2015年10月10日土曜日

もう一つの設計

出展:住宅省エネルギー技術施工技術者講習テキスト
 
■変わり行く設計屋の仕事?
みなさんが一般的に設計事務所に抱く印象とはどんなものでしょう?普段はなかなか体験できない空間性、お洒落なインテリアやデザイナーのこだわりを感じさせる外観、まるでお店のような照明計画や厳選された家具類・・・恐らく多くの人が設計費の対価として思い浮かべるのはこうした印象が強いのではないでしょうか。もちろん見える部分をより良くすることは大切なことですし、依然、私の仕事の主要な分野でもあります。近年ではこれら伝統的な設計屋の仕事領域に加えて建物の環境性にも随分力を入れてきました。エネルギー資源に乏しい日本という国の中で最も北の地域に暮らすということは住まいの環境性能なしには生活をイメージすることが困難だからです。今日のお話しはこれらとは別に最近私が取り組んでいることについてです。
 
政府は2%のインフレ目標を掲げ経済再生に取り組み、景気は回復に向かいつつあるそうですが、巷の景況感は今一ぱっとしないのが実感です。なぜそんなことを感じるかというと、住宅取得にかかわる様々なインセンティブ(補助)が政府から矢継ぎ早に繰り出されているからです。一部の大企業で、過去最高の収益が報告され社員の給与を上げる動きが見えるのも事実ですが、こうした補助の拡充は住宅着工戸数の減少に対する危機感の現れであり、裏を返せばまだまだこうしたてこ入れが必要なのが景気の実態であるように思います。要は実質的にはマイホーム取得中心世帯と言われる年齢層の年収は依然厳しさを増しており、引き続き助けを必用としていることを政府自身が認めているからこそこうした補助が増えるているのでしょう。経営コンサルタントでもない建築士の私がこんなことを話すのは意外だと感じていただければ今までの掴みは大成功です。(笑)
 
■ちょっと視点を変えて...
よく欲しいものは、貯金して買うという人がいます。それは多くの場合正しい考えですし、よいことだと思います。では住宅を買うのに全額貯金することは理想的だといえるでしょうか?一例ですが、30代の夫婦が住まいの新築を思い立ち、貯金をはじめます。北海道の都市部の郊外なら土地と建物で2500万円くらいでしょうか、暮らしを切り詰め毎月5万円貯金を続けます。{60万円/年}でも単純計算で40年以上かかります。(実際には貯金には金利が付くので、もっと早く貯まりますが話を分りやすくするために今回は考えないことにします。)
 
始めた頃は30代の若夫婦が貯まる頃には70代、二人とも既に定年を迎えていることでしょう。ところで今からマイホームを新築するどんな意味があるのでしょう?(笑) 恐らく70代の老夫婦にとって喫緊の課題は既にマイホームの新築ではなくもっと別のことに移っていると思います。私が言いたいのは、そもそも家づくりとは別の視点で見れば、住宅金融(この場合は住宅ローン)なしには成り立たないということです。冒頭で目に見えるところをより良くデザインすることに触れましたが、同様に資金(コスト)のデザインも近年特に求められるようになっています。 
 
■最近の傾向
現在、日本政府は建築物の環境性能向上に力を入れていて2020年を目処に建築の燃費性能を義務化しようとしています。車よろしくスタイルや走りがよくても燃料を食いすぎる車はもう生産できませんよ。という訳です。2020年といえばちょうど5年後ですから現在はそれにむけた準備期間と捉えてよいと思います。
 
■どんな住宅がお得なのか?
さて今までのお話しを聞いた上でぜひ上の写真を見ていただきたいと思います。簡単に言うと左の列が住宅のメニュー、右側はそれに対するインセンティブ(補助等が受けられる建て主側のメリット)です。ちなみに左列の一番上に「省エネルギー法」とありますが、これが2020年より義務化されるものです。さてインセンティブの方を見てみましょう。残念ながら矢印は「住宅金融支援機構」のところに1本しかつながっていませんよね。みなさんご存知のように住宅ローンとして長い実績をもつフラット35を提供しているのがこの「住宅金融支援機構」ですからこの矢印はローンの金利をお安くしますよ!という意味のインセンティブです。今度はまん中と下にある「補助金」、「減税」のところも見てみましょう。そして今度は逆に矢印を辿ってみてください。金利も補助金も建てた後の減税も受けられる住宅メニューは「長期優良住宅」と品確法による「断熱性能等級4」であることがお分かりいただけると思います。その中でも金利を10年間引き下げるものとなると「長期優良住宅」しかないのがお分かりいただけるでしょうか。
 
私が言いたいことは5年後の2020年に義務化される基準に適合する住宅は意外やメリットが薄いのに「長期優良住宅」のメリットが高いことをまずよく理解してから資金計画をしましょう!ということなのです。でも5年後に義務化される基準を先取ることにメリットが薄いなんて不思議ですよね?それはなぜなのかというと、義務化の意味を理解すると明らかになります。要は義務化とは最低限度の明示、これ以上悪いものは社会性が低いので作らないようにしましょう。というボーダーラインを明らかにするのが義務化の目的なのです。ですから最低限の水準をクリアしただけではインセンティブを用意するまでのこともないと判断されてしまいます。これに対して長期優良住宅はこれらの基準の他に構造強度の割り増し設計や耐久性のUP、維持保全計画の策定等を含むことからインセンティブの対象となり易いのです。
 
結果的に「長期優良住宅」を前提に資金計画を立てると2015年10月現時の状況では一般的な家に比べ2~300万円多く資金を作ることが可能です。単純に言えば1700万円の予算の人が同じ返済額で2000万円の工事契約が結べるようになるわけですから、インセンティブのために設計の手間は増えても住宅取得者にとって現在はけしてわるくない時期と言ってよいと思います。また設計もその内容がインセンティブ(建て主のメリット)として評価される時代になったことはむしろよい事だと思っています。なんだか「図面が上手いだけじゃなく、資金調達力も鍛えないといけないよ!」なんて言われている気がするのは私だけでしょうか・・・(笑) さーて今日も頑張りましょう!
 
 
 「6~8月はマイナス…黒田総裁「上昇している」発言の嘘」日刊ゲンダイ

2015年9月29日火曜日

平和の家 脱型工事

型枠を取り外した「平和の家」。基礎断熱の埋め戻し部分にはシロアリ避けの防蟻モルタルをベースまで塗り下げてあります。一般にシロアリの対策の必要性は低いと言われている北海道ですが今後の事を考えて極力、取り入れて行こうと考えています。
 
最近は一日の中で必ず雨が降るのでコンクリートの養生には悪くありません。一方、含水率は高まります。しかし完成が冬なのですぐに床下暖房を使うことになりますから湿ったコンクリートはどんどん乾燥します。90年代、基礎断熱が始まった頃は床下に熱源が無かったために(基礎断熱の初期は床断熱用の断熱被覆管を使ってお湯や暖房用温水を送っていたが、よくよく考えれば室内となった床下の管をもう一度断熱する必要などないと気付くまで少々時間を要した。)基礎断熱の床は特に1階が冷たく、「暖まるまでに1年程度掛かる。」とよく言われていました。 話は変わりますが、初夏の竣工現場の基礎断熱で床下がコンクリートの水分が原因でカビが発生し問題になったのは1995年くらい。最初は原因不明でしたが、程なく解決のヒントが見つかります。同じく5月に竣工した基礎断熱の現場でも床下に断熱配管を用いていない家はその後の被害が少なく、律儀に断熱配管を用いた家はカビの被害が拡大したのです。当初は安い通常配管を使った家が改善し、高価な断熱配管を使った家は改善が見られないことが不思議でした。しかし理由は意外にも簡単でした。

 
基礎断熱の仕様はEPSの160mm。ホールダウンとアンカーボルトもコンクリートのトロが飛んでいないかどうか確認しておきます。
 
断熱性のない通常配管は中にお湯が通ると管自体を暖め、結果的にその周囲の空間も暖めます。1階の各部屋に温水暖房機を付ける北海道の家ではこの暖房機にお湯を送る管は全て床下に配管しますからその管を断熱しなければ無意識の内に床下も暖めることになっていたのでした。一方、律儀に断熱配管を使うと熱は菅の外には洩れませんから、結果として床下は暖まらず冷たいままです。当然、湿ったコンクリートも乾燥しないのでカビの害が長引くことになったのでした。不思議なものでこうした経緯でカビる事もなく乾燥して暖かな床下空間ができるようになるとその後、積極的に使われ始めます。まあ当たり前といえば当たり前ですけど。(笑)

こちらは基礎の天端。基礎パッキンを用いて土台下を気密するので基礎には平滑性が求められます。今回はセルフレベラーモルタル。流動性の高いモルタルで水面のように均一になります。ここら辺は300mm断熱に取り組む各工務店の個性が出るところでもあります。
 
こんな風に熱や湿気の問題を解決し進化してきたのが北海道の基礎断熱です。今ではパッシブ換気の予熱空間やトランクルーム等々、従来の配管スペースばかりでなく、家にとって断熱された床下空間はなくてはならないものになりました。基礎断熱と床下暖房を効果的に組み合わせると従来の高価な床暖房は必要性が薄れます。その快適性や低温火傷に対する安全性、高いコストパフォーマンス、なにより費用対効果の高さは、床暖房という考え方を一時代前の色褪せたものに変えてしまいます。
 
今日はFoxesなんていかが

2015年9月26日土曜日

平和の家 基礎コンクリート打設2回目

昨日は、コンクリート打設のニ回目。アンカーボルトやホールダウン金物、土台の継ぎ手や断熱材のジョイント等々、慎重にチェックした後コンクリートを流し込みます。

3人一組でコンクリートは施工します。コンクリートを流し込む人、そのコンクリートをバイブレーターで型枠にしっかり詰める人、最後はコンクリート表面を均す人。三者の息を合わせて要領よく作業を進めます。

こんな風に鏝を使ってコンクリートの表面を均して行きます。後、コンクリート工事は1回、10月に入るといよいよ建て方です。

2015年9月24日木曜日

東光の家のコストデザイン

 
昨日は旭川近郊で美しく実りの季節を迎えた田園風景を横目に一日一杯お金のお話しでした。こんな事を書くと誤解されそうですけど、実は建築ってコストの設計(デザイン)が早い時期から欠かせません。見積もりっていうのは、言い換えれば「予算の設計図」で設計者の描く図面(建て主の要望)を具体的にどんな方法で作り、その結果いくら予算が掛かりそうなのかが詳細に書かれたものです。私はクライアントの代理人としてその予算計画書(見積もり)が妥当なものかを検証するとともに、性能や満足度を極力下げずに価格のみ下げるという技能を発揮せねばなりません。

 
建築の価格というのは研究すればするほど奥深いもので、同じものでも工務店によっては3倍も違うことがあります。その理由も実に様々で、経験のない工事の場合は積算担当者が工事を具体的にイメージできず結果として多すぎる数量を計上してしまう場合。建材店との力関係から他に安い商流の存在に気付きながらもほぼ仕入れの全数が一つの建材店に集中してしまう場合。普段扱わない材料の場合は建材店自体に仕入れ実績がなく、全くの新規取引(口座開設)となることを避けるために取引実績のある会社を複数経由させざるを得ない場合。立場上、安くできると言えない場合。はたまた工事を請け負う各工種に未経験の仕事を頼む場合。地域によって異なる商習慣や商常識の違い・・・etc たとえば札幌では同じ工事が¥○○が相場でも、旭川は違うとか、帯広はまたもっと違う、そんな絡まった価格の糸を根気強く丁寧にほぐしてゆきます。最終的には工務店の仕入れを見直して同じものが従来よりずっと安く仕入れられるようにお手伝いします。その上に設計変更を重ね合わせて費用対効果を最大化します。

 
例えば、コンクリートの単位価格が札幌より2000円も高く、おまけに凍結深度が20cmも深い旭川では、スカート断熱を用いて札幌と同価格になるまでコンクリート量と凍結深度を軽減します。同じように4回のコンクリートの打設が必要だった基礎の生産工程を2回の打設で終わるように基礎の設計自体を見直します。必要ならば他現場の担当者の意見も取り入れ、異なる視点から品質と価格を徹底的に研ぎ澄まして行きます。

 
そうして複数の現場協同で生み出した工法や価格調整法といった宝物は図面や資料といった形で保存して、次回の現場に備えてすぐさま実戦投入できるようにしておきます。こうした地道な作業を繰り返して1000万円以上あった価格差を埋めることも時に可能となります。



時にはクライアントさんの協力も凄く大切です。たとえばある建材が今回限りの特値の場合。売り手は納入先に価格を実績として残すことを嫌います。その価格はあくまで今回限りであり、次回から「またそれで」。とはいかないからです。そんな場合はクライアントさんとの直取引という形で特値価格をすっぽり見積もりから引いてしまいます。要は、建物完成後、銀行から融資が降りたらその時に現金でご決済下さい。という約束を売り手、買い手の間でしっかり結んでもらう代りに特値の建材を使えるようにするのです。 今までの300mm断熱の家はすべてこうした地道な工夫のもとに最適価格を原石から削り出すようにしてクライアントさんが買える価格まで調整しました。 

まあ~ここまで読んだ人は「山本さんの仕事ってかなり暗いっすね!」と感じたことと思いますがまあ~設計って絵だけじゃないってことで一つよろしくお願いいたします。(笑)
ちなみにお話しがあんまり脂っこかったんで、美しい美瑛の風景写真で中和ってことでお許しください。

今日はベビーメタルでギミチョコ!なんていかが?
https://www.youtube.com/watch?v=WIKqgE4BwAY


2015年9月22日火曜日

平和の家 基礎工事

基礎工事の始まった「平和の家」。まずはベースコンクリートを打設するための型枠が取り付いた状態。瑕疵保険会社の現場検査は既に完了しています。話は変わりますが最近、熱心に環境建築を志向する本州の作り手のみなさんともお話しする機会が増えてきました。その中で感じたのは基礎の作り方が随分違うという事です。北海道の場合は、コンクリートを1:ベース、2:立ち上がり(垂直部分)、3:スラブ(水平部分)の概ね3回に分けて施工しますが、本州の場合は1回~2回で終了するのが標準とのこと。こうしたコンクリートの扱いは効率がよくて北海道より進んでいる感じです。私も前から思っていたんですけど、北海道も基礎のコンクリートの打ち込み回数はもっと効率化するべきだと思っています。

こちらは基礎断熱に用いるEPS断熱材です。厚みは16cm、この厚みになるともちろん人力で曲げる事もちぎる事もできません。断熱材にたわまない充分な強度があるのでコンクリートの型枠は断熱材のない片側にしか必要なくなります。一方、北海道の基礎の特徴であるベースと立ち上がりを分けて打つ方法の弱点をこの時期にしっかりフォローしておくことが必要です。要は土中で打ち継ぎ部分から浸水せぬように基礎の周囲の水はけの確保や打ち継ぎ部分の防水対策等を打ち合わせてから垂直部分のコンクリートを流し込む事が肝心です。北海道では最近珍しくない基礎断熱工法ですが、床下を室内として意識することが大切です。室内なのですから、防水や換気、暖房や照明といった通常の部屋と同じことが求められます。当事務所では床下をパッシブ換気の予熱空間やトランクルームとして積極的に位置づけて使いますから前述のような設備も無駄にはなりません。基礎断熱は床下が湿けるとかカビが生えやすいという人が対症療法的な対策工事のコストを気にしますが、そもそも床下が家にとって欠かせない役割を担う空間ならそこに掛かるコストは仕方なく払わざるを得ない消極的(対策費的な?)なものではないはずです。むしろ必用な事柄だから払うという前向きなものに変わります。要は設計者が基礎断熱を選択した際、同時に手に入る「床下」という新たな空間に積極的な必然性や必要性を用意できるか?といった設計スキルやイマジネーションの豊かさが基礎断熱を生かしもするし殺しもするのです。「床下をなんに使うのか?」このアイディアに乏しいことが対策重視の原因である事に気付かないと、ずっと「対策」目線の堂々巡りから卒業できません。 床下を有効に使うことでもっともっと良いことがあるよね!というアイディアを大切にしたいものです。

2015年9月5日土曜日

平和の家 地鎮祭




 


本日は「平和の家」の地鎮祭。昨晩の豪雨が嘘のように晴れ上がり、式の後は近所のご挨拶も全員一緒に回りました。もうすぐ着工です。また建築を精一杯楽しみたいと思います。思えば300mm断熱もこのプロジェクトで18棟目。ずいぶん市民のみなさまに認知されてきたのは嬉しい限りです。担当するのは昨年「澄川の家」でおなじみの飛栄建設さん。

現場監督と棟梁が兄弟という「チーム平和」で12月の完成を目指します。

今日はショパン。山崎裕さんのピアノでいかが。
https://www.youtube.com/watch?v=fPuxaiRIwFg

2015年8月25日火曜日

平和の家 始動

昨日、「平和の家」の申請書類一式を民間確認機関に提出しました。「平和の家」は申請上、長期優良住宅に適合し、地域型住宅グリーン化事業の長寿命型に該当し、フラット35Sの金利Aタイプの仕様規定を満足します。要は国の定める省エネ性能を大幅にクリアし、金利優遇をはじめとする様々なインセンティブに答える設計としています。その一方で申請に必用となる書類や図面、認定書や補足説明書等の量は爆発的に増え、これが30坪の木造住宅の新築に必要な書類と言ったら、驚く人も少なくないでしょう。(笑) 確かにある時期まで木造住宅が法的な縛りをほとんど受けない事に作り手といえども不安を感じる事がありましたが、ここ10年で新築に関しては急速にすべき事柄が増えその内容も整備されてきました。特に北海道は断熱をはじめとする躯体性能の高さも相まって、新築に関しては建てて損のない時期が来たとも言えるのではないでしょうか。

話は変わりますが、はじめて建物の断熱性をQ値ではなくて新基準のUa値で計算しました。「平和の家」のUa値は0.18W/㎡K。設計基準値を倍以上上回ることができました。9月からの現場が楽しみです。
 
今日はPerfumeなんていかが https://www.youtube.com/watch?v=XFspdThBHqM

2015年8月19日水曜日

山の手の家 竣工お引渡し

建て主さまをはじめ、たくさんの方々のご協力のもと取り組んでまいりました「山の手の家」の性能向上リフォーム工事が無事完了し、本日お引渡しの運びとなりました。この場をお借りして心より御礼申し上げます。想えばご相談をいただいてはじめてお伺いしたのが昨年の4月。一時は建替えも検討しましたが、わずか築12年の事もあり、長年住み慣れた地域で修理できるものは極力直して使おうとなりました。建物は堅牢でしたが当時の断熱関連の施工や理解度は不十分で躯体内結露や大規模な漏気があちこちで生じていました。無駄の多い間取りや最もよく使う居間や水廻りが最上階なこと、またそこまで上がる階段が窮屈で急勾配なこと等々、断熱構造のみならず間取りも含む建物全般に関する見直しが必要となりました。一方で普段の新築では絶対に経験し得ない貴重な体験やノウハウを得る機会となりました。私たちが普段、当たり前に行っている断熱や気密ですが充分な理解のもとに確実に行わないと危険でさえあること。もし断熱構造を誤るとそれを根本的に直すことは非常に難しいこと等々作り手として忘れられない仕事となりました。
 
リフォーム前の「山の手の家」。居住部分の約1/3を占めていた3階部分を丸々減築し、そこにあった機能を2階に吸収、大胆に間取りを見直して、5人家族が過不足なく暮らせる家にします。もちろん減築は建物重量を大幅に減らし耐震性を向上させることや階段の上り下りといった垂直動線の短縮にも寄与します。
 
こちらは南側からの眺め。隣地の大きなさくらんぼの木が涼しげな木蔭を作り居間の窓に緑の影を落とします。新たな計画ではこの南側に2階のテラスを設け居間と連動した半屋外の気持ちのよさを取り入れました。この8畳の大きなテラスは野菜のポッド栽培やバスコート、BBQをはじめとする家族のレクリエーションにも大活躍します。
従来は南に開口部が少なく、閉鎖的な印象でした。

新たな居間からは、さくらんぼの木の緑を窓一杯に楽しむことができます。
 

読書好きなご家族のための「家族コーナー」。子供たちの勉強スペースや主婦にとっての家庭事務をこなす場所として最近はとても人気があります。
 
ゆったりと架け替えられた階段。材料は北海道らしく白樺です。
 
今日はおめでたく竣工なのでヘンデルなんていかが
 

 



2015年8月8日土曜日

山の手の家 完成直前

内装され、見ちがえるようになった「山の手の家」。後もう少しで完成です。什器や備品等々一気に揃い。本日屋外テラスを取り付けて大工工事は終了です。

家族コーナーの本棚。読書好きの家族のための大容量。

こちらはキッチンへの動線。突き当たりは屋外テラス。「テラスでハーブやポット野菜を育てましょう!」なんて今日、現場にお越しになった奥様とお話ししました。私も夢なんですけど、キッチンの一角からテラスに出られてそこが家庭菜園なんかになっていたら最高だと思いませんか?(笑)天気のよい午後は家族でお昼を食べたりできるテラス。いつも考えることは、北海道の暮らしを楽しめる間取り。対面型キッチンで居間、食堂と一体になる北海道スタイルの室内をどんな風に楽しく料理しようかと今回もいろいろと悩みました。

LDKの大窓の外がいわゆる外部ではなくテラス空間になっています。ポッドで野菜やハーブを育てたり、食事をしたり、またこのテラスはバスコートを兼ねていてゆったり浴槽につかりながら外の景色を覗き見る事もできるんです。テラスの正面には隣地のさくらんぼの木が立派に茂り、南側からの視線を遮っているのでこのテラスの雰囲気はとても落ち着く感じになりました。

こちらは建て主さんが長年愛用されてきたテーブル天板。古いウレタンと傷を削り、WAXで再塗装して据え付けます。
 
今日はさかいゆうのストーリー。う~んいいぜ~!

2015年8月3日月曜日

夏は海ですね~

仕事の合間を縫って、行って来ました。海、うみ、うみ~っ!毎年行っている秘密の海岸。地元の人しか知らないのでいつも空いていて貸しきり状態です。

こちらはカニ獲りに取り付かれた次男とその友人約一名。岩の下の穴場には大物がたくさん。しかしそれがまた獲れないんですよね~。(笑)

いろんな生き物がたくさんいる岩場なんで三男にでも捕まるカニもいて各人大満足!(笑)
 

小さなつぶ貝を撒いて、カニをおびき出す作戦を教えて一毛打尽!写真はその直後の満足げな表情。不思議と海に来るとみんな昔の子供の顔に戻ります。ゲームの方がいいなんて言う子はほとんどいない。身の周りに素敵な環境があると面白くて楽しくて夢中になれます。「そんな理屈抜きに楽しい!」が分るのも10代の前半の特典かもしれません。(笑) 親の仕事ってそんな楽しい!場所に連れて行ってやることなんですよね。そうすれば子供は自由に面白さを見つけることができるんですもんね~。

はじめてムラサキウニを手にした三男。「おーっ動いてる・・・」まあ~そりゃそうだ。(笑)
 

こっちは人の手から直に餌をついばむカモメの大群。
今日はピアノ。夏を感じる奴でいきましょう。https://www.youtube.com/watch?v=VyCQcfh2L_8

山の手の家 内装工事

現在の「山の手の家」では内装工事が進行中。当事務所お馴染みの、コーナーのプラステック面木や天井の目透シ見切り、取り付く電気器具の位置を示す電線の引き出しなんかを見て回ります。

こちらは玄関。養生ベニアの下には既にタイルが貼られています。玄関部分は靴で歩くところですから、巾木部分は針葉樹合板にして蹴っても汚れが気にならないように考えています。

こちらは居間と家族コーナーを分ける間仕切壁。壁にはテレビが掛けられスッキリと納まります。テレビの配線も正面から見えにくいようにテレビの背面にアンテナ線やコンセントの引き出しを設けます。
 

色が入った針葉樹合板の目透かし貼り。いつもながらU棟梁が丁寧に作ってくれました。

「山の手の家」のキッチンはいつものクリナップ製ではなく、既製品同士を上手に組み合わせてつくることにしました。通常は壁に向けて置かれることの多い2.4mのI型キッチンを対面方向に使い、反対側は床から20cm浮かせて吊戸棚を取り付けます。天板を隙間なくピッタリくっつけると簡単に広々とした対面型キッチンの出来上がり。費用対効果抜群で実は普通の流しと吊戸棚の合体なんて、ぜんぜんそんな風には見えません。10年以上前に予算の厳しい現場でどうしても対面型キッチンの要望があって考え出した方法なんですけど久々にお役に立ちました。

武田社長自らカウンターの取り付け。

こちらは薪ストーブの煙突。断熱二重管で丈夫なもの。二階が居間だと煙突長さを短くできるので薪ストーブを楽しみたい方には朗報です。1階にストーブを置く場合と比べてウン万円くらい違ってくる時もあります。

とど松の貫板は既に木質保護材に漬け込んで加工してあります。一見見ると白木のままに見えますが、1年もすると見事なグレーに変色します。
 
今日はバンアパなんだけどカバーで行きましょう!

2015年7月31日金曜日

畑はいいね!

ふと気付けば、畑の実りのシーズンです。衣食住ではありませんが、住まいと食は深いつながりがあります。敷地の中に家を建てる際に日当たりの良い方向に畑や花壇、夏の焼肉なんかのスペースをイメージしながらいつも設計しています。もちろん実際に畑の楽しみはやればやっただけ、暮らしの楽しみが深まるという趣味と実益を兼ねたものです。今年もたくさんの作物が実りました。
 
こちらは中玉トマト

おナスも元気です。

ピーマンの苗は今年は特に出来が良いのでたくさん収穫が期待できます。

こちらは夏の味、ししとう。


バジルはなんでも使える万能ハーブです。

こっちはサニーレタス。

こちらはイタリアンパセリです。

今年初めて挑戦したズッキーニ。

こちらはリンゴ。秋の収穫まですぐ。建築しながら畑もね!(笑)