょうね。ちゃんちゃん・・と・・これも違います。(笑)
 
半年間、屋根に雪を積みっ放しにする北海道の陸屋根はそれ自体の合理性はけして高くありません。いやいや温暖地の合理性と北海道の合理性は違うのだ!なんて感じるのは自由ですが勘違いしてはいけません。屋根形自体に雨や雪をいなす力はないし、耐震上も構造補強上もどちらかと言えば不利です。ではそんな大切なものを犠牲にしてまでなぜ雪は落とさない方がよいのか?・・・・・それは暮らす(生活する)上でどうしても必要だからだと思います。生活する上でまず落雪の不安を取り除かない限り、建物を計画しても敷地のどこに置いてよいのか決められません。同様に敷地内に通路や物置、駐車場を計画したくても、選択肢は極端に狭いものになってしまいます。敷地の周りに接する公道との安全性にも不安が残ります・・・・・・・要は建築が合理的なだけではとても暮らせないのです。
 
実はこんな風に考えると温暖地の屋根もかなり似ている点がありますよね~(笑)。温暖地の勾配屋根は軒先に雨樋を付けます。雨樋の目的は軒先の全長に渡って雨が地面に落ちるのを防ぎ、縦樋でまとめて流すことです。これにより建物の土台を湿気から守り、妻面からも平面からも出入りが可能になり、アプローチや造園、物置や駐車場の計画が格段に自由になります。要は屋根型の合理性のみでは不十分で、雨樋とセットになってこそ、そこにさまざまな自由が生まれ、その結果、暮らす上で必要な事柄が満たされるのだと思います。もちろんこの場合、扱う水が液体のままであることが寒冷地との大きな違い。ここが大切です。
 
 
そんな風に考えると次の写真がまた違って見えてきませんか?(笑)
 
北海道の陸屋根は雨や雪を受け流す合理性を捨てて屋根を樋にする道を選んだ。
 
 
 
元々、水だけを相手にしていた軒先の小さな樋が巨大化し屋根化したのが北海道の陸屋根なのかもしれませんね。合理的であることは一見、明快に説明できることが魅力かもしれませんが、その一方で生活の実感を伴う事実を簡単に覆い隠してしまうのではないでしょうか。
左手奥の簡易ダクトの家はご愛嬌ですね(笑)
 
今日はヴァレンティーナのピアノで行きましょう!

 
 
 
 


2016年12月24日土曜日

北海道の 冬のあるある

今日は冬の北海道あるある!で行きましょう(笑)
 
まず最初は雪庇(セッピ)冬場、卓越風の風下にできる文字通り、雪でできた庇です。見た目は柔らかそうですけど実は凄く硬くてこのクラスの雪庇が下に落下すると下屋も壊れるし車なら大破ですね~恐ろしい・・・根本的な対策は中々難しいんですが巨大に成長する前に雪庇カッターでこまめに切って落とすのが正解。重量も凄いんで軒も丈夫に作っておきませんと折れます。冬場、北海道で屋根が壊れると悲惨なので屋根型は悩みますね~。
 
お次も雪庇ですがこちらは3階建てのアパートの様子。怖くて車を車庫から出せませんよね~。ここまで来ると、除雪屋さんを頼んで落としてもらい、ダンプで排雪ということになります。日本のほとんどを占める温暖地が主に気体と液体の水に対して注意を払うのに対して寒冷地は雪や氷のような固体の水まで検討の範囲を広げます。
 
ニ~三日暖かい日が続いて、暖気で緩むとこの数百キロの雪庇がギロチンのように垂直に落下しその際にレンジフードやセルフードを持って行かれます。北国の子にとって雪の積もった屋根に近づかないのはもちろん、間違っても軒下で遊ぶことがないように親からきつーく叱られて育ちます。

固体の水がどんなことをしでかすかの図。三角屋根はその形状が雨も雪も下に落とすと言う点で素晴らしく合理的なものだといえる。構造的にも積雪加重が無くなるんだからね・・・その一方落ちる先が1階の下屋だとその屋根を壊し、さらに滑って1階の窓の前に落下すると窓を破ってしまう。そこで本州(温暖地)テイストの間取りの家は上の写真のように窓を雪避けで塞ぐのが冬支度となる。最近は減ったけど固体の水を扱うという経験は時に屋根の形の合理性よりも落とした後の影響の方が支配的に屋根の形まで変えてしまいかねない・・・「落とす」という時点では液体の水、固体の水問わずに合理的なんですけど・・・その後の始末を考えると結果はぜんぜん異なってくると言うお話しでした。(笑)
 
昔は窓が屋根の雪で埋まるなんて毎年のことだから、軒下に積んでおいた半割の足場板をすぐに窓の前に取り付けられるように窓の両脇に金物まで付けていました。



こっちは巻き垂れ。緩勾配の屋根は高さを抑えると同時に落雪の速度を落として安全だって考えられていた時代があって、雪はゆっくり、ゆっくり低いほうに滑って軒を出たところで少しづつポキリと折れて落下するとイメージされていた。しかし結果はまったく正反対だった。屋根の上の雪は昼間の日照で融かされ夜間の寒さと風で硬く鍛えられる。これをクラストと呼び特に表面が硬くなりやすい。そうやって鍛えられた雪は軒先でポキリと折れるどころかみるみる巨大に成長しそのまま放置すると窓を破り、軒が落ちる。後に断熱と気密が貧弱だと屋根表面の雪を溶かしこの現象を助長することが明らかになった。北海道ではこの緩勾配の屋根をフラットルーフの呼ぶけど最近じゃ雪止めとセットじゃないと危険である。

よくこの写真を見て「馬鹿だな~こんなんになる前に窓から叩けば下に落ちたのに」なんておめでたい反応をする人がいるけど、窓から見える巻き垂れの裏側はびくともしない青氷なんですよ。屋根の雪を室内の熱で溶かしてスースー落とそうなんて誰が考えたんでしょう?(笑)
 
最後は氷堤(ヒョウテイ)読んで字のごとく氷の堤防。こんな勾配45°の家の雪がまったく落ちないなんて不思議ですよね~。この現象はズバリ気流止めの欠落。壁の中に高湿度の室内空気が流れ込み躯体内気流を生じてそのまま小屋裏に吹き抜けている。室内で温められた高湿度の空気は屋根を暖めながら最頂部の小屋裏換気口を目指す。その過程で暖められた屋根面の雪は水となって軒先めがけて流れ出す。さてもう少しで軒先から地面に・・・と思った矢先、軒裏の通気で冷やされた軒の真上で氷結し、氷の堤防が生まれる。一度できると待っているのは負の連鎖、次々に屋根面から流れてきた水が軒の上で凍り、巨大な氷の堤防に成長する。こうなってしまうと実に厄介。無理につるはしで氷を割ろうとすると必ず屋根を壊してしまう。さりとて放置すれば氷の重量で軒先が折れるのが先か・・うーんどうしたものか・・・
 

雪 雪 雪!

これが昨日の朝の状態・・・腰の悪い父に代わって、息子たちと妻よありがとう!西区は一日で1m突破した模様・・・
 
それにしても雪の重いこと重いこと・・・とても北海道の12月下旬とは思えません。
後もう少しで仕事納め、みなさんどうぞ気をつけて。
 
まあみなさんそう急がずにJAZZでも聞きましょう!(笑)

2016年12月21日水曜日

これで良いのか断熱改修


2016年12月8日、先進的な工務店さんの集まりであるソトダン21さん主宰のセミナーで、福島先生と共にお話しをさせていただいた。演題はずばり「これで良いのか断熱改修」。会場には今旬なテーマとあってか80名を超える人にお集まりいただいた。その後その様子が参加者数人のフェイスブック等に取り上げられたが、今後益々大切になる断熱耐震リフォームのお話しなので、そもそもこの企画が生まれた背景を明らかにしておきたい。
 
直接のきっかけはソトダン21の役員を務めるアクト工房の松澤部長からのお誘いだった。「12月に耐震断熱改修をテーマに福島先生とトークバトルをしてほしい。」突然のお話しだったので理由を尋ねると「実は最近、福島先生に絞られたんすよ・・」とのこと。松澤さん曰く「断熱耐震改修はまともに取り組むと安くできるどころか新築並みに高くなる。」と何気なく語ったことから福島先生がそれに食いつき議論が勃発。
 
福島先生:「安いリフォームなんてどーせまともな仕事なわけない!なんて経験豊かな工務店さんが決め付けるから、うちはできますよ!っていう悪徳業者がいなくならないんだよ。」
 
松澤部長:「断熱をやりかえるとか耐震性を上げるってかなり骨組みレベルのお話しになるじゃないですか?そんな大切な工事を安く!安く!ってそんな無責任な仕事はできませんよ~。
 
福島先生:「言いたいことは安っぽい仕事をしてよ!ということじゃなくて、例えば退職した人があと20年くらい、せめて快適に暮らしたい。とか断熱も気密も通気層もあるけど今の水準だともう少し断熱性を上げて、どうせなら耐震性も上げたいね!とかいろいろニーズがあるでしょ?そもそもあらゆる年代の断熱建物が混在しているのが北海道の実情なんだし、それぞれの年代の建物や住い手の要望にきめ細かく対応できる処方箋を用意するのがあなたたち地域工務店じゃないの?
 
松澤部長:そりゃ~・・分りますけど・・・やっぱり建物の根幹に関わる部分の性能を上げる!って考えるとハードル高くないでしょうか?自分には難しく感じちゃうんですけど・・・・・
 
福島先生:それじゃあ~僕が自分でお客さんを見つけて実践してみるからさ。その成果をイベントにしようよ。
 
以上:名古屋の夜にて・・・とのことだった。
 
話しを聞いて、真っ先に浮かんだのは「やられた、さすが福島せんせ!」だった。確かに先生が指摘するように、「断熱」や「耐震」と聞くとすぐに新築目線で根本からやり直さねば!という意識が働きやすい。特に別の工務店が昔に作ったものを直してよ!なんて頼まれると責任感も相まって、あれもこれもと神経質に疑いがちだ。その反面、間取りや構造といった部分がよくないばかりに単なる寒さ対策、耐震補強では終わらないものだってあるはずだ。要はリフォームってスタートの状況がぜんぜん違うから、事前の検査や診断がほとんど必要ない新築とは似て非なるもの。むしろ遥かに複雑で難しいものだと思う。先生が伝えようとしているのはそういう事実なんだと感じた。その上で松澤さんにはこんな風に伝えた。
 
山本:「そーいうことなら・・私が思いっきり新築目線のリフォーム事例を発表するから、それと対比させて行きましょう。要はセミナー当日は私が名古屋で叱られた松澤さんを演じるってのはどお?/笑」
 
松澤部長:「それそれ!それ面白そーですね~(笑)」
 
そんな理由で当日のセミナーと相成ったのですが・・・みなさんいかがだったでしょう?(笑)
 
福島先生は単に通気層はもう不要だ!と過激発言をしたのではなく、その条件として、1:気密が確保されていること、2:室内を常時負圧に保てる機械換気を備えていること、3:子育てが一段落し生活湿度が比較的低いことを前提とし、さらには通気層を実際に塞いで実験までして発表していました。確かに新築工事費の1/10以下でGW120mm断熱から一気に250mm断熱に変身出来るならそれはそれで素晴らしいと思う。「断熱+耐震≒高価」みたいな先入観じゃなくて、もっと幅広く物事を捉えられる視点を大切にしよう!目からうろこは落とそうね!ということでした。
 
先日、別件で北海道のこうした家づくりのスタイルをどんな風に表現したらよいのか?を考える機会に恵まれた。私は「環境実学主義」というのがいいと思う。と発言したのに対して、ある女性建築家が「環境生活主義」でもよい。と言った。私も彼女の提案がすっかり気に入り、これから使うことにしたいと思う。私たち北海道の作り手はいつだって環境生活主義の視点を忘れてはいけない。なぜなら今の北海道の建築を育てた源泉こそ環境と向き合う生活なのだから。
 
この場をお借りして、貴重な機会を与えていただいたソトダン21のみなさまと、学びと気付きを与えてくれた福島先生、当日は師走のお忙しい中、会場に駆けつけてくれた参加者のみなさまに心より御礼申し上げます。これからは断熱+耐震リフォームで全国一を目指しましょう!(笑)
 
今日は2CELLOS・・彼らのようにありたいということです。(笑)
 
 
 

2016年12月2日金曜日

ダイニングチェア納品

 
本日は「北広島の家」にダイニングチェアを納品してきました。当事務所のダイニングチェアは旭川家具。過去のブログにもちょくちょく登場する㈱匠工芸さんで作っていただいてます。デザインは同社のデザイナーで元専務の中井啓二郎さん。元々はお蕎麦屋さん用のハイチェアとしてデザインされたソイルシリーズをベースに、家庭で毎日使いのできる椅子としてリデザインしていただきました。オリジナルはナラフレームにWAX仕上、生成りの紙テープの編み込み座面でしたが、その後は少しづつ改良を加え今では各家庭ごとに様々なバリエーションが生まれています。
 
私の事務所で打ち合わせをしたことのあるOB、OGのみなさんにはおなじみだと思いますが、日本人の腰の位置を徹底的に研究して作られているので座り心地が抜群なところ、あまり大きな椅子ではないのに肘掛けが付いているところ、座面が広く半分あぐらのような座り方もできるところ、軽量で堅牢なところ、肘掛をテーブルに引っ掛けると簡単にテーブルの下を掃除できるところ、シンプルなデザインなので飽きないところ、ディテールが美しいところ・・・(笑)
 
そんな体験のせいなのか・・・みなさん新築後はあの椅子欲しいよね!と人気になりました。
 
株式会社 匠工芸HP http://www.takumikohgei.com/
 
肘掛を天板に掛けると脚が浮いてテーブル下の掃除がらくちん(笑)

使い込むとどんどん味わいの出る肘掛。 
 
こちらは座面の紙テープ。なので丈夫なのにすごく軽い椅子に仕上がります。


肘掛とフレームのジョイントは釘やビスを使わず、ウォールナット(西洋クルミ)の楔(クサビ)で留めます。

座面と脚のジョイントは磨きこんだナラの木口を見せます。
 
こちらはナラフレームにお尻の滑りにくい布のテープを張ったタイプ。

こちらがオリジナルデザイン。ナラ+生成りの紙テープ。
 
今日はJazztronikで行きましょう!
 
 
 

2016年11月28日月曜日

四国に行く

最近、本州のみなさまに呼んで頂く機会が増えました。
私たちの身近にすっかり定着した感のあるSNS・・・昔mixi・・今フェイスブック(FB)。
実は先日、四国を中心に高い環境性能の断熱住宅に取り組む工務店、アーキテクト工房Pureの高岡社長さんのお招きで四国の松山まで講演に行ってきました。

ほんの少し前までは住まいに求める価値観が違いすぎて私たち北海道の作り手が本州に呼ばれる機会なんてありませんでした。しかし今や、地球温暖化はそんな地域的な違いなどまったく意に介せず作り手にも住い手にも変化を求めています。今や沖縄を除く日本の全てで建物の断熱が義務化され本州の多くの地域で今まで関心の薄かった「断熱」という技術に向き合わざるを得なくなっているのです。

一日目は高岡社長のご案内で、ご自邸の現場を見せていただきました。ある意味、北海道の建物以上の出来栄え。すごい人は地域を問わず凄い!と感じました。

アーキテクト工房Pureブログ http://blog.livedoor.jp/pureblog01/archives/13419284.html

二日目は高岡さんも所属する先鋭的な工務店と設計者のグループ、ハウスデオーガニックさんのみなさんと合流し九州は熊本へ。そこで講演をさせていただきました。

アーキテクト工房Pureブログ http://blog.livedoor.jp/pureblog01/archives/13576190.html

三日目は3月の熊本地震の被災地を視察。地震の凄まじさをまじまじと実感。未だに解体の進まない多くの建物。そんなまちの中で黙々と現場を片付け、作業に従事する人たちを見て複雑な気持ちになりました。もっと自分事として物事に向き合う目を持たないといけないと感じたからです。

三日間を通して貴重な学びをいただきました。全国からお集まりいただいたハウスデオーガニックのみなさま、事務局長の高木さま、今回の講演のお声掛けをいただきました高岡さま、お忙しい時節にも関わらず二日目、三日目とご案内をいただきました立山建設の立山社長さま、職員のみなさま、この場をお借りして心より御礼申し上げます。

立山建設HP http://www.tateyama-jp.info/

2016年11月5日土曜日

青森に広がったパッシブ換気の家

東北での講演を機会に知り合った青森の工務店、建築工房クームさん。その後も数回北海道に来てくれるという勉強熱心さ。いよいよパッシブ換気の現場が地元でスタートした様子・・・楽しみです(笑)

http://ameblo.jp/cumu/entry-12212817728.html

クームさん:北海道の技術を認めてくれてありがとうございます。ぜひ青森でもパッシブ換気の現場を広めてください。(笑)

過去ログはこちら:http://ako-re.blogspot.jp/2016/08/blog-post_23.html

2016年10月25日火曜日

円山西町の家 見学会 お引渡し

10月22、23と見学会を行うことができた「円山西町の家」。通常より約1ヶ月短い工期にも関わらず最高のパフォーマンスで現場を仕上げてくれた「チーム円山西町」のみんなに心からお礼を言います。ほんとうにありがとう。そしてごくろうさま!(笑) 当日は雨の中、遠方からも多くの見学者のみなさんにお越しいただきました。また第三世代に進化した300mm断熱の現場見学を快諾いただいた建て主さまにはあらためて、この場をお借りして御礼申し上げます。私たち地域に生きる作り手にとって自らの仕事を世に問うチャンスをいただくことは貴重であるばかりかとても嬉しいことです。意外にもこうした実践の場を与えていただく以外に地域のものづくりを維持する術はありません。華々しくプロモーションされた大手住宅会社の製品はまだまだ日本人にとって家づくりの憧れであり続けるかもしれません。しかしその一方で別の方法だってあることを示し続けることがワクワクする地域の未来には欠かせないと感じます。
 
実は将来的に現在の職場である大手を辞めて自分で設計ができるようになりたい。という若者が一人で歩いて見学に来ました。図面を真剣に読みながら廻りを見回して質問をする彼がなんだか頼もしく見えました。「たいへんだけど応援してるから頑張ってね!」そう伝えると「はい、今日は貴重な時間をありがとうございました!」と言ってぺこり・・・見学会は様々な出会いがあります。
 
 
この敷地を与えていただいた時から、紅葉や雪化粧した美しい山々をどんな風に切り取ろうかと思いました。一時は窓を床まで下げようかとも考えましたが下に建つ住宅の居間が見えそうだったり屋根並みは必ずしも美しくなかったりと色々検討する項目が多い計画でした。階段を上がって振り向いた時に眼下にある余計な景色を隠して山々の連なりを見せるために窓の腰高を上げようと決めました。
北斜面が敷地ですから、家づくりの定石通り南側に居間を作って窓を大きく開こうとすると、通りの向かい側の家と視線が交錯します。この辺の土地を買う人の多くは眼下に広がる街並みや景色を楽しむために北側に多くの窓を付けているからです。上の写真は南側の立面ですが、通常の場合とは反対に日当たりの良い南面の窓を小さく絞り周囲からの視線に配慮しています。その一方、冬場の日射取得は減りますが、寒々しい室内となってしまわぬように、また素敵な風景が広がる北側を充分堪能するために300mm断熱の外皮性能やトリプルガラスのサッシを使っています。

階段の上がり口から左を向くと正面に薪ストーブ。

建物周囲を雑木林が囲む敷地。様々な風景を切り取って食堂に取り込む南側のコーナーウインドウ。

台所から食堂を見る。

階段を上って居間を見返したところ。
 
今日はピアノがいいです。もちろんお気に入りのヴァレンティーナで。(笑)