2015年3月27日金曜日

日独シンポを終えて

 
昨日は「ドイツの省エネ住宅政策に学ぶ」と題したシンポジュウムにプレゼンテーターとして参加させていただきました。環境先進国として今や世界をリードする国の一つとなったドイツ。会場にはドイツ連邦環境建設省よりラータートさん、パッシブハウスや+エネジーハウスのコンサルティングを行っているエコセンターNRWの代表取締役であるラウシェンさん、そしてドイツ住宅供給公社のディルガーさんが来日され、ドイツの現状を踏まえた貴重なお話しをお聞きする機会となりました。会場は教育文化会館の小ホールということで、「なんだ、小さいんだ~」と安心していたら・・・実は300席もあってほんとうに平日の昼間から人が来るんかいな?と思ったのも束の間、ありがたいことに満員御礼でした。(笑)
 
興味深かったのは、ドイツから来られた方々が、少々お堅い印象とは裏腹にとてもフランクで正直だった事。印象的だったのは「ドイツは環境的なイメージが高いが石造りの建物を断熱改修することはほんとうに大変です!」とか「断熱は重要なれどそれによって伝統的な建物がなくならぬよう、そうした建物向けの断熱技術開発を進めつつ実態に即した施策を辛抱強く続ける事が重要!」と言った指摘。「またドイツにも地域によって経済力に格差があり、建物の構造も木造の多い地域やそうではない地域がある。地域別に最適なトレンドを見つけることが必用。」はたまた「環境的であることがデザインの自由を奪うという思い込みは短絡的で、必ず両立の道はあるはずだしこれからはそれを意識して前進する時代。最初から両立は無理だとあきらめてはいけない。」さらには、「古い建物が多いドイツでも喫緊の課題である省エネリフォームに投資する人より旅行やソニーのTVを買っちゃう人も少なくない(笑)。」といったまさに日々北海道の私たちが悩んでいる事と同じ意見が聞けてとても勇気が沸きました。

会場には同時通訳も配置され雰囲気は国際シンポっぽさ抜群。

テーマもたいへん率直で親しみやすいものでした。

こちらは講演直前の楽屋裏の様子。


北海道の家づくりの変遷と実情に付いて講演された福島先生。

長年に渡る家づくりへの関わりから貴重な資料をもとに興味深いお話しが聞けました。

2015年3月9日月曜日

20150326日独シンポのご案内

みなさまご案内です。実は「日独国際シンポジュウム」に参加させていただきます。
ぜひご参加下さい。


採暖の心地良さ

 



 
最近随分と日が長くなって、春を感じるようになりました。以前のブログで「暖房」と「採暖」の違いに触れました。家づくりに「断熱」と「セントラルヒーティング」が定着している北海道では暖房といえば家全体を暖めることを指す場合がほとんどですが、全国的には家の一部や使う部屋だけを暖めることを曖昧に「だんぼう」と呼んでいます。前者は確かに暖房ですが後者は採暖(さいだん)と言って区別します。「なーるほど、家全体に暖房器具を装備している北海道に対してそうではない!ってことね」なんて早合点は禁物。実は「暖房」の意味は家全体を経済的に暖められる環境のことを指していて、設備の大きさやヒーターの台数は関係ありません。むしろたった1台の暖房器具で家全体から寒さを除くことができればそれはとても上等な暖房といえるでしょう。一方で「採暖」とは寒さの中で暖かさを感じること。まさしく焚き火や囲炉裏に手をかざし暖を採ることを指します。
 
もうお分かりのように実は暖房の主役は「断熱」であり、結果として暖房器具はどんどん控えめにできます。反対に「採暖」の主役は「熱源」(器具の立派さ)に頼らざるを得ない。となるのです。
これからの断熱は、暖房器具がうんと小さくなるくらいの水準まで行ってはじめて価値があります。
 
さて上の写真は日当たりのよい階段の踊り場でお昼寝中のわが家の猫、レイ君。猫って気持ちのよい場所を見つける達人です。日陰はまだまだ薄ら寒くともぽかぽかとした光の中でまどろむ気持ちのよさが伝わってきます。実はさっきまで散々悪口を言いましたが、採暖って快感なんです。もちろん毎日がこんな風に穏やかな日とは限りませんから、家づくりに十分な断熱は欠かせませんが、春を感じる今日この頃は少しだけ窓を開けて、春風が運んでくる土の香りを感じながらまどろむのは最高に気持ちのよい体験です。
もちろん私のクライアントさんはもう体験済みかもしれません。(笑)
 
今日は星野 源くんなんていかが
 
 

2015年3月7日土曜日

宮の森の家 3ヶ月点検と熱画像

本日は「宮の森の家」に武田建設さんと点検に行ってきました。なかなか快適なご様子で一安心。「最近はお客様が増えてたいへんでした」と奥さま。22℃で相対湿度45%、「以前の借家は冬になると乾燥で喉が辛かったのに新しい家になってぜんぜん気にならなくなりました」とご主人。
意外に感じられるかもしれませんが、「断熱気密住宅は冬場乾燥するものだ!」と思い込んでいる人がとても多いのは残念な事です。躯体や開口部の断熱不足からくる暖房依存度の高さがその原因。要は暖房の使いすぎで自ら大量の乾燥空気を作り出してしまうのです。ではなぜそんなに暖房を使いすぎてしまうのか?といえばこれはもう寒いからで、根本的な建物の断熱不足が原因なのです。





こちらは新兵器の熱画像(サーモカメラ)です。2番はお風呂の換気扇。
それ以外に室内から熱の逃げが少ないのが分ると思います。

こちらは、国産の新型樹脂サッシYKK430の様子です。昨年から使い始めましたがとてもコストパフォーマンスが高いですね。やはりこれからはトリプルガラスが北海道では主流になりそうです。

こちらは居間の壁に取り付けたテレビの熱画像です。最近のテレビは薄型で大判のものが主流ですが、実はその熱は貴重な暖房熱源になります。「宮の森の家」の二階LDKにはペレットストーブ以外暖房がありませんが、断熱如何ではこうした家電の排熱さえ自由に使えるようになります。
 
今日はOrianthiなんていかが? ギターが上手くてキュートです。

2015年3月1日日曜日

暮らしの実験



最近、たくさんの建築関係の方々が北海道視察に来ていただいて嬉しく思います。
もっともっとたくさんのみなさんに北海道の環境技術の歴史を知っていただきたいです。写真は現在の荒谷邸。竣工から36年経った今も暮らしの実験は続いています。

■(旧)荒谷邸 (現在はお弟子さんのタギ邸)
 当時の北海道大学工学部教授(後に名誉教授)、荒谷博士の3軒目となる自邸で実験住宅。第二次オイルショックの始まった1979年に完成。超断熱構造をベースに、低温水輻射暖房、自作Low-Eトリプルサッシ、ナイトパージ、パッシブ換気(自然計画換気)、日射熱利用(制御)、自作熱交換換気、蓄熱(冷)利用、断熱住宅の夏対応、温湿度計測、燃費実測等々・・現在につながる数々の実験を行う。

 竣工:1979年 ■構造:ブロック造外断熱(小屋組:木造) ■面積:100坪
■断熱:壁GW250mm+屋根GW400mm  ■換気:パッシブ換気
■開口部:竣工時/Low-Eフィルムを自ら市販のフロートガラスに貼り込み自作した開放型空気層のトリプルガラス木製サッシ、障子部はWスキン構造。現在はLow-E膜が紫外線劣化したため透明ガラスに交換。
■暖房:温水輻射式(各室に極小パネルヒーター/PS製)1979年当時から出力5kwのボイラーで100坪を全館暖房していた。当時、北海道の一般家庭の年間暖房用灯油消費量が35坪の家で2500~3000L/6ヶ月と言われていた時代に旧荒谷邸は100坪で800L以下だった。今期冬シーズンより輻射式暖房を止め1階機械室に設置した薪ストーブのみで全館暖房の実験が続いている。

荒谷博士自作のトリプルガラスの木製サッシ

なんと100坪をこの小さな灯油ボイラーで全館暖房していました。

室内の窓はもの凄く大きなガラスが使われていて明るい。

大きな窓と明るい室内。

観葉植物植物も凄く元気。一番長寿なものは竣工時にお祝いでもらったもの。

周囲の緑に馴染んだ現在の様子。

 

2015年1月31日土曜日

宮ノ丘の家Ⅱ 竣工 お引渡し



昨年から「チーム宮ノ丘Ⅱ」一丸となって取り組んでまいりました「宮ノ丘の家Ⅱ」が無事竣工し、昨日お引渡しとなりました。この場をお借りして現場で働いた全員と建材生産者のみなさん、最後まで現場をまとめていただいた剛建築工房のI所長、M主任、I棟梁、そして貴重な経験とチャンスを与えていただいた建て主さまに心より御礼申し上げます。想えば、建て主さんが私の事務所にご相談に来られたのが2010年。弊社にとって初めての300mm断熱プロジェクトとなった「銭函の家」http://ako-re.blogspot.jp/2009/12/blog-post_30.html の竣工直後でした。「北海道の技術と材料で最高の家を作りたい。」そんな想いに共感いただいてお付き合いが始まりましたが、その後の道のりは紆余曲折・・・・・今日まで5年の歳月を要すこととなりました。ご案内いただいた敷地は札幌の街を一望できる眺望が魅力である反面、傾斜は30°を越え、立っていることも難しい状態。また敷地としての接道義務も不十分等々・・・ 一時は夢で終るかに思えました。しかしこの敷地の良さに惚れ込んだ建て主さんは地道な努力で接道義務を解決しついに計画を軌道に乗せます。宅造法の規制をもろに受ける事、建物の構造と土留擁壁を一体で兼ねる事、接道側から見ると単なる木造二階建てでも斜面側から見ると4階建て以上の高さとなること、混構造を前提とした構造計算が避けられないこと、複雑な高さ制限、等々・・・設計の立場からすると法務整理のオンパレードでしたが無事なんとか終えることができました。 今は充実感で一杯ですが来週からまた頑張らなくっちゃね!(笑)


下から見上げると凄い傾斜に驚く事に。実はこの下に更に基礎がもう1階分埋まっています。
 
北側の穏やかな光で満たされた昼間の室内。
 
キッチンセットは旭川家具の名店、匠工芸さん。材質はナラ材。
 
3mオーバーのキッチンステン天板。製作は㈱クリナップの直需事業部。
 
和室の障子はカバ材
 
建具は網代貼としました。 
 

ストーブに火が入る夕方はこの家にとって一番よい時間帯。

キッチンが札幌の夜景に正対するレイアウトとしました。

階段を登りながら振り返ると札幌の夜景が一望できます。

夜はこんな感じです。

薪ストーブは小型にもかかわらず壁に近接して設置可能な優れもの。デンマーク製です。

左側の壁は木レンガによる立体的な表情が面白くて採用しました。
 
さて今日は素敵なJAZZナンバーをお贈りいたします。絶対夜景に合うと思います。(笑)
こころより竣工おめでとうございます。
 

2015年1月30日金曜日

北海道の住まいづくりに掲載していただきました


住宅雑誌「北海道の住まいづくり 2015年新春号」の表紙に「西野の家Ⅱ」を掲載していただきました。少しづつではありますが弊社とお客様の取り組みを取り上げていただくのは嬉しい事です。この場を借りて御礼申し上げます。実はペレットストーブの特集も4ページ載っていて読み応え十分。ぜひ書店で!(笑)

2015年1月29日木曜日

宮ノ丘の家Ⅱ パッシブ換気

今日は「宮ノ丘の家Ⅱ」の取り扱い説明でした。
私の担当は各部のメンテナンスとパッシブ換気。冬場は内外温度差が大きくなるため、二本の給気管全開だと換気過多になり過ぎること、また換気量が増大すると家の室温が下がり暖房の燃費も悪くなり易いことを説明しました。

ところでパッシブ換気を単なる「自然換気」の一つと理解している人がほとんどですが実は暖房も同時に行えるスグレモノです。ダクトを必要とせず建物の断熱気密構造を使って行う全館暖房換気がその正体。もちろん暖めた空気を動かす動力は内外温度差という自然エネルギーですからけしてなくなることはありません。

その原理は、冬になると内外温度差が大きくなり隙間風(換気量)が増大する特性を応用しその隙間風を床下に集中させます。断熱気密化された建物は漏気が少ないですから床下に集中的に給気することができます。家全体にすうすう散らばっていた隙間風を基礎断熱した床下に集中させるとかなりの風量にびっくりします。この新鮮外気を床下のヒーターで少し暖めれば後はかんたん。空気は暖めると素直なやつで家中の寒いところを見つけて勝手に換気しながら暖房しに行ってくれます。仕事が終ると高所の排気口から外部に排気されます。なんだかあまりに簡単で拍子抜けしそうですが、別の観点で見ると、1:基礎(外)断熱が出来ること、2:躯体が下降冷気や漏気を生じないように十分断熱+気密出来ること、3:煙突効果を効率よく得るために屋根断熱で二階の天井を高く取れることの3点が欠かせません。実はパッシブ換気って建物の構造そのものなんです。

 
ひゅ~って感じで外気が入ってきます。手前の黒いヒーターで外気を予熱して各室へ
 
全体の原理はこんな感じです。
 

 

2015年1月28日水曜日

宮ノ丘の家Ⅱ 完了検査

本日は「宮ノ丘の家Ⅱ」の完了検査。もちろん無事終了で訂正箇所は特になし。想えばこの1ヶ月はかなり根を詰めた作業となりました。剛建築工房のI所長にI棟梁、M主任、本当にごくろうさま。細かな作り物が多く塗装面積も膨大。顕し仕上げの多いこと多いこと。「みなさん天井を貼らないから安くなりました!」的な建築家のお話しってよく聞くでしょう? あれはほぼ現場を知らない人に多い独り言です。(笑) 実際は余計なものまで見えるので、もの凄く大工さんたちはたいへん。はっきり言って天井は平たく貼ったほうが簡単安価です。でもね住んでいてそれじゃ楽しくないじゃない?(笑)

昼も夜も札幌の絶景が見える階段室。もの凄い高さのテラスがちょっとスリリングなんですけど、こんなロケーションなら気持ちもお分かりでしょう?ガラスのメンテナンスと屋外に出る楽しさを考えるとテラスの存在は欠かせませんよね~。

白のあっさりしたデザインのキッチンにお馴染みの床材を貼り上げた壁と薪ストーブ。いよいよ明日は試験焚き。災害時はもちろん普段から炎の見える居間は北国の家のごちそうですよね。

影の付き方が美しい階段の側壁。さて本日も遅くまでダメ直し。明日は取り扱い説明に写真撮影です。もう一息頑張りましょう!(笑)

2015年1月27日火曜日

宮ノ丘の家Ⅱ 気密測定二回目

1/24(土)に第二回目の気密測定を行った「宮ノ丘の家Ⅱ」。結果はC値が0.3cm2/㎡と良好!

室内の空気を外に吸い出すことで室内と屋外の差圧を計測します。
 


換気扇や電灯盤が取り付いた状態での計測。条件的には少々不利でしたが、2009年以来どの現場も高い気密性能が出るようになりました。気密測定を導入したことが大きいと思いますが、毎回計測することがやはり大切ですよね。
今回は1階が混み合っているので二階に計測器をセットして行いました。

あともう少し、いよいよお引渡しが迫ってきました。
 

2015年1月21日水曜日

宮ノ丘の家Ⅱ 内装工事 全力全開!

1月末のお引渡しに向けて全力で内装工事に当たる「宮の丘の家Ⅱ」の大工Aさん。背後に見える壁は床の樺のフローリングを張り上げたもの。この前にTVと薪ストーブがセットされます。最近は室内に炎のある感じが増えてきました。理由はいくつかあるんですが大きな理由は安全な範囲で温度環境のムラを序除に作れるようになったことが大きいと思います。パッシブ換気が使いこなせるようになると上階に行くにしたがって僅かずつ室温が温度降下する性質を示します。要は「宮ノ丘の家Ⅱ」で言えば景色を楽しむ3階が最も温度が低い領域になるのです。もちろん低いといっても1階あたりの温度降下は1~2℃程度。1階が22℃なら3階は18~20℃の温度域になります。そこでその温度低下のムラを薪ストーブをちょっと楽しむ動機に当ててやろうというのが種明かしです。従来の断熱気密が不十分な室内環境で力任せに下階でストーブを焚くとストーブが周囲の空気を燃焼にどんどん使うのでその分、外の冷たい空気が入って来る一方、暖めた空気は比重が軽くなるので上階に逃げてしまっていました。しかしそうした不安のない室内は不思議な事に熱源から離れた階が最も温度が低くなるのです。かつては家中同じ温度にすることが喜ばれましたが最近ではエリアごとのアクティビティー(活動)に応じて室温に最適なムラをデザインしようとしています。

天井はお馴染みの外張り断熱が350mm。室内には構造垂木が全て顕しになります。

階段は名手であるI棟梁の仕事。

今回は床のフローリングの原板を用いた高度な仕事。まず蹴込板と段板が直角ではなく稲妻状に連続する事。

段板と蹴込板は3mmの目透シ継ぎで目地の底にピンタッカーを打って段板と接合しています。

こちらはパッシブ換気の戻り空気の吸い込み口6mmのスリットです。

2階の寝室の天井は吸音効果の高い化粧石膏ボード。これは最近見直しているのですがたいへんよく効きます。特に音の響きやすい断熱建物にはベストです。

外観の板金が全て完了した状態。濃い茶色がたいへん落ち着いた表情を作ります。
 
今日はテンションが上がってきたのでパフィュームでも(笑)