秋田を中心に全国的に活躍中の環境建築家、西方里見さんが先日「東光の家」にお見えになりました。エコハウスに関する数々の著作で有名な同氏、実は大学時代は北海道とのこと。また古参の新住協(新木造技術研究協議会)のメンバーでもあります。 要は長年に渡り断熱による家づくりを進めてきた先輩に現場を見ていただくという貴重な体験をいただきました。短い時間ではありましたがたいへん密度の高い情報交換の時間となりました。
西方氏が現在、取り組んでいる床下エアコン暖房も床下を予熱空間とするところはパッシブ換気と似ていたり、大きな設備(エネルギー)による問題解決には懐疑的だったりと作り手としての共通項を感じる反面、同じ寒冷地でも旭川ほど寒くない秋田では熱交換換気が主流だったり、総じて電化住宅の割合が高い地域独特の設計思想だったりと凄くためになる時間をいただきました。
この場をお借りして心より御礼申し上げます。
西方さんのブログより http://nisi93.exblog.jp/24237722/
2016年3月21日月曜日
2016年3月17日木曜日
東光の家 見学会のご案内
かねてより、「チーム東光」として取り組んでまいりました旭川市「東光の家」がおかげさまを持ちまして竣工を迎えます。この度、建て主さまのご厚意により見学会を催すこととなりましたのでご希望の方はお知らせ下さい。
たいへん恐縮ですが当日の混乱を避けるために見学会は事前にお申し込みをいただいた方のみとさせていただきますので予めご了承下さい。
■見学をご希望の方は1:住所、2:氏名、3:ご連絡先(携帯可)を記入いただき下記のアドレスまでお送り下さい。確認の後、地図を返信させていただきます。
連絡先 teste-ako.ao@dream.com(誤送信防止のためteste-以降のアドレスをお使い下さい。)
*:いただいた個人情報はご本人様確認以外には使用いたしません。
■東光の家とは?
北海道らしさ溢れる間取りとして最近人気を増す「二階リビング型」。一方、従来から高齢化を気にするあまり、寒冷多雪地域の北海道であってもまだまだ「一階居間型」の間取りも多い。特に地方都市だと車の所有率も高く、そのままでは1階に作りたいものばかりになってしまい、結果的に二階は寝室くらいにしか使えないとなる。またガレージや物置を後から敷地内に増設するケースも多く、そんな理由からお馴染みの雑然とした住宅街のイメージに陥りやすい。そこで発想を逆転し大きな面積を必要とする居間部分(LDK)を緩い階段で二階に上げ、1階の空いたスペースにカーポートや物置を取り込む間取りを考えた。果たして緩い階段で二階に設けられたLDKは巨大な窓も相まって、とても明るく見晴らしもよい。
「西野の家Ⅱ2013」の二階リビング
札幌圏では数棟の実績があるこの「二階リビング型」だが、道北圏では「東光の家」がはじめての試みとなる。この間取りを実現する上で最大の懸念は道北圏特有の厳しい寒さだった。二階を居間とするこの間取りは吹き抜けと大きな窓(8畳~10畳)をセットにすると、とても開放的で気持ちがいい。半年近くも雪に覆われる地域であるからこそ、寒さや雪を気にせず貴重な冬の太陽を存分に室内に取り込めるとしたら・・・・・それはきっと北国の住人誰でもが抱く憧れといってもよいだろう。
「西野里山の家2013」の二階リビング
■超断熱サッシ(Wスキン4重ガラス)
具体的には札幌圏で使うことの多い希ガス入りのトリプルガラスでは性能的に不安なので、以前からアイディアとしてあたためていたWスキン構造の4重ガラスの開口部を地元のびえいからまつ共同組合と一緒に開発することとなった。一般的なトリプルガラスの場合だと開口部の性能を示すU値は概ねU:1.0~0.8W/㎡K程度。一方新開発の4重ガラスを用いた場合はU:0.5台も夢ではない。こうして居間に取り付けられる約8畳(3.6m×4m)の大開口を実現することができた。
「銭函の家2009」で採用したWスキンテラスドア。超断熱化によって必然的に生じる分厚い壁厚を利用して外開き戸と内開き戸を組み合わせ、シンプルに開口部の性能を上げる。ガラスは安価なペアでも性能はトリプルガラスを凌駕する。
■パッシブ換気
寒冷地の断熱建物にとって欠かせないのが計画換気と計画暖房。しかし道北圏の厳しい寒さは熱交換換気(一種換気)を凍結させ充分な解決策とはなり得ない。そこで超断熱化と気密化で建物自体を高性能な煙突に見立て、内外温度差で自然発生する煙突効果を利用して家中の換気と暖房を同時に解決できるパッシブ換気を採用している。「東光の家」ではさらに壁に取り付けたソーラーウオーマー(太陽熱集熱装置)で寒冷な外気を予熱してから床下に導入し暖房負荷の低減を狙っている。
■カラマツ材
美瑛産の唐松材を外装や内装、構造材に用いている。その他にも白樺や真樺材等、地域産の美しい木材を使用した。
性 能
■平成27年度地域型住宅グリーン化事業(長期優良住宅)
■北方型住宅ECOプラス
■フラット35S金利A仕様住宅
■Q値:1.1W/㎡K
■燃費:500L/年.灯油換算
■C値:0.2cm2/㎡
各部仕様
●インナーカーポート+玄関+物置
●パッシブ換気 (換気と暖房に自然エネルギーを併用する北海道産技術)
●薪ストーブによる炎の見える室内。
●道産カラマツ、白樺材による内装
●給湯と暖房(熱源:都市ガスによる潜熱回収型ボイラー)
●4重ガラス(Wスキン)、樹脂製断熱サッシ(トリプルガラス)
●超断熱がもたらす寒さのない穏やかな室内(300mm断熱)
●夜を楽しむ内照式照明、LED照明
●北海道産カラマツによる木貼の外装
●屋根はシート防水による無落雪タイプ
施 工
●株式会社 清水組 現場所長:菅野文治 棟梁:菅野和義、職長:菅野昇太
●設備工事:株式会社 大林 担当:大林健太
●電気工事:株式会社 美詠 担当:浅野広道
サブコンストラクター
●断熱サッシ:びえいからまつ共同組合 平井正美
●20kg超高性能グラスウール:パラマウント硝子工業㈱ 松田三紘
●オーダーキッチン:クリナップ㈱ 直需事業部 石川一人
●製作家具:㈱匠 工 芸 桑原 強
●断熱ブラインド:P.Vソーラーハウス協会 深井萌似
●白樺積層合板:瀧澤ベニヤ㈱ 瀧澤貴弘
●ソーラーウオーマー:㈱マツナガ 松永潤一郎
環境コンサルタント
●(有)タギ建築環境コンサルタンツ Dr. S.M.タギ
プロジェクトマネージャー
●山本亜耕建築設計事務所 山本亜耕
2016年3月15日火曜日
東光の家 上棟式
先週は東光の家の上棟式でした。夏場ならばひと月前がその時期に当たりますが、2月は北海道の厳寒期。中でも道北地域にとって厳しい季節です。現場的にも工程に集中するために時期を見定めておりましたが、建て主さまのご好意もあって晴れて上棟のはこびとなりました。
想えば地鎮祭からはや4ヶ月。本当にあっという間でした。現場的にも残すところ内装と家具類の取り付け、最終美装を終えると見学会。正味3週間で「東光の家」の現場も完了です。あと僅かですが、仲間たちと素敵なものづくりの時間をたのしみたいと思います。(笑)
宮司さんは地鎮祭の時と同じように見事な笛を吹いて下さいました。吹き抜けの高い天井に朗々と響く大きな声で祝詞(ノリト)が読み上げられ、建て主さまとご家族の繁栄、家内安全、そして現場で働く私たちの安全を祈願していただきました。
白木に書かれた立派な棟札。従来の家のような天井裏がない「東光の家」では安置する場所も工夫が要ります。(笑) K所長と相談してピッタリの場所を見つけました。(笑)
この棟札には建て主さまの名前ばかりでなく、建設会社の棟梁や設計者の名前も記されています。以前にも書きましたが、次にこの棟札が日の目を見る時は、この家が壊されるか、大改修される時でしょう。その時既に私はこの世にいないかもしれませんが、現場を受け持つであろう未来の大工や現場所長たちが私たちの仕事を見てどんな風に話しているのかとても気になります。(笑) 未来の彼らに笑われぬようあと少し現場に打ち込みたいと思います。
美しく変色が進む美瑛産の唐松外壁です。いつも使っているエゾ、トドマツとは異なり木肌の赤い唐松は最初から仕上がりも上品です。年を重ねるごとに味わいを増してくれることを楽しみにしています。
さて、あと少し!道北圏では久々の見学会まで、チーム一同頑張ります!(笑)
今日は春っぽく!乃木坂ちゃんで(笑)
2016年3月5日土曜日
shiro 武部建設
先月の末、旭川からの帰り道、カフェshiroの前を通りかかった。shiroは地元の砂川を中心に展開するオーガニック化粧品のブランド。全国にたくさんの愛用者を持つ。工事中から正面の巨大なカーテンウオールや木造トラスの小屋組み等がちらりと見えて実は気になっていた。
先日、別件で武部社長にお会いする機会があってお話しをお聞きしたが、全て自社の設計施工とのことで正直驚いた。こんな店舗や住宅がばんばん出来るなら近い将来、設計屋なんていらなくなるだろうな~(笑)と恐くなりつつも、ある意味北海道のリアルを体現していると感じた。
ご存知、武部建設さんと言えば、80年代から高断熱高気密による北国の家を熱心に探求し、新住協(一社 新木造住宅技術研究協議会)の古参会員としてまた役員として北海道の家づくりに取り組んできた輝かしい実績がある。日本の多くの地域でいまだに、断熱推進派VS伝統的木造派の対立構造が言われる一方、同社では断熱が伝統的木造をよりよくするという視点に立って古民家の再生(時には改良)に携わってきた。もちろん純粋な和小屋も得意だが、開拓期にアメリカから伝えられたトラス構造による大スパンの小屋組み再生は今や、同社の特色あるライフワークと呼んでいいだろう。
まさに今、北海道の建築は環境的デザインの時代に急速に動きつつあることを感じた。
武部さん~かっこいい~(笑) ! これからも「Q1古民家」とか「超断熱デンモク(伝統的木造)」とかオリジナリティー溢れる仕事をたくさん見せてください。もちろん「超断熱10mスパンぶっ飛ばし住宅」なんかも楽しみにしています。(笑)
武部建設株式会社HP http://www.tkb2000.co.jp/
東光の家 製作キッチン打ち合わせ
「宮ノ丘の家Ⅱ」の製作キッチン
以前のブログでも何回かご紹介してきた特注のキッチン。それぞれの家の主婦の要望を元に各部のパーツを厳選して作るオーダーキッチンはとても人気があります。写真はクリナップ直需事業部の石川氏と打ち合わせをする「東光の家」の建て主ご夫妻。天板の材質や磨き方、シンクの種類やカラン。作業台の高さに照明、ビルトイン機器のバリエーション等々・・・・・石川氏の手に掛かれば自分だけの一台が手に入るとあって、最近はほとんどのクライアントさんから逆指名(笑)をいただきます。もちろん一台、一台レイアウトも仕様も違うわけですから石川氏の苦労たるやたいへんなもので・・・一方そうした職人技が北海道独特のLDKと呼ばれる一体空間を安らぎに満ちた家族の場にしてくれます。
みなさんが何気なく受け入れているLDKの大空間は実は北海道独特の空間で、他の地域に行くと食堂と台所のスペースをまとめて居間から離したりするのが一般的です。一方、家の中心にストーブを置いて暖を取りながら暮らしてきた北海道ではこれらをまとめて一体の空間とすることに抵抗感が薄くそれが現在の一体的なLDKにつながっていると言われています。
要はLDKに入ると、ドーンとお客さまを出迎えるのが対面型キッチン!
イメージ的には家具の王様的な存在ともいえるでしょう。
さてさてもうすぐ竣工の「東光の家」ですがどんなキッチンになるのでしょう。今から楽しみです。
キッチンの記事は人気なので(笑)
今日は星野 源くんなんていかが、この曲彼らしさ満点です!(笑)
2016年2月29日月曜日
部屋の温度を見える化する
以前は300mm断熱のPRに暖かさを謳うことがほとんどでした。
でもよくよく考えて見れば壁を30cm、屋根を40cmも断熱し気密測定までして暖房器具を動かせば凄く・・・場合によってはもの凄く暖かくすることなど造作もないことです。(笑) 従来の北海道標準である壁15cm断熱の家だってエネルギーさえ使えばいくらでも暖められます。
そこで最近は、あえて暖房を入れない状態(建物の素の状態)で視察や内覧会を行うことにしています。要はエネルギーで暖めることで、部屋の各部分の表面温度を上げてごまかすのではなく、建物がある程度冷えた状態で各部分に断熱のムラや欠損が少ないことを大切にしたいと思いました。 不思議なことですが各部分の温度が穏やかに均衡すると空気温が低くてもあまり寒さを感じなくなります。「平和の家」は普段は暖房を切って日射のみ入れた状態で約18℃くらいの室温です。このように極力建物の素の状態で落ち着く温度を仮に「快適温度」、暖かいな、心地良いな~と感じる温度を同様に「快感温度」と呼ぶことにして最近では暖房計画を考えることにしています。快適温度だけだと、「寒い暖かい」といった個人差までを吸収するのは難しく、その上の4~5℃を積極的にエネルギーを使う温度域としてエネルギーの無駄を省きながら、満足度も失わないように工夫しています。
室内の床、壁の温度は約16℃で均衡して穏やかな状態。基礎断熱が貧弱で、床下の潜熱(コンクリートが乾燥する際に床下の温度を奪って冷える現象)の影響を抑えることが出来なかった時代は床だけが冷えて紺色でした。(笑)
こちらは建物の東の端から西の端までを写したところ。
熱画像にするとこちらも床、壁、天井の表面温度が均衡している様子がよく分ります。よく「基礎断熱は一年目は床が冷たいものだ。」という人がいますが、しっかり断熱することと、床下の熱源で防湿コンクリートの乾燥を促す工夫を行えば竣工直後から快適に過すことができます。
こちらはよく冷たさが指摘されるコンクリートの玄関土間と室内の木床の境界の写真です。
以前はわざわざ玄関に温水暖房の配管を通していましたが、最近は代替案が完成したので床暖房はしていません。それでも温度差はほとんどなくなりました。雪の中を歩いてきた私の靴が一番冷えているのがよく分ります。(笑)
今日は大好きなBUMPなんていかが
2016年2月27日土曜日
視察+視察+視察
一昨日から本日まで、視察+視察+視察でした。今回は財務省と国交省の若き官僚のみなさんが「平和の家」を視察にお見えになりました。外は雪なのに、無暖房で室内が18℃に維持できることを説明すると不思議そうに「なぜそんなことが可能なのですか?」と多くの方から聞かれました。長らく日本の一般的な家づくりと比べて北海道が例外的とされてきたことや、建物を断熱することに取り組んで既に40年以上の歴史があること。 寿命の短い機械設備に関する補助が増加する中で、建築の外皮性能を対象に、補助施策を検討していただくことは、前者に比べ遥かに長期間の価値保存につながること・・・等々をお話しさせていただきました。 みなさん初めて聞くお話しだったようで、熱心に家中を見ながら耳を傾けていただきました。
総勢10名の視察団となり、広めの「平和の家」の駐車場も満車状態でした。
翌日は東京のコンサルタントさんと関東圏で環境建築に取り組む工務店さんのグループが視察にお見えになりました。まずは「平和の家」をご案内して次は「澄川の家」へ。
みなさん2020年の断熱義務化を意識してか、やはり断熱することを「省エネ目線」で捉えている方々が多いなあ~。という印象でした。そこで、断熱がもたらす別の特性をご説明し、パッシブ換気が実際に作動する様子を見ていただきました。やはり専門家の方々ばかりなのですぐに興味を持っていただき、床下の記念撮影が続きました。(笑)
不思議なもので、最近は北海道の建築をとても多くの人々が見学しに来ます。国の省エネ基準の義務化が大きいとは思いますが、幸せなことだと思います。少しづつですが時代が変わりつつあると感じた今日この頃でした。
今日はカッコイイさかなクン!なんていかが(笑)
2016年2月24日水曜日
東光の家 定例
厳しい寒さの中、外壁を貼り進む「東光の家」。基礎工事からほぼ1.5ヶ月でここまで来ました。現場を指揮するK所長。ごくろうさま、これからはいよいよ内装、引き続き頑張りましょう!(笑)
やっぱり道北の冬は別格!資材も人も凍る、凍る・・・
一転、平和な室内。下地がどんどん完成。ボード張りに突入です。
この段階でSWの高さや位置等は全部確認しておきます。私の場合はSWは床から1m、コンセントは床から30cmです。
K所長が細かく丁寧に書いてくれた詳細図を見ながら各部を確認して行きます。
床のタイル割りや各部の細かな寸法を確認します。
2016年2月16日火曜日
2016年2月4日木曜日
東光の家 全力全開!
1月13日から始まった建て方から実質二週間少々。3月完成を目指す「東光の家」は素晴らしい速度で工程を消化しています。実は設計者として今、正直感動しながらこの記事を書いています。1月中旬から今日(2/4)までの約半月間、引渡しや、視察、見学会に講演と目まぐるしくも充実した日を過させていただきました。たいへんありがたい反面、先日は大雪のために現場に行けない等、設計者としてのストレスも感じていました。その間に現場を担当するK所長と棟梁として現場を仕切るK棟梁(K所長のお父さん)の仕事ぶりを定期的に送っていただいた写真を通して拝見していました。
1/15の様子。凄く早い!
300mm断熱のような超断熱化建物にとって建て方(構造部材を組み上げること)と同時に気密&防湿を受け持つシート(先張りシート)を挟み込みながら行うことは欠かせない。一方、現場で働く大工にとっては、先読み力が求められます。どの位置で先張りシートを挟むのか。といった基本的な理解を充分深めておかないとシートを挟み忘れたまま柱や梁を組み上げることとなる。写真は床合板との取り合い部分。1:シート、2:シート押さえ、3:合板を載せるといった順番が守られている。
写真は外気に接する床の上に建つ柱の足元の気密先張りシート。「東光の家」の間取りではカーポートの上部が子供室となる。要は子供室の床のその先は外となる。そこで柱の足元に丁寧に先張りシートを入れてから合板で床を作ることが冷気の進入を止める上でたいへん重要となる。気密試験に慣れた大工しか知らない漏気ポイント。こういう絵(写真)を送ってもらうと思わず設計者として目を細めてにやりとしてしまう。(笑)ちなみに上の写真は1/13のもの。まさに構造と断熱(気密)が一体化したものであることが分る。
最近、リクエストの多い屋根の構造材を顕した天井を実現させるためには、屋根のみ断熱方式を完全な外張りに切り替える必要がある。すなわち床に当たる厚ものの構造用合板の外側に気密シートを貼りその上に厚く断熱材を載せて行く必要があるのだ。写真はまさにその最中のもので1/19のもの。薄緑に見える先張りシートの上に一層目の断熱材を施工しているところ。
同日の写真だが注目はシートのジョイント部分。薄緑色が濃く見えているばかりかテーピングによってダメ押しの気密が行われている。標準施工要領では下地のある部分はシートの重ね幅が100mmでよしとなっているが、用心深く全てテーピングで対処しているところに棟梁の断熱施工に対する哲学を感じる。
樹脂サッシは、壁厚のほぼ真ん中に取り付けられ完成すると壁よりも窓が引っ込んだ見え方となる。風雨から窓を守るということと、断熱上、壁の断熱ラインにサッシの中心軸も合わせる事で窓のポテンシャルを最大限引き出そうとしている。この写真を見て現場所長と棟梁の熟練を感じる部分はサッシの本体枠と木枠の間に15mmの隙間をしっかりと開けているところ。襟巻きよろしく窓の4周にウレタンを充填し断熱材でサッシ枠を断熱補強するためである。もちろん事前にK所長の施工図で確認済みだがそれが現場で厳格に守られていることが安心につながっている。(撮影日時1/19)
こちらは外壁の付加断熱の下地。2012年に丸稲武田建設の武田社長により考案されその後、石膏ボードを貼ることで準防火構造の通則認定として使えるように改良した構造でもある。ポイントは間柱の間隔より半分ずらしてあり、熱橋(熱の通り道)となりにくいようにしているところ。また重量のある外壁の採用にも耐えられるように横方向には貫材を通し構造用の金物で断熱下地がずり下がらぬようにしているところ。指定の金物が使われていることを確認。(撮影日時1/19)
こちらはカーポートの天井を見上げたところ。トンネル状になるカーポートの上に子供室がある。カーポートの間口は二間(約3.6m)あるので二階が落ちぬように大きな梁材が必用になります。当然梁材の間は充分な断熱材が入れられますが梁の部分は断熱が入りません。そこで梁の高さを揃え梁の下に性能の良い板状断熱材を連続させて、梁ごと断熱材で包むことを考えました。(撮影日時1/20)
カーポートの壁に面した室内側の断熱材がしっかりと二階の床まで施工されています。気密シートのジョイントは下地のあるところにも関わらず同じようにテープでさらにダメ押しの気密補強がされています。(撮影日時1/24)
こちらはカーポートから見たところ。外側の付加断熱が見えています。肝心のカーポートの天井には、これから吹き込み断熱材でがっちり33cm断熱を行います。(撮影日時1/22)
いやいや、本日これから旭川ですが、今日こそはK棟梁に感謝を伝えたいと思います。心一杯ね! さすが道北の大工は違うね(笑)。脱帽です・・・凄い!
今日は事務所と自宅で大流行の星野 源くんなんていかが(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=7gcCRAl58u4
2016年1月29日金曜日
三重県からお客様が
昨日は三重県よりたくさんのみなさんが「澄川の家」の視察にお見えになりました。二年ほど前にお会いした建築家のTさんを団長に、いつも家づくりを共にされている、工務店さん、大工さん、建具屋さん、サッシ屋さんがたいへん熱心にお話しを聞いてくださいました。なにか近々、高断熱住宅にチャレンジされるそうで、そのための技術情報の収集に腐心されているとのこと、「その節にはぜひ北海道のアイディアもお役立て下さい。」とお伝えしました。
最近、関西からの視察が急増してびっくりしています。こちらが恥ずかしくなるぐらいみなさん真剣で立派な方々ばかりです。丁寧にメモを取り、写真を何枚も撮り、理解できるまでもの凄くたくさんの質問をいただきます。 パッシブ換気に基礎断熱、床下暖房に0勾配屋根、C値0.1の室内でも薪ストーブが何事もなかったように燃える様子や内外温度差を動力に無音で全館空調を行うパッシブ換気等々・・・・・時間はいくらあっても足りません。(笑)
熱心なみなさんとお会いして、私もうかうかしているとすぐに追い抜かされてしまうなあ~と感じました。そんな意味でも毎回、凄くよい刺激をいただいています。惜しげもなく知見を与えてくれた先輩たちと環境技術に溢れた地元に感謝してまた頑張ろうという気持ちになりました。
平和の家見学会 満員御礼!
二日間に渡り、多くのみなさまにご来場いただきまして誠にありがとうございます。
当日は遠方から駆けつけていただいた方々、お手伝いいただいたみなさま、チーム「平和」全員と、快く地域のものづくりを公開し発信する場を与えていただいた建て主さまに、この場をお借りしてチーム一同心より御礼申し上げます。 300mm断熱18棟目となった「平和の家」。細部の作りこみやパッシブ換気、床下暖房や玄関土間等々も完成度に一段と磨きがかかり意匠デザインのみならず設備設計においてもチーム全員の更なる自信になりました。
地域において長年に渡る知恵の蓄積とその伝承とは想えば凄いもので、寒さとそれらに起因して起こるネガティブな事柄のほとんどが今や何事もなく解決され、静寂の中で計画換気され家全体が穏やかに暖房される様子はある種の不思議ささえ感じます。
1950年代の断熱ブロック住宅に始まりオイルショックが起こった1970年代に壁250mm、屋根400mmの超断熱住宅を作り、断熱がそれまでの建築における多くの問題を簡単に解決する方法であることを発見した荒谷(アラタニ)博士から数えて自分たちは3代目に当たります。時々先輩たちから昔話しを聞くことがありますが、当時は遮熱派の先生方、通風換気派の先生方、蒸散メカニズムの権威、温暖地の伝統建築の先生方の中で「断熱しましょう!」なんて言うのはとても勇気のいることだったそうです。 (笑) あれから早40年、やっと日本も断熱を義務化しようとしています。そんな風に考えるとなんだかとても不思議な気分になります。人は一見理屈で分ったような気分になっても、それが身に付くまでにはとても長い時間が必要で、だからこそ一歩、一歩が実は大切なのだとあらためて思います。そんな意味でも私たちの世代で大切な宝物を失わないように、日々精進して行こうと思いました。
居間の一カット。天井高は2.66m
ナラの端材を用いた木ブロックの壁
玄関を開けたところ。右手前がウオークインのコート掛け、隣が大容量の靴入れ、突き当りが冷温庫。玄関土間はこれらをつないでいる。
白樺積層合板を削り出した手摺。
北方型住宅の基準を満たすために巾を狭められた鉄骨の手摺。
樺材のフロアー、白樺積層合板の枠、旭川家具のガラリの組み合わせ
二階のホール。南側には子供室3室と主寝室。計4部屋が並ぶ。
下が4畳、上が2.5畳の明るい子供部屋。二階には読書灯やコンセントの設備もある。
北西側の和室。障子の上下には通気スリットが入れられていてサッシの結露を防止する。
二階のトイレと洗面スペース。朝の大渋滞もこれで解決。
床下は基礎断熱により室内化され、暖房、照明、換気といった通常の部屋と変わらぬ環境を備える。パッシブ換気の予熱空間や床下暖房、それ以外の部分はトランクルームとして大活躍する。
パッシブ換気の外気導入管。冬場に必用な計画換気と暖房の熱移送を自然エネルギーで行う。
壁の断面模型
日差しがあれば基本的に暖房はOFF
断熱ブラインドは夜も昼も大活躍
今日はB.Joelなんていかが
登録:
投稿 (Atom)