2013年10月19日土曜日

西野里山の家 上棟式

 
 
 
 
 
 
 
 


 

本日は、ほんとうに見事な秋晴れ!まさに上棟日和ですね~(笑)。建て主さんと現場のみなさんの日頃の行いが良いおかげで、東北出張中も雨や風の影響も受けず見事に本日の日にこぎ着けました。この場をお借りして心よりお喜び申し上げます。
 
地元の西野神社の宮司さんをお手伝いしながら。二階の建物の四隅に隈餅を飾ります。

東に向けた祭壇と衣冠束帯に身を包んだ宮司さんの声が朗々と響きます。

建物の四隅をお清め。

隣町から駆けつけたご両親も参列して心のこもった式になりました。特に建て主さんのお父さまは建設関係ということであちこちに興味津々の様子。建物構造の特徴や屋根、壁の断熱や換気の考え方等々いろいろとお話しをさせていただきました。おまけにお祝いまでいただいて、身に余る光栄、また週明けから精一杯頑張ります。式の後は薪ストーブの展示場へ、なんだかまた炎の恋しい季節がすぐに始まります。今度から家の暖房は薪ストーブを主力にしようかな?(笑)
 
今日はくるりなんていかが? http://www.youtube.com/watch?v=CLfGQFvH2xI


発寒の家 外構工事

ガーデンジャパンの小坂さんと取り組んできた「発寒の家」の外構工事が完了しました。日当たりの良い家の前の南側スペースをどんな風にしようかといろいろ迷いました。デザインの定石から行くとコンクリートのスラブでピシッと!なんてありがちですが、最近大切にしているのは馴染むことで味わいを増す材料。建物を見てもお分かりいただけると思いますが木材は雨掛かりは日の光により美しい灰白色にそれ以外だと赤くあめ色に変化します。この変化がしょぼくれて行くのか、味として喜ばれるのか?そんなことを最近よく考えます。小坂さんの使う枕木はユーカリ材の貴重なものですが、耐久性も高く、一年で美しいグレーに色変わりし、周囲に馴染みます。同じくよく彼女が使う札幌軟石も表情は控えめながらけして不協和音にならない優れた素材です。むしろできたてが一番違和感があるのかもしれません。来年がとても楽しみです。

東側には一部黒土を入れて植栽のスペースを確保しました。

枕木を透かして敷いてその間に化粧砕石を入れ込んでいます。今後少しづつ下がるので随時足すことで砂利と枕木の高さを簡単に調整できます。

ポーチに置かれた鉢植え。ポーチをコンクリートで作り付けてしまわないのは、現在の建物の教訓を大切にしているからです。高齢化してくるとなんでもなかった階段がどんどん辛くなります。そんな時、壊すことがたいへんな作りは困りますよね~。そこで将来的に発生するであろうスロープのニーズに簡単に対応できるようにポーチを撤去可能に簡便に作ることが最近多くなりました。

裏の隣地との高低差を考え雨水が溢れ出さぬよう縁石を入れています。隣地が同じ高さでも新築すると僅かにこちらが高くなることが多いですからこうした配慮も必要になります。

階段横には札幌軟石の花台を置いて夏場の鉢植えが並べられるようにしています。この軟石もすぐに柔らかく苔むして周囲に馴染んでゆきます。
 
最近思うのは、時間の経過に対する可変性や環境に優しい素材で作る建物周囲のデザインです。一時期はアスファルトとかコンクリート素材なんかを多く使っていましたが最近は極力今までとは反対の材料を使うことにしています。クライアントさんの中にも家庭菜園や庭いじりが好きな人が増えてきました。とても嬉しく思っています。
 
今日は手島葵なんていかが?コクリコ坂より

2013年10月17日木曜日

被災地を巡って

10/14~10/16まで講演会のために東北に行ってきました。3.11の大震災から早くも2年半が過ぎようとしていますが、今もって被災地の現実は中々に複雑なものがあります。復興に向けて機関車のごとく邁進する町もあれば、流された市街地は無残にススキに覆われ、残された基礎だけがかつてここに町があったことを物語っているところもあります。そんな中、震災の経験を生かしこれからつくる家は少しでも良い家をとの想いでお招きいただいた皆さんにこの場をお借りして心より御礼申し上げます。

岐阜を拠点に研究者と設計者という一人二役をこなす辻先生のお話し。もとは工学系出身ではなく芸術大出身という、異色のキャラクターながら自ら設計した建物を計測し科学する姿勢に共感いたしました。

連日の激務と折からの台風にも関わらず会場にはたくさんの皆さんに来ていただきました。



続々と復興団地が出来上がってゆきます。

写真は復興のために全国から集まる人たちが宿泊する仮設ホテル。このホテルは約500名が利用しているとのこと。長い人では1年以上。ほぼ住んでいる状態の人もいるとのことでした。

居住棟の間には絆、.復興の文字が並ぶ。

朝のラッシュが想像できる改札口?

津波で押し流され無残にも横倒しになった建物が寂しく当事のまま放置されています。それにしても津波の力とは想像を絶するものだったのだと思います。

女性職員が最後まで避難を呼びかけ続け、14mを超える津波により命を落とした南三陸町防災対策庁舎。周りは全て流され寂しそうに建っています。

 
この荒涼とした喪失感は現地でしか味わえないものでしょう。重たい問いを突きつけられているように感じました。「あなたはこの現実からなにを学びますか?明日にどう生かしますか?」建築の作り手として主人を守れなかった建物を見るのは辛いものです。

 
供えられたたくさんのお花と手を合わせる人たち。
 

 
夜聞いた、居酒屋の女将さんのお話しは一生忘れないでしょう。「店であれこれ探しているうちに津波がやってくるのが見えて、ロフトに駆けあがったの。窓から見ると幼馴染の隣の奥さんがまだ外にいるのが見えて、大声で呼んだら気がついて走ってきた。その人の旦那さんは大丈夫だって言ったきり流されて、とても現実だなんて思えなかった。家は木造だったから浮かんでずいぶん離れたところまで流されて助かりました。でも避難所は寒くて寒くて、毛布を一枚もらったけど床のコンクリートの寒さが骨身に染みて三日間ほとんど眠れなかった。...近所の知り合いは20人以上亡くなったけど、私たちは運がよかった。店が借りられたし働けたから、今ではこうやって笑って話せるようになったんですよ。あらあら、あんまり神妙な顔しないで~(笑)。」  女将さんが強く誇らしく輝いて見えました。

2013年10月13日日曜日

仙台セミナー



仙台にて講演会をさせていただくことになりました。いよいよ始まった改正省エネ基準。設計者としてエネルギーと向き合うことは、これからの建築をさらに大きく進化させることでしょう。クライアントのみなさまや各チームのみんなと一緒につくった家の話を仙台ではしてこようと思っています。(笑)

2013年10月9日水曜日

屯田の家 製作家具工事

 
現在、東神楽の匠工芸の 工場では、屯田の家に納品するダイニングセットを製作中です。写真は組み立てが終った椅子のフレーム。材種はナラ材で定番のオイルフィニッシュで仕上げます。このオイルは家の各部に使ったものと同じ。そう「屯田の家」では全ての室内の木部のメンテナンスを同じ一つのワックスで行うことができるのです。でもよく考えてみたら絶対そっちの方が簡単で良いですよね~。一般的な家は木床は床専用、枠廻りはまた別のもので...と誠にメンドクサイ!(笑)弊社の特徴のひとつは木部の汚れ落としは、ぬれ雑巾かサンドペーパー、仕上げは共通ワックス。木部は基本無垢材なのでガンガン使って、汚れたり傷ついたら紙やすりOKなんです。


写真は巾90cmのテーブル。材種は椅子と同じナラ。一見して天板の剥ぎ合わせの枚数が3枚と分かる。広幅の板を奮発しましたね~(笑)。近年では巾30cmを超える板材は樹種を問わず少なくなりました。オイル仕上げが楽しみですね~(笑)。

写真は割れ止めの契り(バタフライジョイント)を加工しているところ。広幅の板は希少性が高く、たいへん高価ですが、反面従来は少しの割れでも欠点とみなされて捨てられたり引き割られたりすることが少なくありませんでした。しかし匠工芸ではこうした欠点をその木の景色(個性)と捉えウオールナット等の契りを打ち込んで美しい意匠と堅牢性を備えた製品にしてしまいます。契りの技術は写真の通り、家具職人がひとつひとつ手作業で行う高度なものですが、その技がむしろテーブルを特別のものにしているように私は思います。匠工芸の二代目と話し合って、継げるものは難しくても技で克服すること。ピカピカ光るウレタン塗装を使わないこと。汚れたらいつでもお客の力で簡単に元に戻せること。そんなお約束で作っています。
 
こちらは座面のシート貼り。今回は茶色の布テープを編みこんで。座ったときの反発を楽しめるようにテンションを掛けて貼り込みます。
 
 
 
後もう少しだけお待ちくださいね~(笑)

西野里山の家 建て方その2


本日は、屋根垂木掛け。2×10(ツーバイテン)の大垂木を30cm間隔で渡し掛けて行きます。在来軸組み用の材料ではないこうした輸入材はSPF材と呼ばれ、2×4住宅の床組みや屋根に使われるのが一般的です。しかし木構造の研究が盛んで大らかな北海道では壁は在来軸組み工法、屋根は2×4工法といったルーツの異なる組み合わせが比較的抵抗なく取り入れられてきました。この垂木を外貼り断熱とし美しい連続性を室内に顕しながら特徴的なインテリアとする方法はもうすっかりお馴染みですよね~。(笑)

室内に垂木を顕しにするために品質表示の印刷等は落としたほうがきれいです。そこでこの垂木は両面ブレーナー(自動カンナ)掛けとしてきれいな木肌を一皮剥いています。

間仕切壁の上部は二枚合わせとした大垂木の間に35mmのコマを挟み10.5cmの巾にします。こんな風に在来木造の柱の寸法に異なる寸法体系のツーバイ材を合わせてやると、壁の仕上げが垂木の連なりの中に自然にすっと消えてゆく間仕切りができます。

真ん中に挟むコマ。さすが!棟梁(笑)

いつもお伝えしているように気密性能はとても大切です。写真は先張りシートといって、材料で気密シートを挟み付けながら屋根組みを作っているところ。断熱建物に欠かせない工夫が気密ですが、北海道ではこの断熱を構造と同じ大切さで捉えている事がよく分かる写真です。以前は、「在来木造はその特性上気密には向かない。気密を上げたいなら外国生まれの2×4だ」なんて言われましたが、今聞くと大昔のお話のように聞こえます。私のブログで何度も実測の様子をお伝えしているように今では木造住宅の気密性能はコンクリート造さえ凌ぐほどです。しかしその影には保守的な在来工法を粘り強く改良してきた工務店さんやたくさんの大工さんの努力があることを忘れてはいけません。
 
奥に見える梁は梁成寸法が約40cm。二本の長い通し柱でくわえ込んで支持します。余談ですが材料を素のまま見せるところは血色の良い赤みの唐松材。壁や天井で覆ってしまうところは白色のとど松材。プレカットの図面を書く人と加工担当のオペレーターはさぞや面倒くさいことでしょう。(笑)しかし表面を飾り立てるデザインも悪くありませんが、柱と梁が組みあがったときにその骨組みに想いが込められているとしたら、それもまた別の良きデザインだと思うのです。骨組みを全て隠してしまうのではなく美しく見せることを忘れない。最近はそんなアプローチが増えてきました。


玄関の上に跳ね出す梁成40cmの梁
 
一層、上の梁も同じように、柱ががっちりとくわえ込む柱勝ちの納まりです。

隅柱は材寸を上げて10.5cm×18cm。ごつい20knのホールダウン(引き抜け防止)金物が取り付きます。もちろん土台廻りも気密レール付きの先張りシートです。

 
金物は極力全数、指定のもの以上であることを確認します。
 
今日はV.リシッツアでOP25-NO.12。なんというテクニック!しかしショパンってどうしてこんなにロマンチックなんでしょう?
 
 

2013年10月8日火曜日

西野里山の家 建て方

 
本日は現場にクレーンを据えて2階の床、柱、梁を建て込みます。従来は柱も梁も大工が抱えられる大きさを基準に長さを決め、人力で持ち上げながら建て込んでいましたが、工場加工(プレカット)の発達により、3間(約5.4m)以上の長さの材料が自由に加工できるようになると、人力では逆に難しくなってきました。梁の成(せい:垂直方向の寸法)が従来は30cm程度が最大だったものが39cm、近年では45cmともなるととても両端を二人の大工で持ち上げながら梁を掛けること自体、危険な重量になります。特に私の場合は、一般的な6尺(1.82m)間隔の柱や梁の配置を半分の間隔で行うために、木材の石高(こくだか:材料の体積の意、材木は伝統的に石/コク、近年は立米/リュウベを単位とする)が倍増します。当然余計に手間がかかり現場の大工さんの苦労は増えるのですが、いかに丈夫に作るか?や床を歩いたときにがっしり感じる剛性感、何より大工さんたちが実感として「この家は丈夫だ簡単に壊れるわけがない」と自ら納得するような仕事を見せねばなりません。設計者はいつだって大工さんに試されていてその評価は図面を通して現場に伝わります。「なるほど組み上げて見て訳が分かった(笑)」と言ってもらえるように精一杯、知恵を絞ることでしか信頼は生まれないのです。これから設計者を目指す人はぜひ、構造図を書いた後プレカット屋さん任せにせず自分で軸組みまで書いてほしいものです。
 
右手前に見えるのが6mを超える通し柱。(継ぎ目のない長柱の意、反対に短い柱を管柱/クダバシラと呼ぶ)一般的に梁勝ち(梁を優先させて、各階ごとに短い柱を立ててゆく方法)と柱勝ち(建物の四隅の柱を繋ぎ目のない長柱として梁は柱の腹に叩き込む方法)では後者の方が建て込みがより難しくなります。もちろん前者も最終的には柱を金物で繋ぎ、壁に筋交い代わりの合板を打ちつけることで柱の揺れが止まりしっかりとしますが、設計者としては合板や金物に頼らず組み上げた状態でビシッと動かなくなるものが好みです。


一見、梁の上から柱が生えているように見えますが、実は通し柱で、梁は柱の腹に叩き込まれています。

明日は間柱といよいよ大垂木を架け勾配屋根を作ります。

「西野里山の家」の特徴的な階段室の踊り場は空中に跳ね出していて下に支えの柱がありません。階段の踊場を中二階として建て主さんの趣味である読書が楽しめるようにいろいろと考えて空中に浮かんだ感じの設えとしました。

 
踊場の床を支持する梁が左側に跳ね出している。
 
今日はTスクエアでPRIMEなんていかが?
 

2013年10月7日月曜日

ヨットは楽し!

昨日、生まれて初めてヨットに乗せていただきました。場所は大好きな小樽、しかし陸しか歩いたことがありません。海の街を一度沖から眺めてみたいと想っていました。少年時代に小さなマーメイド号で単独、太平洋横断に成功した堀江謙一の著書、「太平洋一人ぼっち」を読んで以来、白く輝く帆に風を一杯に受けて船体を傾けながら走る姿に憧れていました。当事の私にとって船乗りになって世界を回ることは途方もなくわくわくする夢だったのです。もちろん現在は陸の仕事に就いたことを後悔していませんが、ふとした瞬間に懐かしく昔を想い出すのでした。そんな時、思いもよらずお誘いが掛かり乗船の運びとなったのです。人生って不思議なものですね~。(笑)



レンタルしたヨットはフランス製oseanise32 。6人乗りで堀江謙一が1962年に使った初代マーメイド号の約2倍の大きさです。美しい青色の船体と雰囲気一杯の皮巻きの大きなステアリングホイール(舵輪)。今日の同乗クルーは艇長含め3名。しかしなんて優雅なんでしょう。

海から見るマイカル小樽。

室内はフランス製らしく中々に豪華な印象。

何かと思えば...

水洗トイレに洗面台そして...

座ってくつろげるシャワーまで。恐らく贅沢というよりは、海の上である期間過すことを考えた実用的な装備なのだと思います。遊びも暮らしの一部で人間らしさを保つ大切な時間であるというこのヨットの設計者の想いがよく分かります。

海から眺める小樽水族館です。

祝津灯台とニシン御殿もよく見えます。

遥か沖合いには同じくヨットが見えますね~(笑)

雰囲気抜群の皮巻きの舵輪と、これまたフランス製らしいワインボトルラック。
ヨーロッパってそういうところなのね~(笑)

帰りはよい風が吹いて帆走のチャンス到来!

船体を傾け全力帆走中の様子と舵輪を操る艇長。

帆が風をはらんで船体を前に押し出す感じはとても不思議でした。

沖の船に手を振り

やがてどんどん小さくなり

マストの上の風見と風速計がヒュンヒュン回り...

気が付けば再びマリーナへ

いや~初めての貴重な体験!最高でした。
今日はアメリカズカップなんていかが?この映像は凄い!