2016年6月17日金曜日

北広島の家 地盤改良工事

駅から5分という立地抜群の「北広島の家」。その一方で地盤は少々補強の必要性があります。写真は柱状改良工法と呼ばれる地盤補強を行っているところ。地面に直径約60cmの穴を掘りそこにセメントと水を充填して攪拌しながら土中に硬い地盤を作ります。
 
上の写真は支持層(建物を安定的に支えられる丈夫な地層)の位置とそこに至る地盤の性質を示した柱状図(地盤の強さを示す断面図)です。地面から約1m下にN値4を超える少々硬めの支持層がありますがその厚みが1mもありません。その地盤を貫通すると「穏速自沈」。要は試験機の自重で緩やかに沈む柔らかい地盤が始まることが見て取れます。そして最終的に地山(ジヤマ)と呼ばれる硬い支持層に到達しその位置が地面から約3m少々下であることが分ります。この硬い支持層の上にセメントで増し固められた柱状の改良地盤を作り、家の重量が支持層に直接届くようにします。

地盤の改良に用いるセメントです。結構な量を使うので水が欠かせません。

こんな感じで重機の先に付けたオーガー(ドリル)で地盤を掘りセメントと水を流し込みながら作業を行います。
 
今日はOrianthiなんていかが

 
 

2016年6月12日日曜日

円山西町の家 地盤調査



 
本日は朝8時から来月着工予定の「円山西町の家」の地盤調査。最近はほとんどが長期優良住宅の仕事が多い。先日の熊本の地震や東日本大震災を経験して思うのは、やはり日本は活発な火山活動を背景とした地震国であること。安全第一に越したことはない。
 
今日はKalafinaなんていかが

2016年6月11日土曜日

北広島の家 起工式

 
今日は「北広島の家」の起工式。刈られた草のいい匂いの中で、司祭さまのお祈りを聞く。札幌のすぐ隣に位置する北広島市はベットタウンとして発展してきたんですけど近年は移住にも積極的に取り組んでいます。もちろんマイホーム取得中心世帯と言われる若年層の住宅施策も充実。この敷地、一見長閑に見えるけど実はJR北広島駅まで歩いて5分。札幌近郊にはまだまだいいとこありますね~(笑)
 
ちょっと羨ましくなったり・・・(笑) 
 
さてこの「北広島の家」。実は準防火地域内に建つ地域型住宅グリーン化事業対象案件。
補助付きの長期優良住宅です。 住まいの設計をしたことがある方ならご存知のようにこの「準防火地域」。隣地に近い部分の窓は断熱性の高くない防火窓を選択せざるを得ない。この敷地も素直に建物を置くと窓のほとんどが網入りガラスの防火窓という色気のないありさまになります。
 
そこで最近ぴか一の審査技術で気に入っている、北海道建築指導センターさんに確認を依頼。私もがっちり考えましたけど「防火上有効な袖壁」という但し書きを最大限使って南側正面の窓を全て普段通り、断熱性に優れたトリプルガラスの窓にしました。
 
ほとんどの人は知らないと思いますけど基準法の但し書きや告示を最大限使うには設計者以上に審査を行う民間確認機関の建築主事の力量が物を言います。昔はお役所しか受け付けていなかった建築確認申請ですが現在は自由化され民間の主事によって確認業務が行われています。同じ地域に新築したのに隣の家は凄く開放的でかっこよくて云々・・・なんてけっこう聞きますけどそんな時には設計者のみならず主事の力量にも目を向けるとよいと思います。
 
さて完成は10月・・・・・またまた頑張ります!(笑)
 
明日は日曜日。でもね来月着工の「円山西町の家」の地盤調査。
だから今日はハイロウズ・・・ものづくりだからね(笑)
 
 
 
 

ニセコの家 外装工事

先週は天気のよくなかったニセコ。でも雨が多かった分、敷地周囲のイタドリはどんどん伸びてこんな感じに。

すっかりお馴染みになった窓が壁より引っ込む納まり。板金屋さんの協力で窓下の水切りも年々かっこよさが増しています。窓が内側に引っ込むと窓枠の表面温度も上がって結露に対して強くなります。北海道でも未だに窓枠が壁より飛び出す納まりが多いけどほんとうはこんな風に断熱で厚みを増した壁に埋め込むように取り付けるのが標準工法になってほしいと思います。

北海道屈指の超豪雪地帯であるニセコ。屋根に積もった雪は基本的に落としたい。というのが今回のコンセプトの特徴。その際に落下した雪の破壊力で建物の足元が傷まないように雪は壁から1m50cm跳ね出したところに落ちるように軒先を長く出したい。でも普通の華奢な軒先じゃすぐに雪の重みで折れてしまう。そこで考えたのが最初の写真のようなトラス構造の頬杖。通常はこの頬杖を外部に出してデザインすることが多いのだけど雨仕舞いを考えて「ニセコの家」ではこの構造体を外壁材で覆ってしまいます。すっとくちばしを伸ばしたように見える特徴的な外観ができました。
 
さてさて少しづつ天候も回復してきたのでピッチを上げて行きましょう!(笑)
 
今日はアヴリルなんていかが 
 

山の手の家 訪問点検



約10ヶ月ぶりに訪れた「山の手の家」。外壁の松板が味わい深く変色してきました。

さっそくご主人と奥様に昨シーズンの冬の様子や改修前の家との違いをお聞きしました。奥様曰く「たくさんありますけど家中が暖かく穏やかになって全ての部屋がいつでも使えるようになったこと。寒さというストレスがなくなったおかげで冬がぜんぜん嫌いじゃなくなりました。むしろ窓越しに降る雪がきれいだと思えるようになったり、2階のテラスのガラス屋根に積もった雪が日中に緩んで落ちるのを眺めたり、雨が降っても屋根を流れる雨水を下から眺めるのが好きです。もう散ってしまいましたがテラスの前のさくらんぼの花が満開になる頃は見ものです。」

「薪ストーブも家族に大好評で炎がある暮しが大好きになりました。家の前はけっこう車が通るので以前は音が気になりましたが断熱のせいか、もの凄く静かになったのにも驚きました。洗濯物がすぐに乾くのも大助かりです。」

きっとOBのクライアントさんたちはここまでの文章を読んで笑顔で「そうそう」とうなずいていると思います。でもなんだか私が伝えるといいことばかりで嘘っポ過ぎるかもしれません。(笑)
そんな人はまた別の機会に見学会を設けますからぜひお越し下さい。



施工を担当してくれた武田社長と残りの点検を済ませ。奥さまに「北海道の人でも断熱に投資することをまだ疑う人がいます。お二人にとって築12年の新しい建物を断熱改修せざるを得なかった。という体験はたいへん貴重なものだと思いますが、その経験をどうやって他の人に伝えたらいいと思いますか?」との問いに奥さまが見せてくれたのが上のノートでした。

改修前の「山の手の家」は3階建てで2階と3階が居住部分。1階は玄関以外、全てガレージと物置です。寝室群のある2階が32坪(64畳)、LDKと水廻りのある3階が18坪(36畳)合計50坪の大きな家です。しかし2~3階を全て暖めると光熱費が膨大になり過ぎるために3階のみ暖房、2階は必要が生じれば入れる。という状態。要は断熱不足ために50坪のうち18坪しか健全な室温が維持できない建物でした。

今回の大規模断熱改修で、3階を解体しLDKと水廻りは2階の32坪に集約しました。全体では18坪減りましたが逆に暖房面積は18坪から2階全部の32坪に拡大しました。

その前提で使用前、使用後を比べたのが奥様手書きの上のノートです。 赤文字が改修前の金額。(改修前は個別の灯油炊き給湯、暖房ボイラーだったので金額は灯油代金)それに対して鉛筆書きが改修後の金額です。(改修後は都市ガス熱源の暖房給湯一体型ボイラー)

●灯油VS都市ガス
2015年の12月は¥30,761(灯)→¥15,345(G) ▲¥15,416
2016年の 1月は¥57,591(灯)→¥17,973(G) ▲¥39,618
2016年の 2月は¥37,700(灯)→¥17,037(G) ▲¥20,663

●電気
2015年の12月は¥15,106(電)→¥ 8,661(電) ▲¥ 6,445
2016年の 1月は¥16,677(電)→¥11,230(電) ▲¥ 5,447
2016年の 2月は¥22,709(電)→¥ 8,340(電) ▲¥14,369

●水道
2015(11.12)¥15,460(水)→¥11,300(水) ▲¥ 4,160
2016( 1. 2)¥15,114(水)→¥11,300(水) ▲¥ 3,814

(灯油、ガス)、(電気)、(水道)の各カテゴリー全てで大幅に改善。まずはホッ!が出ました。こうした実測は意外や私たちのエネルギーから見た暮らしの動向を知る上でたいへん貴重な資料になります。詳しい分析は道内の大学の先生にお任せするとして、私でも分る範囲の説明を加えてゆきましょう。

まず灯油VSガスのグループですがこれはもう断熱による暖房の燃費改善がどれ程強烈かに尽きます。暖房する面積が以前より14坪(28畳)も増えたにもかかわらず12月~2月の延べ3ヶ月間で約7万6千円も節約できました。ちなみにこの価格の中にはガスコンロによる調理の分も含みます。(以前はIH調理器具でした。)

次は電気のグループですが、改修前が蛍光灯主体だったのに対して改修後はLEDにしたこと。もうひとつは調理を割高な電気からガスに変えたことが大きいと思われます。(改修前の電気代には日々のIH調理器具の分が含まれている、改修後はガスコンロに変えたのでその分が減っている。)

最後に水道グループです。このグループも結構な金額を節約することができました。でもこのブログをお読みになっている方々の中には首をかしげている方もいることでしょう、一般的には建物の高断熱化は暖房の節約には寄与すれど水道の使用量や給湯に関わる燃費には関係がないと考えるのが一般的だからです。しかし実態は少々違います。 断熱の貧弱な寒い室内では浴槽にためたお湯もすぐに冷えてしまいます。そのために頻繁に足し湯や追い炊きを繰り返さねばなりません。また浴室や水廻りを断熱しないことが多い温暖地の建物では特に高齢者のヒートショックを避けるために入浴前の数分間シャワー等で浴室の床や室内を温めることを勧めています。要は室内の寒さが原因で新たなお湯の需要や本来は浴室を暖める目的ではない給湯用の燃料を焚いてシャワーの温水で局所暖房をしているということになります。こうした状況に陥らざるを得なくなるのも断熱不足の建物の特徴なのです。 

ブログをお読みのみなさんには「断熱をしても給湯負荷は減らない!」なんて言う専門家にぜひ注意してほしいものです。(笑)

今日は星野源を女性ボーカルで

2016年5月28日土曜日

ニセコの家Ⅱ 吹き込み断熱工事

「ニセコの家Ⅱ」の現場は急速に夏草に覆われつつあります。隣の敷地のイタドリがどんどん成長しています。すぐにジャングルかもしれません。(笑)
 
写真は窓を取り付け、外貼りの主断熱(ニセコの家Ⅱは基本的に外貼り断熱工法。矩体内の充填GW105mmが付加部分となる。)約190mm厚を吹き込むための下地を完成させたところです。表面に光って見えるのは吹き込み断熱材が外部に散乱しないようにするためのネット。このネットに充填ホースを突っ込んで圧力を掛けて破砕したGWを吹き込み40Kg/m3以上の充填密度で施工を行います。

写真はネットに充填ホースを突っ込んで吹き込み充填中の職人さん。一つの桝目状の充填区画に対して下から吹き上げした後に上から吹き下げて充填区画内の密度(断熱性能)を均一にして行くのは見ていて気持ちが良い。屋根や外壁の各方位別の面ごとに吹き込み充填が完了すると後を大工さんが追いかけるように防水+防風+透湿シート(タイベック)を貼って行く光景は想定通りで思わずニヤリとしてしまった。「おーいっ!M所長、時間当たりの施工速度と出来高しっかり記録しておいてね。今までの300mm標準工法と速度比較したいです。(笑)」

写真は吹き込み断熱が完了した後に広幅のタイベックを貼り終わったところ。40kg/m3以上の密度は大工さんが断熱材の上に乗ってもタイベックを踏み抜くことはありません。同じ屋根の外貼り工法でも圧縮強度が弱く踏み抜きに注意が必要なフェノール系板状断熱材のような神経質さとは無縁です。 
吹き込みを待つ壁の充填区画。写真右から左へ吹き込み充填が進行中。

充填密度が高いとこんな風に中央部分が30mmくらい盛り上がる。 

こちらが室内側の付加充填断熱部分。従来通り室内側から105mmGWを充填するが気密ビニールは写真のOSB合板の外側で既に完了済みなので室内側には必要ない。要は先張りシートという大工職の名人芸が欠かせなかった従来型の充填断熱工法を逆さまにして貼るのが難しい室内側シート貼りを壁の内側から外側に移したことがニセコの家Ⅱの断熱構造の最も大きな特徴です。

まだ充填が終っていない空の充填区画のネット越しに薄っすらと緑色に見えるのが気密ビニールです。従来の室内側の気密シート貼りは胴差しと梁、羽子板ボルトや床の厚もの構造用合板との取り合いを解決して下の階から上の階へ連続させねばなりませんでした。一方写真のようにそれらの絡みの全くない平滑な構造用合板の外側で気密シートを連続させることができれば遥かに簡単に気密構造が完成します。
 
でもね、室内側からの先張りシート工法は地域の大工たちの腕の見せ所でもあります。中でも最も上手にこの工程をこなせるのはアース21や古参の新住協会員の店で仕事を叩き込まれた大工たちだと思う。どれだけ凄いか見てみたいって?(笑)下の写真は2013年の「恵庭の家」を作ってくれたキクザワさんの現場写真。 これは順番の難しい土台下の気密レールと柱、そして床の厚もの合板との取り合い部分。土台の下に気密レールを敷き込み土台を外側から覆うようにビニールを巻き上げて土台と柱でビニールをサンドイッチして第一段階の気密を確保。次に厚もの合板の断面にピッチリ合わせてシートを固定して定規で切断(普通は定規なんて使わない)。この時重ね部分を必ず100mm以上確保できるように注意する。直角部分に出来上がったビニールの重複部分の美しい正方形が技量の証し!GWは最も安価な断熱材だけどその能力を最大限引き出すためにはこんな職人芸が必要なことをぜひ作り手のみなさんに知ってほしいと思います。 でもちょっと今日はリップサービスし過ぎたかな(笑)。
 
フラッシュモブってカッコイイ!マジ羨ましい(笑)
あんまりかっこよかったんで https://www.youtube.com/watch?v=yF-f-ND7FT4
 
 
 

18年前

 
ふと気付けば、もうすぐ札幌に事務所を開いて20年近くになります。
私は札幌生まれの札幌育ちですが、設計屋としてのキャリアは道北の首都である旭川市で始まりました。図面しか描けなかった当時の自分をたくさんの人が応援してくれました。今があるのもそうした多くのクライアントさんや人たちとの出会いがあったからです。
 
先日、道北地域に出張に出かけた際、独立後初めて設計した家を見つけました。勤め人時代の先輩と一緒にした仕事。もう18年も前のものです。白色塗装のスレート系サイディングにシルバー色のガルバリュウム折板のアクセント。木部の色は当時スウェデッシュレッドがお気に入りでした。(若いね~)

 
当時の基礎断熱は厚み50mmのXPS(3種)。壁は今となっては頼りない16kg/m3高性能を100mm充填。窓は当時からガデリウスのエリートフェンスター(3層ガラスでW空気層+アルミスペーサー仕様)。自分的にはまだ、柱の外側に耐力面材(当時からOSB合板)を貼ったりしたら壁内で結露するんじゃないか?と不安で不安で・・・(あこうくーん可愛い!/笑) ですからこの家は外壁廻りが木製筋交いで面材はまだ使えていません。その後数年して建てた妹の家ではじめてOSB合板を外壁廻りに面貼りして、建物がどれだけ揺れなくなるのかを体感するとともにその上にボード状断熱材を外貼りすることが気密を上げる上でも熱橋を抑える上でも絶大かを思い知りました。その後に登場する300mm断熱の各種躯体構造や現在取り組んでいる「ニセコの家」の改良型300mm断熱構造も全てこうした経験から生まれたものです。90年代はまだまだデザイナーズ○○やミニマルデザインは少数派。でもこうして見ると自分がいかに北欧風のデザインコードに縛られてきたかも発見できて興味深くも・・・恥ずかしい。(笑)
 
今日はChayなんていかが、彼女の声大好きなんです。
 
 

2016年5月21日土曜日

ニセコの家Ⅱ 断熱下地工事 その2

文字通り、カブトムシの甲羅のように合板を面貼りした構造体の外側をすっぽりとビニールで覆ってしまったところ。窓はまだ付いていない。もちろんこのビニールは屋根面から連続している。こうすることでより簡単に「連続した気密ライン」が完成する。

次は断熱サッシの取り付け。ビニールを窓の形状に沿ってカッターで切断開口し、外部側よりサッシを取り付ける。国産サッシの特徴である、ツバをビニールに被せその周りをぐるりとアクリルテープで気密する。要はサッシのツバと躯体でビニールを挟み付けるようにして従来は別工程とならざるを得なかった、1:窓の取り付け、2:気密化、3:止水処理を一回で完了させる。 詳しい人はもうお分かりのようにこの工法では建物の気密構造が断熱より先に完成する。つまり屋根も壁もビニールが完全に露出(目視可能)な状態で気密試験を行えるのである。もちろん漏気部分が見つかった場合は室内側からでも屋外側からでも自由に修理が可能となる。
 
□補 足
一般的には壁の断面構造の中で窓の取り付け位置と防湿+気密を担うビニールの位置は対極(←両端→)に離れてしまうことが多い。要は気密ラインと窓の取り付け位置が一致することは少ないのだ。これがどんな結果をもたらすのかといえば、壁の中心から見て外側では窓の気密+止水作業が発生し、今度は反対側に当たる室内側でもう一度ビニールの気密化が必用になる。もちろんこの作業は壁内に断熱材を詰め込んだ後に行わざるを得ないから、外部の窓が第一段階、内部の断熱材充填とビニールの気密化が第二段階とツーアクションを経ないと建物の気密化が完成しない。
写真は取り付けられ、気密化+止水を終えた開口部。もう不意の雨にも構造体が濡れることはない。 
 
今回の300mm断熱工法の改良に際してヒントとなったのは、従来の充填断熱+付加断熱の概念。要は壁の中にまず10.5cmの断熱材を詰め込んで不足する分をその外側に追加して(付加して)貼るという発想からの卒業だった。「ニセコの家Ⅱ」では屋根の構造と同じく主たる断熱は、建物構造の外側で取り一端完成させてしまう。その上で予算や必要性に応じて壁の内部(従来は主断熱と考えられていた壁内の充填断熱)を丸々【付加断熱+(配管、配線層)】としている。もちろん外部側で既に気密工程は完了しているので室内側の内装ボードの下に気密ビニールは必要ない。
 
余談だが暮らしにおける暖房エネルギーの消費量が全国一高い北海道では国の進めるZEH【注:ゼロエネルギー住宅と呼ばれ、断熱外皮で省エネ、太陽光パネル(PV)で創エネ(発電)することで実質の年間エネルギー収支が0となる住宅】も今のところは太陽光パネルの設置を免れている。積雪や現状の太陽光パネルの性能では不足等々・・・これから色々と議論は進むのだろうが、いずれにせよ今後は構造体の寸法で断熱性能が決まってしまうような設計思想は急速に陳腐化して行くように感じる。構造体に制約されず充分な断熱が出来る新たな道をたくさんの人たちと考えてゆきたい。
 
今日はT.フラナガンなんていか https://www.youtube.com/watch?v=_EcsQDHKkfs
 
 

2016年5月19日木曜日

ニセコの家Ⅱ 断熱下地工事

 
「ニセコの家Ⅱ」では更なる300mm断熱の施工効率化とコストデザインの進化に挑戦します。建築って基本的に凄く高価なものですよね、ですから出来上がりの良さや機能を果たすって言うことと同じ位、その時代に合わせたコストの検証は欠かせません。建設コストの内訳の多くは施工手間が占めるのですからその多寡をきめる設計と施工法の見直しをテーマとしました。
 
写真は屋根の厚物合板の上に貼った気密+防湿ビニール。その真ん中に見えるのが断熱垂木です。このままこの垂木の厚み分、一発で吹き込み断熱を行ってもよいのですがそれだけだと垂木の部分は熱橋(熱の逃げ道)となり、吹き込み部分との間に大きな断熱性能の差を生じます。そこで熱橋を減らす工夫をもう一手間加えて合計約35cm分の屋根断熱を一回で吹き込み施工する予定です。 通常の吹き込み断熱は下から上向きに(例えば下階から天井裏に向かって)作業することが多いですが、今回の場合は下向き仕事(重力方向)に広い面積を吹くことでどの程度時間当たりの施工効率が上げられるのかを確認します。

こちらは外壁の耐力面材(OSB合板)の施工です。写真は北壁を1階まで張ったところですが今後二階まで張り上げ、屋根と同じように気密+防湿ビニールを表面に貼り屋根の気密+防湿ラインと連続させます。接続を待つ屋根の薄緑色のビニールが折り曲げられているのがお分かりでしょうか、要はカブトムシの甲羅のように合板を面貼りした構造体の外側をすっぽりとビニールで覆ってしまうことで従来、壁は室内側、屋根は屋外側(当事務所は使い道の乏しい天井裏が出来る天井断熱は行っていない。基本的に外貼りの屋根断熱が標準なので)にあった気密+防湿ラインをシンプルに連続させました。こうすることで(専門家の人は断面図を思い浮かべてください)室内側から1:構造レイヤー+2:断熱レイヤー+3:通気、仕上げレイヤーが壁も屋根も同じ構造で施工可能になります。またこうした屋根、壁の構造の統一化は各工程の終了を合わせる事が容易になり次の工程の手配も簡単になります。従来のように屋根は屋根専用の断熱納まり、壁は壁でまた別の納まり、床は床で~なんて分けていてはその複雑さが工程の足を引っ張ります。 前述のようにシンプルな3レイヤーに建物構造を統一し、外壁材を貼れば壁、屋根材を貼れば屋根。要は3番目の材料が違うだけでその他は一緒!というシンプルな設計にしました。
 
余談ですがこの後、窓を取り付ければすぐに気密試験が開始できて、もし漏気を発見しても屋根、壁のビニールが全て露出していますから手当ても簡単に出来ます。漏気部分の特定には夏場ですからトレーサーガスを使ってみようかな?なんて考えています。気密試験終了と共に断熱工事開始。室内壁は従来通り大工さん、屋外は吹き込み屋さん。と手分けして一気に始め、こちらも単位面積当たりどの程度の施工出来高になるのかを確認したいと思います。
 
後はお天気が心配。この方法は基本的に雨の多いシーズンだと養生に更なる工夫がいるでしょう。今頃の穏やかな北海道向きですね。
 
今日はヴァレンティーナのピアノ。ラフマニノフで
 
 
 
 
 
 

2016年5月18日水曜日

ニセコの家Ⅱ 建て方開始

 
先週、ニセコの家Ⅱの建て方が始まりました。羊蹄山の麓で小さな家は見る見る出来上がって行きます。それにしてもニセコ晴れ!現場で働くのはとても気持ちのよいものです。
 
写真は床下暖房の配管。ウエルドメッシュ(金網)に安価なO2ストップ管を番線で固定して簡単に現場製作してしまいます。従来は床の上に高価な放熱器を置く設計でしたが、最近の傾向は基礎断熱した床下空間を積極的に暖房空間として活用することで床上の放熱器を不要とするものです。床下に熱源を広く薄く分散させることで、床下のコンクリートの潜熱除去(乾燥)を季節を問わず行うことが出来ます。例えば夏季に床下をほんの少し加温することで露点をかわし(カビの発生を抑え)同時に床下の乾燥を促して、結露の本番、冬に備えます。

JAS認定品の構造柱であることを確認します。近年は輸入材、特に旧東欧の国からの輸入材が増えました。森林大国の北海道ですが地域材がもう少し地元に流通できるような工夫を提案できないものか思案しています。 

梁、根太の天端を揃えた剛床工法はすっかり北海道に定着しましたが、重量のある厚物合板の取りまわしの際、高所でも大工さんたちが安全なように梁のピッチは極力半間(約90cm)以内としそれに直交する根太は20~45cm以内で梁に落とし込めるようにしてあります。従来は10cm角の角材を約90cm間隔に入れる工法でしたが、羽子板ボルトの省略と早期の足場確保のために最近ではこの方法をよく使います。
 

羊蹄山を背景に根太を固定するM職長。設計者としての図面の改良はこうした現場の声を即座に図面にフィードバックすることで行っています。大工さんが安全に効率よく作業できる構造図を描くことも大切なことですよね。

今日は星野源くんのSUNを女性ボーカルで
 

2016年5月3日火曜日

本物

事務所の近くにできた素敵なピザ屋さん。昨日はそこでライブがありました。
美味しい食事と本物の音・・・・・自分もこんな風にありたいなと思いました。

バンドは基本的にアコースティック。ギターなんてエフェクターナシ。
アンプ直結・・・くぅ~っ!シブかったっす。

2016年4月30日土曜日

ニセコの家Ⅱ 基礎工事完了

晴れ上がった羊蹄山の麓で無事に「ニセコの家Ⅱ」の基礎工事が完了しました。3間×4間で12坪の総二階。合計24坪の可愛らしいこの家ですが、さらにコストデザインを突き詰めた新たな300mm断熱として設計しました。従来は3回に分けて行っていた壁の断熱を外部と内部から同時並行で1回で行えるように改良し、屋根も完全な外貼り断熱として約35cmの断熱厚さを1回で施工が完了します。

基礎の外周部分は深基礎とし、内部は浅基礎のフラットスラブを耐圧板にして湧水対策しています。写真で見るとまだ湿って見えるコンクリートの部分が、つなぎ目のない厚み15cmのコンクリート版(フラットスラブ)として地下からの水圧に抵抗します。もちろん力V.S力なら自然にかなうわけがありませんからこの耐圧板の下は深めに砂利を入れ外周の深基礎の下の砕石層とつなげてあります。要は雪解けの時期に基礎の下に一時的に水が入ってもすぐに低いほうに引くように水はけを徹底的に良く改良した地盤の上に基礎を作っています。

コンクリート打設時にトロがボルトに飛んで付着するとボルトの溝を傷めてしまいます。そこで写真のようにしっかりテープで養生しています。また耐圧板のつなぎ目を極力なくすために吊り枠として布(立ち上がり)と床を一体で打設しました。

蟻避けの保護モルタルを塗り下げてから埋め戻しを行いました。

「ニセコの家Ⅱ」の基礎断熱の厚みは20cm。

こちらはパッシブ換気の給気口です。湧水等で地下水位が高い敷地の場合はアースチューブ(地中熱で外気を予熱するための埋設管)はむしろ危険です。通常通り基礎の横腹を抜いて給気管を入れます。

なんとも長閑なニセコの現場。GW明けからいよいよ建て方開始です!
 
さて今日はまじめすぎるブログだったので曲は~オリラジなんていかが(笑)
 
でも・・・思うにオリラジのネタ元はやっぱりこれじゃないだろうか? ft.Hyunaバージョンで
まあ~歌の内容は分らずともこのいケイケ感はオリラジ以上だと思う。(笑)
 
 
 
 
 
 

2016年4月11日月曜日

ニセコの家Ⅱ 基礎の湧水

本日は「ニセコの家Ⅱ」の配筋と仕上がり高さの確認に現場に行ってきました。基礎の周囲の地盤はかなり高低差があって、住宅街の平地とはぜんぜん違います。道路を基準に敷地に入る上で支障のない高さを決め、道路より低い部分は掘削土を用いて埋め戻して道路に擦り付けるようにM所長と打ち合わせを行いました。また融雪期特有の問題として基礎の西側から湧水があり、基礎のベース型枠に流れ込んでくるのでポンプを投入して24時間体制で水を抜いています。

本日の現場は零下の気温。冬に逆戻りしたようです。コンクリートは温度補正なしで施工したいので今は少し気温が上がってほしいです。
 
 

2016年4月9日土曜日

東北住宅新聞社ツアー フロム青森

 
昨日は東北住宅新聞社の紺野さんのアテンドで青森の工務店さん総勢16名が「澄川の家」へ見学にお越しになりました。パッシブ換気が実際に作動する様子や冬場と夏場の使い方、換気量が不足しがちな中間期の対応、パッシブ換気を設計する上での注意点等々を実際の現場を使ってお話しいたしました。

 
最近は大工さんも含めて多くの本州の工務店さんが見学にお見えになります。みなさん同様に凄く真剣で勉強熱心な方たちばかりで、時には自分が恥ずかしく思えるときさえあります。現場見学会の後はセミナー会場に移動して設計用外気温と管径、排気口までの高さを使って設計用換気量を計算する方法や実際の設計における留意点をお話しさせていただきました。

会場移動の際、乗せていただいたバスからの風景(石山通り)。普段バスは使わないので凄く視点が新鮮でした。
 

2016年4月5日火曜日

世界一貧しい大統領

一見豊かな私たちの世界。果たしてほんとうに自分たちは豊かなのか?大切なものを見失ってはいないだろうか?

ムヒカ大統領の演説より   http://logmi.jp/9911

2016年4月2日土曜日

東光の家 お引渡し

昨日は「東光の家」のお引渡しと取り扱い説明でした。昼間は少し春めいては来ても夜間はまだ冷えますね~(笑)。でもしんと冷えた夜に浮かび上がる家の明かりはきれいでした。

給湯暖房器の説明をして・・・・・

キッチンや食器洗浄機の説明をして・・・・・
最後にはお客様から素敵な山形のお酒をいただきました。
想えばこの一年間、貴重な挑戦の機会をいただきました。精一杯家づくりを楽しむことが出来て心より感謝申し上げます。

2016年3月30日水曜日

ニセコの家Ⅱ 現地調査

「ニセコの家Ⅱ」の現地調査が始まりました。今度は又心機一転、雄大な羊蹄山の麓でじっくり家づくりに取り組みたいと思います。担当は飛栄建設のM所長。本日は基礎屋さん、建て主さんと建築位置の確認です。

 
現場の帰りに、2007年に設計させていただいた「ニセコの家」のオーナーさんに教えていただいた、お店のカレーが凄かった。もの凄く美味しいばかりじゃなくその色彩感がきれい。

何気ないスナップが絵になる室内。無理してないのに雰囲気がある。
きっとこういうのをセンスって言うんですよね・・・

片隅を撮ってもヨーロッパの匂いがする。なによりゆったりとしたニセコ時間が最高でした。