2015年7月6日月曜日

山の手の家 気密部位確認

今日は大部分が終了した室内と屋外の気密処理を見て回ります。
現在は主流となった厚みが0.2mmある厚手の色付きビニールで気密を取り直した「山の手の家」です。元の躯体(外壁や基礎)を極力、修理+再生しながら使い、最新の300mm断熱の新築と遜色ない性能を目指しています。
 
 
写真は新たに設けた給気口廻り。右に古い給気口の跡が見える。内部にはしっかり断熱材を充填し気流止めとしています。色付きの厚手ビニールを使うのは気密シートの重ね巾10cmを簡単に目視で確認するため。私の現場ではこの10cm以上の重ね巾に加えてつなぎ目は全てテープ止めとしています。新たに設けられた給気管は壁のオレンジ色のビニールとガスケット+気密テープを使って接合されます。ガスケットが無いと管の周囲から室内の湿り空気が簡単に壁内に進入します。以前の仕様ではこの部分が不完全でした。
 

給気管の外部側も同じように処理します。
 

床の気密を取ることは「山の手の家」の長年の課題。しかしビニールをどこでジョイントするのかは難しい課題でした。床下が無いので下から作業もできず、いろいろ考えた末に間仕切壁の芯で写真のようにテーピングすることとしました。

外壁と間仕切壁のT型交差部分です。壁のビニールを通し、壁芯でテーピング。配線断熱層と巾木の下地を兼ねる45×105でビニールを既存壁の間に挟みます。

悩ましいのは間仕切り壁内部の筋交いの足元。極力テーピングで対処しますが最後はダメ押しでウレタン充填としました。
 

こちらはサッシの角部分の気密の取り合い。しっかりテーピングしてコーキングで気密します。

こちらは上部の角部。テープもしくはビニールシートを増し貼りしてしっかりと気密を取ります。
 
在来木造はそのままでは断熱のし難さが目立つ工法と言ってよいと思います。断熱の品質を上げるためにはその断熱が難しいところを改良してやる必要があります。そんな目で見ると近年の工法の進化に断熱の果たした役割を知ることが出来るなと感じました。
 
 
 
 

発寒の家 お庭が気持ちよさそう

昨日は近くの山をトレッキング、西区なんで近くには良い山が一杯。その帰りに寄った「発寒の家」の現在の様子。完成して早くも3年目。お庭がとってもきれいにできていました。

通りに草花が映えていい感じ。建築本体も無塗装の杉板が味わいを増してきました。

二年前までは良質なオーストラリア製の枕木(ユーカリ)が手に入ったのでかなり大胆にアプローチに敷き詰めましたが、現在はもう入ってこなくなったそうです。味わい深い材料だったのでちょっと残念ですが、そこは毎度、工夫してガーデンジャパンの小坂さんにいろいろと教えてもらっています。

しっかり作りこまれた庭園だとやはり維持がたいへんです。もちろん庭師さんの仕事を残すという意味ではそうした伝統的な庭造りも大切なのですが、やはり技量を要する剪定や冬囲いは今の時代は敬遠されがちです。建築と同じようにガーデナーも伝統を時代に合わせて新しく翻訳するセンスが問われます。一見気取らず無造作に植えているように見せて、後から住まい手のほうで草花を追加してもバランスが崩れないフトコロの深さ。建築もそうですが住まい手の手が入る余白を残したデザイン。神経質に作り込み過ぎず、絵を掛けたり調度を選ぶ楽しみを見つけられるって、とても大切だと思います。 「俺のデザインに住め~!っていう建築家がまだまだ多いけど、私は苦手。ある程度から先は、むしろ住まい手さんの手が入ることで住まいはどんどん面白くなるから。自分でぜーんぶ決めちゃうと、どこまで行っても想定内の出来上がりにしかなりません。相乗効果の楽しみのないものづくりって退屈だな~って最近つくづく感じます。 歳でしょうか?(笑)
 
今日は最近製図中に聞いているモーツアルト。一緒にいかが?(笑)
 
 

2015年7月4日土曜日

山の手の家 階段架け替え工事

1.8m四方に15段の階段を入れ込もうとするとこうした6段回しといった回り段になり易い。計画では、現在の回り段部分をなくしその分段数を増やして階段の全長を延長した新たな階段に架け替える。
 
現在でもよく見られるのが階段設計の窮屈さです。とくに折り返し部分を回り段とし、4段~6段という段数の設計をよく見ますが、危険な上に運動能力の高い時期にしか使いこなせず、加齢とともに階段の使用が億劫になります。住宅の取得期は最も面積を必要とする子育て期と重複することが多いために部屋数と面積優先のつけが廊下や階段といった共用部を圧迫し易く、小さな面積で上下階の移動を満たす設計に陥りやすいのです。まさに山の手の家も同じ状態でした。回り段部分は6段あり、この部分だけで約1.1m以上の高さになります。(18.5cm/段×6段) 誰でも経験があると思いますが、この回り段の部分は直線部分と比べて段板の巾が極端に狭くなりやすいので、気を付けないと踏み外して、ちょっと恐い経験をします。そこで「山の手の家」では階段も回り段を取り止め、段数を増やして架け替えます。当然、回り段の部分を直線部分に振り換えますから階段の全長が伸びます。上の写真は、伸びる分の床を切断したところです。

こんな感じで階段の全長を約60cm伸ばしゆったりとさせます。

下から見上げるとこんな感じです。わずかな寸法の増加ですがこれだけで階段の上り下りは全く異なったものとなります。設計ってほんとうに大切だな!って思います。人の動作をよく研究し、適切で正しい寸法を割り振る。昔から同じことを何回も何回も言われてきましたが、つくづく奥の深い世界だと思います。
 
今日はプッチーニなんていかが

2015年7月3日金曜日

山の手の家 配線+配管工事

本日は壁の断熱が概ね終了し、断熱部を貫通する管や線の確認をしに来ました。写真は向かって左が既存の壁充填断熱、右側が新たに外壁を作った部分の充填断熱です。新築ならば右のような精度で断熱をきれいに押し込んで行きたいところですが、既存壁の断熱を全て入れ替えることが現実的に難しいリフォームの場合は、使えるところは使いながら、この外側に新設した14cm厚の付加断熱層を連続させてこうした断熱性能のばらつきを吸収しようと考えました。新築に慣れた目からすると少々残念ではありますが、リフォーム特有の悩ましい部分です。

こちらは薪ストーブのメガネ石廻り。下に見えるのは燃焼空気の導入口です。しっかりと貫通管とポリフィルムの間で気密化します。

本来は天井断熱層の中にお湯や水の配管は埋め込みたくありませんが、床下にまったくフトコロ(配管のための空間)がないので、今回に限り天井の断熱材の中に管を通します。性能向上リフォームをしてみて思うのですが、新築時からこうした配線、配管のためのスペースはしっかり計画しておく事だと思います。極力、配管や配線は断熱の内側を通すのが原則ですが、現在の新築の多くは断熱材の中に配管や配線をします。大規模なリフォームをするとそうした作りがある意味厄介な存在になることを実感しました。

隙間風に悩まされていた基礎と土台の間は内外からウレタンを充填しました。

桁と柱の取り合いはスモールコーナーでしっかりと両者を固定し引き抜けないようにします。

こちらは薪ストーブのメガネ石の外部側の納まり。タイベックを上部に巻き返してテーピングしました。タイベックの表面に雨水が走ってもメガネ石の隙間から壁内に水が浸入しないように、工夫します。

こちらは壁の給気口。ガスケットとテーピングを併用して管の周囲から同じく漏水、漏気しないようにします。

通気層内部に空気を通し同時に雨水を抜くために設けられた裏じゃくり付きの横胴縁。
 
今日はSuperflyなんていかが

 

2015年6月30日火曜日

初めて、建築学会研究発表会に出展させていただきました

 
ご縁をいただいてはじめて、一社)日本建築学界北海道支部の研究発表会というものに出展させていただきました。いわゆる研究者や教育者、博士号取得を目指す方々が所属する会。先生方の集まりで、ある先生は材料学、こちらは環境学、そちらは構造力学に計画論とまあ~誠に緊張する雰囲気。
 
私の役割は企業展示というもので、そういった専門的な蓄積を用いて実際に企業活動としてどんなものづくりをしているのか?それを発表+PRしなさい。というものでした。 会場に着いて他の参加企業さんの展示を見ると、古いレンガ造やタイル仕上げの建物を保存する特種技術や発電の際に廃棄物として出るフライアッシュを用いた高強度コンクリート、高い防水性と遮熱特性を有する屋根材等々、おいおい・・・なんだか場違い感ビンビン感じるんですけど・・・という感じ。
 
しかしふと、横を見ると武部建設さんが古民家の断熱再生に取り組んだパネルを発見して少しだけ安心。 ホッ!私だけじゃないんだ~と思ったのも束の間・・・ 懇親会のときにマイクを握ってパネルの説明をするはめに・・・ みなさん学者さんばかりなので専門用語が飛び交いながら頷いている姿を前に、「え~っ、山本設計です!環境的な住宅に取り組んでいます。年間の暖房用灯油消費量は198Lで、暖房に頼らなくても室内は13℃以下にはなりません。太陽エネルギーで年間暖房エネルギーの3割をまかないます。そのためには日射取得のための開口部に可変的な断熱性や日射の遮蔽その他の制御機構が必要になります・・・日々、先生方にはおせわになっています~。」とやりました。 その後、いろいろな先生とお話しができてとても貴重な経験になりました。しかしやっぱり武部社長とは「私らアウェー感は拭えないよね」というところで共感。(笑)あらためて建築というものの裾野の広さと専門性の高さを実感しました。
 
 
発寒の家の概要を記したパネルNO-1
 

計画上の要点や日射制御のための断面構成等を紹介したパネルNO-2

竣工後の室温実測や光シュミレーション、また実際に使った建築の各要素技術に暖房負荷計算等々の紹介をしたパネルNO-3。
 
この場をお借りして、貴重な機会をいただいた、札幌市立大学の斉藤先生、北海道大学の森先生、貴重な実測データーをいただいた東京大学の前先生、北海道科学大学の福島先生、北海道大学名誉教授の絵内先生に心より御礼申し上げます。
 
今日はブラザージョンソンなんていかが!

2015年6月29日月曜日

山の手の家 屋根防水工事

「山の手の家」の屋根はお馴染みの0勾配シート防水。先輩建築家の小室雅伸さんから教えていただいた方法を元に少しづつアレンジを加えながら使っています。ヒーターと屋内排水管の要らない安価な無落雪屋を目指して使い始めましたが、今のところたいへん満足しています。なによりシンプルが大切。写真は薪ストーブの煙突の逃げ部分。工業用ドライヤーと溶接液でみるみる仕上げて行きます。

通気垂木の上に野地合板そして防水。凄くシンプルです。

先日来の雨が表面に溜まっています。 


こちらは雨や雪が落ちてほしくないところに付ける堤防。雨水や雪解け水は基本的に軒先から落ちますが、下に開口部がある場合や人の出入りがある場合はこうした工夫で対処します。
 

出来上がりはこんな感じです。

雨の多いシーズンに入りましたが、ほぼ半日で屋根防水が終わるのは助かります。
 
今日はビリーコバーンなんていかが
 

6団体のみなさんが「澄川の家」へ

合同研究会翌日の土曜日は6団体のみなさんに「澄川の家」を見ていただきました。特に緊張したのは、住まいと環境東北フォーラムの吉野先生、安井先生、洒井事務局長まで一緒にお越しになられたことです。吉野先生はパッシブ換気についてア-スチューブの地中予熱の効果や夏季と冬季の取り扱い、燃焼空気を必要とする薪ストーブとの併用の状況、等々・・・環境の研究者として時に鋭く、優しく質問をいただき答える私もちょっと冷や汗をかきました。(笑) 安井先生は実務家らしく22条地域内で外装に木貼りを採用した理由やパッシブ換気の確認申請上の扱い、木製サッシや各部の樹種等々、こちらも厳しいところを突いた質問をいただきました。20名以上のみなさんからさまざまな質問が飛び私自身、日頃の不勉強を反省しました。

奥さんも最近では見学者に慣れたそうで、毎月のガス代や住んでみての感想等々に笑顔で答えて下さいました。やはり生活者の視点がみなさん最も興味のある事柄なのですね。(笑)

毎回ながら、設計図面も公開し壁の断面模型共々見ていただきました。

26坪の小さな家なので一気に全員入れる訳もなく、1階班、2階班、外部班に自然に分かれて見ていただきました。

パッシブ換気の心臓部に当たるユーティリティーはなかなかの混雑状態。(笑) 好きな人ばかりで中々出てこないので、入り口に並ぶ人も・・・ 

あっという間の60分、みなさま遠路はるばるありがとうございます。もっと上手にお答えできるように私も勉強しておきます。とにもかくにも一緒によい家を考える仲間が増えて嬉しく感じた週末でした。
 
今日はニールラーセンなんていかが 
 

2015年6月27日土曜日

6会合同研究会 In 札幌

 
昨日は東北と北海道で環境的な家づくりに取り組む6団体が札幌に大集合しそれぞれの地域の研究者も交えて合同研究会が開催されました。「住まいと環境東北フォーラム」、「信州の快適な住まいを考える会」、「岩手住環境技術研究所」、「NPO法人パッシブシステム研究会」、「Dotプロジェクト」、「ソトダン21」。各団体のみなさま、初夏の北海道にようこそ!私もゲストとして呼んでいただきました、心より御礼申し上げます。まずは前建築学会長(東北大学名誉教授)の吉野先生のご挨拶から。40年以上前からの北海道の研究者とのつながり、お互いに理想とする家づくりの団体を立ち上げた以降の苦労話しや現在まで続く親交の大切さ・・・・・ほんとうに大先輩のみなさまに感謝の気持ちで一杯になりました。

続いて、福島先生のお話し、司会の洒井氏の無茶振りにも顔色ひとつ変えずにこやかに。しかし専門の換気のお話しになると、「普段の暮らしで上手く行っているのかどうか分りにくい換気ってとても奥が深い。」なんて核心を突く発言が・・・。断熱建物と換気は切り離せませんが、計画的にさまざまな換気が可能になったのは建物の外皮性能が担保できるようになった頃。むしろ最近なのでは?なんてちくり。(笑)

毎回、抜群のコーディネート力を発揮して、イベントをまとめ上げる、住まいと環境東北フォーラムの洒井事務局長。その人脈と計画力には毎回ながら脱帽です。

こちらは北海道大学の羽山教授のお話し。身内のヒートショックによる事故と介護の経験が、住まいの温度差の研究につながり今がある。北海道の人はとかく省エネ(お金)というお話しに偏りがちだが健康はお金では買えない。そんな視点で室内に寒さのない家づくりの価値を考えてほしい。

病気別に見ると、癌は季節に関係なく発症するが、心疾患、脳血管疾患、また自宅内で起こる溺死、溺水といった事故は圧倒的に冬場に集中する。

同じく北大の若きホープ。菊田先生による近年の研究についての報告。-30℃の酷寒冷地で薪ストーブ一台で、全室暖房+計画自然換気を実現する試みや、エクセルギー概念を用いた、薪という貴重でありながらもありふれたエネルギー源の大切さ、街中の大規模オフィスでありながら自然空調、エアコンを用いず、水を用いた輻射冷暖房の可能性。また最近の世界の動向等々聞きどころ満載でした。

会場は約100名以上の参加者で終始、熱気むんむんでした。

最後は、NPO法人パッシブシステム研究会顧問の北大名誉教授の絵内先生のお話し。

その後の懇親会は札幌ファクトリーで盛り上がりました。

学生さん二人を引き連れて東京大学の前先生も登場。今期の北海道の実測も早3年目に突入です。一昔前までなら寒冷地の研究に東大の先生が興味を持つなんて信じられませんでした。時代は変わるもんですよね~(笑)。これからも地元名物、断熱住宅。盛り上げて行きましょう!
 
■参加団体HP
 
住まいと環境東北フォーラム      http://www1.odn.ne.jp/~htoenv/
信州の快適な住まいを考える会    http://www.the-sah.com/
岩手住環境技術研究所         http://www.iwate-jukan.com/
NPO法人パッシブシステム研究会  http://pv-system.jp/
Dotプロジェクト              http://dot-p.com/
ソトダン21                 http://www.sotodan21.com/
 
 
 
 
 

2015年6月24日水曜日

山の手の家 耐力面材貼り付け

3階建てから2階建てへ間取りも大きく変わる「山の手の家」当然ながら間取りが変わるということは、窓の位置も変わり、古い窓は埋め、新しい窓を開けるということになります。上の写真は元の窓を埋めたところ。こんな風に躯体は継ぎ接ぎになりますからその外側で切れ目なく断熱する層が有効になります。ちなみにこの外壁の外に14cmの断熱をします。
 
こんな風に柱の横に間柱を沿わせて補強してOSB合板を貼ります。

元あった窓を埋めたところです。

 
 

外部は石膏ボードと防水+防風+透湿シートの上から耐力面材(筋交い)となるOSB合板を貼って行きます。

こちらは屋根の野地合板。防水を待つのみです。
 
今日はキースジャレットのピアノで行きましょう!