2016年7月3日日曜日

ニセコの家Ⅱ 内装工事

階段の掛かった「ニセコの家Ⅱ」。どの家も階段の蹴上(一段分の高さ)は18cmと決めていて16段目、15段目、14段目が2階の床になるように段数を選びます。小さなニセコの家Ⅱは14段目が2階の床。松の集成材で柔らかい足触りの階段にしました。蹴込み板は省いて段と段の間を透かすことで写真のように部屋の奥まで日が差し込みます。

これはU棟梁の丁寧な仕事。構造用合板のきれいな面を揃え合板と合板の間をぴったり突き付けるのではなく、5.5mmべニアを挟んで目透シ貼にしていただきました。目透シの幅は合板の厚みより必ず小さくします。壁の合板はDIY の大好きな建て主さんに合わせてどこでも作り付けの棚や家具が固定しやすいよう、ビスや釘の効きのよい12mmの構造用合板を使っています。なので概ねその半分を目地の幅としています。こうすることで、写真のように目地の底が黒く陰影となって一見ラフな感じの合板がきちんと見えるようになります。本来は下地にしか使えない構造用合板を使っても荒っぽく見えない見せない。細やかな手業を感じます。

壁が90cm感覚のリズムを刻んでいます。もちろん表面にはサンドペーパーが当てられ合板のバリやささくれを落としながら貼り込まれていきます。こうすることで後から色を塗ってもワックスやオイルで拭いても木肌が美しく仕上がって見えます。
 
よく素人建築家や怪しげな建築インテリア雑誌が「安価な材料を使えばイコール安くなる。」的な話しを書きますが、あれって現場を知らない人の記事です。確かに構造用合板は安価な材料ですが今までお知らせしたように、裏と表を見ながら使える面を決めて、ペーパーを当てながらバリや印刷を落とし、目透シの幅を慎重に決めて貼り込む注意深さと腕がないと「仕上げ」にはなりません。要はシナべニアとか構造用合板、SPF材(ツーバイ材)のような安価な材料程、大工の腕が欠かせないのです。

天井が顕しになるところは根太材の間隔を約20cmとして繊細な表情に見えるようにします。
 
ニセコの家Ⅱではインテリアのコーディネートを基本二色にまとめようと思いました。まずは木肌の生成り色、次には白色。これに床や土足の部分は汚れを考慮してダークグレーのタイルやダークブラウンのガラリといった汚れに強い色をほんの少量配してゆきます。要は室内の基本の二色+α(少量)で室内をまとめることで室内から不要な自己主張を除き、トータルでコーディネートされた統一感を残そうと思いました。アパートに住んでいるみなさんはぜひ身の回りの色や仕上げの数を数えてみてください。床の色と異なる明るさの木目のキッチンだったり室内の建具だったり、洗面化粧台や吊戸棚は白色、木目混在、おまけに色目や素材感が違ったり。また部屋ごとで壁紙の種類が違ったり、照明の光色がばらばらだったり。 生活が始まると様々な家財が家の中に入りますよね~。その時室内が生活じみて見える最大の理由は素のままの室内の色や素材がそもそも多すぎることです。住まい手の個性が生きるように素のままの室内は少々禁欲的なくらい、シンプルにコーデすることが実は大切です。
 
今日はJazztronikなんていかが

 
 

2016年6月28日火曜日

円山西町の家 着工手続き

 
妻と二人で「円山西町の家」の着工手続きを本日完了しました。
 
昨年の「平和の家」、「東光の家」に続き現在工事中の「北広島の家」、そして今回の「円山西町の家」と4軒全て長期優良住宅、多雪地域の耐震等級2、Ua値はほぼ0.2W/㎡K台の前半。もちろんZEHレディ対応です。
 
その一方で作る書類の膨大さには少々食傷気味・・・それというのも日本のお役所特有の申請時の「正副」主義が原因。一定期間保存しなくちゃいけないお役所の控えも全て申請者の手で作りなさい。というお約束のおかげで、たとえば民間確認機関のように特定行政庁(一定の決裁権を有するお役所)から一部権限を借りて審査を代行するといった場合には本来、正副二部でよかった書類が、お役所×1、民間確認機関×1、建て主控×1、事務所控×1、合計4部のようなお話しになる。もう慣れてしまったので特段ストレスにも感じませんが、まずは一部を徹底的に審査して全て訂正が終ってから4部コピーしてそれぞれに配ったらどうなのだろうと?毎度ながら思うのですが(笑)
 
今日はMonday Michiruなんていかが
 
 

2016年6月26日日曜日

円山西町の家 地鎮祭


 
本日は雨の中「円山西町の家」の地鎮祭でした。札幌は昨日からずっと雨・・・しかし祭壇と宮司さんを雨ざらしにはできません。そんな時見つけたのが写真の6角形の簡易テント。
ちょうど祭壇と宮司さんが納まってピッタリ。武田建設さん、さすがです。(笑)
 
 
 
さて、こちらもすぐに着工。忙しくなってまいりました。(笑)
 
今日はJazztronikなんていかが
 

2016年6月25日土曜日

 
今日は雨間から青空が顔を出して美しかった。こんな風景をバックにどんな家を建てましょう?
 
こんな風景にはBachですよね~(笑)
 
 

北広島の家 基礎工事

今日は雨の中、「北広島の家」の型枠を見に来ました。先日、地盤改良を行い増し固められた地盤の上にコンクリートで基礎を作りますがそのコンクリートを流し込む少々前が確認の頃合です。私の場合は基礎の外側にぐるりと分厚い断熱材を貼り付けて基礎断熱してしまいますから、断熱材や基礎を貫通するさまざまなパイプ等が全て見える今の時期がチェックには好都合なのです。

裏の斜面から見た基礎工事の全景。古い街区らしく前面道路は5.5mと少々狭いのですが、その反面国道側はいわゆるクルドサック(袋小路)となって通過車両が入ってきません。車両の通行は基本的に全て道路沿いの住民に限定されるために交通量が減って結果的に安全な街路環境となり易いのです。その一方、南側敷地であることから建物前面に資材や工事車両を乗り入れるストックヤードが取りやすく、それが狭い道路幅員を補ってくれて助かっています。基本的に前面道路が6m以下の場合は住宅用の小型RC杭打ち機の乗り入れが難しくなります。仮に何とか敷地に入れたにせよ杭を積んだトレーラーが進入できなければ、現実的に杭打ちができないことも多いのです。(街中の安い旗竿敷地なんかも同じなんで、経験の浅い設計屋さんは注意してね、図面完了したのに工事できません。って意外にあります。あっちゃいけないけど・・・)特に支持地盤が深い場合は安価な杭打ち工法が使えないとお手上げ・・・となる場合も少なくない。敷地を選ぶ際は周辺の地盤の強さと前面道路の幅員に気を付けましょう。
 
「北広島の家」を担当してくれるのは「ニセコの家Ⅱ」もお願いしている飛栄建設さん。M所長にはニセコと北広島を往復していただいています。

基礎断熱の厚みは15cm。強度的には断熱材側の型枠は必用ありませんが、ピシッと精度よく直線を出したい型枠屋さんは外側にも型枠を取り付けてくれました。
 

こちらはパッシブ換気の給気管導入用のケーシング(鞘管)です。取り付け位置と離れ(間隔)を確認します。

主筋が切断されることなく断熱材を貫通していることを確認します。

断熱材の仕様と指定厚さを確認します。

コンクリートを流し込む型枠の底にゴミや泥が溜まっていないか確認します。
最近はエゾ梅雨でしょうか?毎日、天気がすぐれません。コンクリートを打ち込むのに晴天はいりませんがせめて雨は過ぎてほしいです。
 
今日はヴァレンティーナのピアノなんていかがでしょう。
 
 

2016年6月21日火曜日

第7回JIA テスクチャレンジ設計コンペ

 
6/19(日)は第7回目の「JIA テスクチャレンジ設計コンペ」の公開審査でした。*北海道で建築を学ぶ若者を対象にした設計コンテスト(設計競技)として近年、応募者が急増。毎年、時流の風を捉えた社会性の高いテーマ設定に対して意匠的視点のみならず環境的な側面から解決策を提案する。という北海道らしさ満点のイベントです。
 
*注:参加ルールに関しては、道外居住であっても住民票が道内にある場合やグループの中にそうした人を参加させる等で北海道以外の地域からも参加することが可能です。
 
応募者の多くは普段、意匠専攻の学生が多いのですが審査委員長はあえて意匠の専門家ではなく環境の専門化が務めるというルール。日本の建築教育の多くは、依然「意匠」と「環境」を分けて教えることが多い。しかし当コンペにおいては意匠性と環境性を等価に扱い、普段は得ることの難しい環境の先生からの講評やアドバイスももらえる。というところがユニーク。
 
今年のテーマは「温度を楽しむおもてなし空間」
 
「おもてなし」って視覚的にはハレで華やかなイメージがあるけどあえて「温度」っていう可視化の難しいものを使ってそれを考えてみてね?っていうお題に対し、集まったのは45作品。
 
 
 
A2版で45作品となるとけっこう貼りだすのもたいへん。作品順と講評を間違えないように整理する実行委員。

10:00~16:00の長丁場にもかかわらず参加者のみなさんは最後まで審査に聞き入っていました。 そんな中、選考に勝ち残った参加者のプレゼンはさすがに聞き応えのあるものが多くありました。

 
一般的に建築の「温度」といえば単に室温を連想するのが一般的ですが、この女性は異なる素材で建築を作り、それぞれの自然温度差(Δtn)を手がかりに素材間で異なるであろう「温度」の質の違いを伝えようとしていました。

 
こちらは「体感温度」に着目し気温のみならず周壁の表面温度から「おもてなし」を考えるというアプローチ。
 
今年もタイトなスケジュールの中たくさんの参加をいただきました。参加者のみなさまにはこの場をお借りして心より御礼申し上げます。ほんとうにごくろうさまでした!
 
 

父の日

 
父の日に、長男からのプレゼント。
大切に履くよ、いい靴をありがとう!
 
こういうのやけに嬉しいものですね。歳のせいかな?(笑)
 
今日はそんな息子に一曲贈ります。
大好きなJazztronickで https://www.youtube.com/watch?v=2NSGeCWS99c

ニセコの家Ⅱ 外装工事完了


外装工事を終えた「ニセコの家Ⅱ」
 

外貼りで約20cmの断熱をした「ニセコの家Ⅱ」では窓も約15cm壁に埋もれる感じになります。

すっかり板金屋さんも慣れて、より上手に納められるようになった窓下の水切り。見付け寸法を15mmとしてシャープな印象です。
 

少し曇っていましたけどルピナスが自生する敷地周辺はとってもきれいです。

こちらが雪の落ちる西側。窓やレジスター等の突起物があると雪害が心配。そこで全くの無窓立面としました。それくらいニセコの冬は厳しいのです。
さて今後は内部の造作に集中、あと少し頑張ります。

2016年6月17日金曜日

北広島の家 地盤改良工事

駅から5分という立地抜群の「北広島の家」。その一方で地盤は少々補強の必要性があります。写真は柱状改良工法と呼ばれる地盤補強を行っているところ。地面に直径約60cmの穴を掘りそこにセメントと水を充填して攪拌しながら土中に硬い地盤を作ります。
 
上の写真は支持層(建物を安定的に支えられる丈夫な地層)の位置とそこに至る地盤の性質を示した柱状図(地盤の強さを示す断面図)です。地面から約1m下にN値4を超える少々硬めの支持層がありますがその厚みが1mもありません。その地盤を貫通すると「穏速自沈」。要は試験機の自重で緩やかに沈む柔らかい地盤が始まることが見て取れます。そして最終的に地山(ジヤマ)と呼ばれる硬い支持層に到達しその位置が地面から約3m少々下であることが分ります。この硬い支持層の上にセメントで増し固められた柱状の改良地盤を作り、家の重量が支持層に直接届くようにします。

地盤の改良に用いるセメントです。結構な量を使うので水が欠かせません。

こんな感じで重機の先に付けたオーガー(ドリル)で地盤を掘りセメントと水を流し込みながら作業を行います。
 
今日はOrianthiなんていかが

 
 

2016年6月12日日曜日

円山西町の家 地盤調査



 
本日は朝8時から来月着工予定の「円山西町の家」の地盤調査。最近はほとんどが長期優良住宅の仕事が多い。先日の熊本の地震や東日本大震災を経験して思うのは、やはり日本は活発な火山活動を背景とした地震国であること。安全第一に越したことはない。
 
今日はKalafinaなんていかが

2016年6月11日土曜日

北広島の家 起工式

 
今日は「北広島の家」の起工式。刈られた草のいい匂いの中で、司祭さまのお祈りを聞く。札幌のすぐ隣に位置する北広島市はベットタウンとして発展してきたんですけど近年は移住にも積極的に取り組んでいます。もちろんマイホーム取得中心世帯と言われる若年層の住宅施策も充実。この敷地、一見長閑に見えるけど実はJR北広島駅まで歩いて5分。札幌近郊にはまだまだいいとこありますね~(笑)
 
ちょっと羨ましくなったり・・・(笑) 
 
さてこの「北広島の家」。実は準防火地域内に建つ地域型住宅グリーン化事業対象案件。
補助付きの長期優良住宅です。 住まいの設計をしたことがある方ならご存知のようにこの「準防火地域」。隣地に近い部分の窓は断熱性の高くない防火窓を選択せざるを得ない。この敷地も素直に建物を置くと窓のほとんどが網入りガラスの防火窓という色気のないありさまになります。
 
そこで最近ぴか一の審査技術で気に入っている、北海道建築指導センターさんに確認を依頼。私もがっちり考えましたけど「防火上有効な袖壁」という但し書きを最大限使って南側正面の窓を全て普段通り、断熱性に優れたトリプルガラスの窓にしました。
 
ほとんどの人は知らないと思いますけど基準法の但し書きや告示を最大限使うには設計者以上に審査を行う民間確認機関の建築主事の力量が物を言います。昔はお役所しか受け付けていなかった建築確認申請ですが現在は自由化され民間の主事によって確認業務が行われています。同じ地域に新築したのに隣の家は凄く開放的でかっこよくて云々・・・なんてけっこう聞きますけどそんな時には設計者のみならず主事の力量にも目を向けるとよいと思います。
 
さて完成は10月・・・・・またまた頑張ります!(笑)
 
明日は日曜日。でもね来月着工の「円山西町の家」の地盤調査。
だから今日はハイロウズ・・・ものづくりだからね(笑)
 
 
 
 

ニセコの家 外装工事

先週は天気のよくなかったニセコ。でも雨が多かった分、敷地周囲のイタドリはどんどん伸びてこんな感じに。

すっかりお馴染みになった窓が壁より引っ込む納まり。板金屋さんの協力で窓下の水切りも年々かっこよさが増しています。窓が内側に引っ込むと窓枠の表面温度も上がって結露に対して強くなります。北海道でも未だに窓枠が壁より飛び出す納まりが多いけどほんとうはこんな風に断熱で厚みを増した壁に埋め込むように取り付けるのが標準工法になってほしいと思います。

北海道屈指の超豪雪地帯であるニセコ。屋根に積もった雪は基本的に落としたい。というのが今回のコンセプトの特徴。その際に落下した雪の破壊力で建物の足元が傷まないように雪は壁から1m50cm跳ね出したところに落ちるように軒先を長く出したい。でも普通の華奢な軒先じゃすぐに雪の重みで折れてしまう。そこで考えたのが最初の写真のようなトラス構造の頬杖。通常はこの頬杖を外部に出してデザインすることが多いのだけど雨仕舞いを考えて「ニセコの家」ではこの構造体を外壁材で覆ってしまいます。すっとくちばしを伸ばしたように見える特徴的な外観ができました。
 
さてさて少しづつ天候も回復してきたのでピッチを上げて行きましょう!(笑)
 
今日はアヴリルなんていかが 
 

山の手の家 訪問点検



約10ヶ月ぶりに訪れた「山の手の家」。外壁の松板が味わい深く変色してきました。

さっそくご主人と奥様に昨シーズンの冬の様子や改修前の家との違いをお聞きしました。奥様曰く「たくさんありますけど家中が暖かく穏やかになって全ての部屋がいつでも使えるようになったこと。寒さというストレスがなくなったおかげで冬がぜんぜん嫌いじゃなくなりました。むしろ窓越しに降る雪がきれいだと思えるようになったり、2階のテラスのガラス屋根に積もった雪が日中に緩んで落ちるのを眺めたり、雨が降っても屋根を流れる雨水を下から眺めるのが好きです。もう散ってしまいましたがテラスの前のさくらんぼの花が満開になる頃は見ものです。」

「薪ストーブも家族に大好評で炎がある暮しが大好きになりました。家の前はけっこう車が通るので以前は音が気になりましたが断熱のせいか、もの凄く静かになったのにも驚きました。洗濯物がすぐに乾くのも大助かりです。」

きっとOBのクライアントさんたちはここまでの文章を読んで笑顔で「そうそう」とうなずいていると思います。でもなんだか私が伝えるといいことばかりで嘘っポ過ぎるかもしれません。(笑)
そんな人はまた別の機会に見学会を設けますからぜひお越し下さい。



施工を担当してくれた武田社長と残りの点検を済ませ。奥さまに「北海道の人でも断熱に投資することをまだ疑う人がいます。お二人にとって築12年の新しい建物を断熱改修せざるを得なかった。という体験はたいへん貴重なものだと思いますが、その経験をどうやって他の人に伝えたらいいと思いますか?」との問いに奥さまが見せてくれたのが上のノートでした。

改修前の「山の手の家」は3階建てで2階と3階が居住部分。1階は玄関以外、全てガレージと物置です。寝室群のある2階が32坪(64畳)、LDKと水廻りのある3階が18坪(36畳)合計50坪の大きな家です。しかし2~3階を全て暖めると光熱費が膨大になり過ぎるために3階のみ暖房、2階は必要が生じれば入れる。という状態。要は断熱不足ために50坪のうち18坪しか健全な室温が維持できない建物でした。

今回の大規模断熱改修で、3階を解体しLDKと水廻りは2階の32坪に集約しました。全体では18坪減りましたが逆に暖房面積は18坪から2階全部の32坪に拡大しました。

その前提で使用前、使用後を比べたのが奥様手書きの上のノートです。 赤文字が改修前の金額。(改修前は個別の灯油炊き給湯、暖房ボイラーだったので金額は灯油代金)それに対して鉛筆書きが改修後の金額です。(改修後は都市ガス熱源の暖房給湯一体型ボイラー)

●灯油VS都市ガス
2015年の12月は¥30,761(灯)→¥15,345(G) ▲¥15,416
2016年の 1月は¥57,591(灯)→¥17,973(G) ▲¥39,618
2016年の 2月は¥37,700(灯)→¥17,037(G) ▲¥20,663

●電気
2015年の12月は¥15,106(電)→¥ 8,661(電) ▲¥ 6,445
2016年の 1月は¥16,677(電)→¥11,230(電) ▲¥ 5,447
2016年の 2月は¥22,709(電)→¥ 8,340(電) ▲¥14,369

●水道
2015(11.12)¥15,460(水)→¥11,300(水) ▲¥ 4,160
2016( 1. 2)¥15,114(水)→¥11,300(水) ▲¥ 3,814

(灯油、ガス)、(電気)、(水道)の各カテゴリー全てで大幅に改善。まずはホッ!が出ました。こうした実測は意外や私たちのエネルギーから見た暮らしの動向を知る上でたいへん貴重な資料になります。詳しい分析は道内の大学の先生にお任せするとして、私でも分る範囲の説明を加えてゆきましょう。

まず灯油VSガスのグループですがこれはもう断熱による暖房の燃費改善がどれ程強烈かに尽きます。暖房する面積が以前より14坪(28畳)も増えたにもかかわらず12月~2月の延べ3ヶ月間で約7万6千円も節約できました。ちなみにこの価格の中にはガスコンロによる調理の分も含みます。(以前はIH調理器具でした。)

次は電気のグループですが、改修前が蛍光灯主体だったのに対して改修後はLEDにしたこと。もうひとつは調理を割高な電気からガスに変えたことが大きいと思われます。(改修前の電気代には日々のIH調理器具の分が含まれている、改修後はガスコンロに変えたのでその分が減っている。)

最後に水道グループです。このグループも結構な金額を節約することができました。でもこのブログをお読みになっている方々の中には首をかしげている方もいることでしょう、一般的には建物の高断熱化は暖房の節約には寄与すれど水道の使用量や給湯に関わる燃費には関係がないと考えるのが一般的だからです。しかし実態は少々違います。 断熱の貧弱な寒い室内では浴槽にためたお湯もすぐに冷えてしまいます。そのために頻繁に足し湯や追い炊きを繰り返さねばなりません。また浴室や水廻りを断熱しないことが多い温暖地の建物では特に高齢者のヒートショックを避けるために入浴前の数分間シャワー等で浴室の床や室内を温めることを勧めています。要は室内の寒さが原因で新たなお湯の需要や本来は浴室を暖める目的ではない給湯用の燃料を焚いてシャワーの温水で局所暖房をしているということになります。こうした状況に陥らざるを得なくなるのも断熱不足の建物の特徴なのです。 

ブログをお読みのみなさんには「断熱をしても給湯負荷は減らない!」なんて言う専門家にぜひ注意してほしいものです。(笑)

今日は星野源を女性ボーカルで

2016年5月28日土曜日

ニセコの家Ⅱ 吹き込み断熱工事

「ニセコの家Ⅱ」の現場は急速に夏草に覆われつつあります。隣の敷地のイタドリがどんどん成長しています。すぐにジャングルかもしれません。(笑)
 
写真は窓を取り付け、外貼りの主断熱(ニセコの家Ⅱは基本的に外貼り断熱工法。矩体内の充填GW105mmが付加部分となる。)約190mm厚を吹き込むための下地を完成させたところです。表面に光って見えるのは吹き込み断熱材が外部に散乱しないようにするためのネット。このネットに充填ホースを突っ込んで圧力を掛けて破砕したGWを吹き込み40Kg/m3以上の充填密度で施工を行います。

写真はネットに充填ホースを突っ込んで吹き込み充填中の職人さん。一つの桝目状の充填区画に対して下から吹き上げした後に上から吹き下げて充填区画内の密度(断熱性能)を均一にして行くのは見ていて気持ちが良い。屋根や外壁の各方位別の面ごとに吹き込み充填が完了すると後を大工さんが追いかけるように防水+防風+透湿シート(タイベック)を貼って行く光景は想定通りで思わずニヤリとしてしまった。「おーいっ!M所長、時間当たりの施工速度と出来高しっかり記録しておいてね。今までの300mm標準工法と速度比較したいです。(笑)」

写真は吹き込み断熱が完了した後に広幅のタイベックを貼り終わったところ。40kg/m3以上の密度は大工さんが断熱材の上に乗ってもタイベックを踏み抜くことはありません。同じ屋根の外貼り工法でも圧縮強度が弱く踏み抜きに注意が必要なフェノール系板状断熱材のような神経質さとは無縁です。 
吹き込みを待つ壁の充填区画。写真右から左へ吹き込み充填が進行中。

充填密度が高いとこんな風に中央部分が30mmくらい盛り上がる。 

こちらが室内側の付加充填断熱部分。従来通り室内側から105mmGWを充填するが気密ビニールは写真のOSB合板の外側で既に完了済みなので室内側には必要ない。要は先張りシートという大工職の名人芸が欠かせなかった従来型の充填断熱工法を逆さまにして貼るのが難しい室内側シート貼りを壁の内側から外側に移したことがニセコの家Ⅱの断熱構造の最も大きな特徴です。

まだ充填が終っていない空の充填区画のネット越しに薄っすらと緑色に見えるのが気密ビニールです。従来の室内側の気密シート貼りは胴差しと梁、羽子板ボルトや床の厚もの構造用合板との取り合いを解決して下の階から上の階へ連続させねばなりませんでした。一方写真のようにそれらの絡みの全くない平滑な構造用合板の外側で気密シートを連続させることができれば遥かに簡単に気密構造が完成します。
 
でもね、室内側からの先張りシート工法は地域の大工たちの腕の見せ所でもあります。中でも最も上手にこの工程をこなせるのはアース21や古参の新住協会員の店で仕事を叩き込まれた大工たちだと思う。どれだけ凄いか見てみたいって?(笑)下の写真は2013年の「恵庭の家」を作ってくれたキクザワさんの現場写真。 これは順番の難しい土台下の気密レールと柱、そして床の厚もの合板との取り合い部分。土台の下に気密レールを敷き込み土台を外側から覆うようにビニールを巻き上げて土台と柱でビニールをサンドイッチして第一段階の気密を確保。次に厚もの合板の断面にピッチリ合わせてシートを固定して定規で切断(普通は定規なんて使わない)。この時重ね部分を必ず100mm以上確保できるように注意する。直角部分に出来上がったビニールの重複部分の美しい正方形が技量の証し!GWは最も安価な断熱材だけどその能力を最大限引き出すためにはこんな職人芸が必要なことをぜひ作り手のみなさんに知ってほしいと思います。 でもちょっと今日はリップサービスし過ぎたかな(笑)。
 
フラッシュモブってカッコイイ!マジ羨ましい(笑)
あんまりかっこよかったんで https://www.youtube.com/watch?v=yF-f-ND7FT4
 
 
 

18年前

 
ふと気付けば、もうすぐ札幌に事務所を開いて20年近くになります。
私は札幌生まれの札幌育ちですが、設計屋としてのキャリアは道北の首都である旭川市で始まりました。図面しか描けなかった当時の自分をたくさんの人が応援してくれました。今があるのもそうした多くのクライアントさんや人たちとの出会いがあったからです。
 
先日、道北地域に出張に出かけた際、独立後初めて設計した家を見つけました。勤め人時代の先輩と一緒にした仕事。もう18年も前のものです。白色塗装のスレート系サイディングにシルバー色のガルバリュウム折板のアクセント。木部の色は当時スウェデッシュレッドがお気に入りでした。(若いね~)

 
当時の基礎断熱は厚み50mmのXPS(3種)。壁は今となっては頼りない16kg/m3高性能を100mm充填。窓は当時からガデリウスのエリートフェンスター(3層ガラスでW空気層+アルミスペーサー仕様)。自分的にはまだ、柱の外側に耐力面材(当時からOSB合板)を貼ったりしたら壁内で結露するんじゃないか?と不安で不安で・・・(あこうくーん可愛い!/笑) ですからこの家は外壁廻りが木製筋交いで面材はまだ使えていません。その後数年して建てた妹の家ではじめてOSB合板を外壁廻りに面貼りして、建物がどれだけ揺れなくなるのかを体感するとともにその上にボード状断熱材を外貼りすることが気密を上げる上でも熱橋を抑える上でも絶大かを思い知りました。その後に登場する300mm断熱の各種躯体構造や現在取り組んでいる「ニセコの家」の改良型300mm断熱構造も全てこうした経験から生まれたものです。90年代はまだまだデザイナーズ○○やミニマルデザインは少数派。でもこうして見ると自分がいかに北欧風のデザインコードに縛られてきたかも発見できて興味深くも・・・恥ずかしい。(笑)
 
今日はChayなんていかが、彼女の声大好きなんです。
 
 

2016年5月21日土曜日

ニセコの家Ⅱ 断熱下地工事 その2

文字通り、カブトムシの甲羅のように合板を面貼りした構造体の外側をすっぽりとビニールで覆ってしまったところ。窓はまだ付いていない。もちろんこのビニールは屋根面から連続している。こうすることでより簡単に「連続した気密ライン」が完成する。

次は断熱サッシの取り付け。ビニールを窓の形状に沿ってカッターで切断開口し、外部側よりサッシを取り付ける。国産サッシの特徴である、ツバをビニールに被せその周りをぐるりとアクリルテープで気密する。要はサッシのツバと躯体でビニールを挟み付けるようにして従来は別工程とならざるを得なかった、1:窓の取り付け、2:気密化、3:止水処理を一回で完了させる。 詳しい人はもうお分かりのようにこの工法では建物の気密構造が断熱より先に完成する。つまり屋根も壁もビニールが完全に露出(目視可能)な状態で気密試験を行えるのである。もちろん漏気部分が見つかった場合は室内側からでも屋外側からでも自由に修理が可能となる。
 
□補 足
一般的には壁の断面構造の中で窓の取り付け位置と防湿+気密を担うビニールの位置は対極(←両端→)に離れてしまうことが多い。要は気密ラインと窓の取り付け位置が一致することは少ないのだ。これがどんな結果をもたらすのかといえば、壁の中心から見て外側では窓の気密+止水作業が発生し、今度は反対側に当たる室内側でもう一度ビニールの気密化が必用になる。もちろんこの作業は壁内に断熱材を詰め込んだ後に行わざるを得ないから、外部の窓が第一段階、内部の断熱材充填とビニールの気密化が第二段階とツーアクションを経ないと建物の気密化が完成しない。
写真は取り付けられ、気密化+止水を終えた開口部。もう不意の雨にも構造体が濡れることはない。 
 
今回の300mm断熱工法の改良に際してヒントとなったのは、従来の充填断熱+付加断熱の概念。要は壁の中にまず10.5cmの断熱材を詰め込んで不足する分をその外側に追加して(付加して)貼るという発想からの卒業だった。「ニセコの家Ⅱ」では屋根の構造と同じく主たる断熱は、建物構造の外側で取り一端完成させてしまう。その上で予算や必要性に応じて壁の内部(従来は主断熱と考えられていた壁内の充填断熱)を丸々【付加断熱+(配管、配線層)】としている。もちろん外部側で既に気密工程は完了しているので室内側の内装ボードの下に気密ビニールは必要ない。
 
余談だが暮らしにおける暖房エネルギーの消費量が全国一高い北海道では国の進めるZEH【注:ゼロエネルギー住宅と呼ばれ、断熱外皮で省エネ、太陽光パネル(PV)で創エネ(発電)することで実質の年間エネルギー収支が0となる住宅】も今のところは太陽光パネルの設置を免れている。積雪や現状の太陽光パネルの性能では不足等々・・・これから色々と議論は進むのだろうが、いずれにせよ今後は構造体の寸法で断熱性能が決まってしまうような設計思想は急速に陳腐化して行くように感じる。構造体に制約されず充分な断熱が出来る新たな道をたくさんの人たちと考えてゆきたい。
 
今日はT.フラナガンなんていか https://www.youtube.com/watch?v=_EcsQDHKkfs