2013年10月8日火曜日

西野里山の家 建て方

 
本日は現場にクレーンを据えて2階の床、柱、梁を建て込みます。従来は柱も梁も大工が抱えられる大きさを基準に長さを決め、人力で持ち上げながら建て込んでいましたが、工場加工(プレカット)の発達により、3間(約5.4m)以上の長さの材料が自由に加工できるようになると、人力では逆に難しくなってきました。梁の成(せい:垂直方向の寸法)が従来は30cm程度が最大だったものが39cm、近年では45cmともなるととても両端を二人の大工で持ち上げながら梁を掛けること自体、危険な重量になります。特に私の場合は、一般的な6尺(1.82m)間隔の柱や梁の配置を半分の間隔で行うために、木材の石高(こくだか:材料の体積の意、材木は伝統的に石/コク、近年は立米/リュウベを単位とする)が倍増します。当然余計に手間がかかり現場の大工さんの苦労は増えるのですが、いかに丈夫に作るか?や床を歩いたときにがっしり感じる剛性感、何より大工さんたちが実感として「この家は丈夫だ簡単に壊れるわけがない」と自ら納得するような仕事を見せねばなりません。設計者はいつだって大工さんに試されていてその評価は図面を通して現場に伝わります。「なるほど組み上げて見て訳が分かった(笑)」と言ってもらえるように精一杯、知恵を絞ることでしか信頼は生まれないのです。これから設計者を目指す人はぜひ、構造図を書いた後プレカット屋さん任せにせず自分で軸組みまで書いてほしいものです。
 
右手前に見えるのが6mを超える通し柱。(継ぎ目のない長柱の意、反対に短い柱を管柱/クダバシラと呼ぶ)一般的に梁勝ち(梁を優先させて、各階ごとに短い柱を立ててゆく方法)と柱勝ち(建物の四隅の柱を繋ぎ目のない長柱として梁は柱の腹に叩き込む方法)では後者の方が建て込みがより難しくなります。もちろん前者も最終的には柱を金物で繋ぎ、壁に筋交い代わりの合板を打ちつけることで柱の揺れが止まりしっかりとしますが、設計者としては合板や金物に頼らず組み上げた状態でビシッと動かなくなるものが好みです。


一見、梁の上から柱が生えているように見えますが、実は通し柱で、梁は柱の腹に叩き込まれています。

明日は間柱といよいよ大垂木を架け勾配屋根を作ります。

「西野里山の家」の特徴的な階段室の踊り場は空中に跳ね出していて下に支えの柱がありません。階段の踊場を中二階として建て主さんの趣味である読書が楽しめるようにいろいろと考えて空中に浮かんだ感じの設えとしました。

 
踊場の床を支持する梁が左側に跳ね出している。
 
今日はTスクエアでPRIMEなんていかが?
 

2013年10月7日月曜日

ヨットは楽し!

昨日、生まれて初めてヨットに乗せていただきました。場所は大好きな小樽、しかし陸しか歩いたことがありません。海の街を一度沖から眺めてみたいと想っていました。少年時代に小さなマーメイド号で単独、太平洋横断に成功した堀江謙一の著書、「太平洋一人ぼっち」を読んで以来、白く輝く帆に風を一杯に受けて船体を傾けながら走る姿に憧れていました。当事の私にとって船乗りになって世界を回ることは途方もなくわくわくする夢だったのです。もちろん現在は陸の仕事に就いたことを後悔していませんが、ふとした瞬間に懐かしく昔を想い出すのでした。そんな時、思いもよらずお誘いが掛かり乗船の運びとなったのです。人生って不思議なものですね~。(笑)



レンタルしたヨットはフランス製oseanise32 。6人乗りで堀江謙一が1962年に使った初代マーメイド号の約2倍の大きさです。美しい青色の船体と雰囲気一杯の皮巻きの大きなステアリングホイール(舵輪)。今日の同乗クルーは艇長含め3名。しかしなんて優雅なんでしょう。

海から見るマイカル小樽。

室内はフランス製らしく中々に豪華な印象。

何かと思えば...

水洗トイレに洗面台そして...

座ってくつろげるシャワーまで。恐らく贅沢というよりは、海の上である期間過すことを考えた実用的な装備なのだと思います。遊びも暮らしの一部で人間らしさを保つ大切な時間であるというこのヨットの設計者の想いがよく分かります。

海から眺める小樽水族館です。

祝津灯台とニシン御殿もよく見えます。

遥か沖合いには同じくヨットが見えますね~(笑)

雰囲気抜群の皮巻きの舵輪と、これまたフランス製らしいワインボトルラック。
ヨーロッパってそういうところなのね~(笑)

帰りはよい風が吹いて帆走のチャンス到来!

船体を傾け全力帆走中の様子と舵輪を操る艇長。

帆が風をはらんで船体を前に押し出す感じはとても不思議でした。

沖の船に手を振り

やがてどんどん小さくなり

マストの上の風見と風速計がヒュンヒュン回り...

気が付けば再びマリーナへ

いや~初めての貴重な体験!最高でした。
今日はアメリカズカップなんていかが?この映像は凄い!

2013年10月5日土曜日

西野里山の家 建て方開始

 
土台敷きが完了した「西野里山の家」。さて週明けから一気に柱が建ち始めます。いつも思うのですが、一気に家は建ち上がるのですが、そこからがまたたいへん。特に断熱や窓廻りに通常の現場よりもかなり時間を要します。
 
 
 
周囲に建物が少ないので少々広目の足場が可能です。建て込んだ住宅地では足場もぎりぎり。しかし「西野里山の家」の敷地は南西側しか隣家に面していないので足場もいつもよりはゆったりです。
 
 
 
塗っているのはエコボロン。ホウ酸を用いた防腐防蟻剤です。 基礎断熱を行い床下を室内として外気の予熱などに使う最近の工法では安全性の高い防腐防蟻剤が求められます。
 


こちらはポーチにある柱の柱脚金物。5本の柱を象徴的に使って玄関横のアクセントにしようと考えています。そこでこうした一体型のプレートを製作し柱の位置決めが簡単なように工夫しています。
 
今日はO.ピーターソンなんていかが?


2013年10月2日水曜日

震災をきっかけとして住いと建築を考える

 
今日は北総研のフォーラムに行ってきました。
震災は私たちの社会の有り様に大きな疑問を投げかけましたが、建築もまた同じ。一時の混乱もようやく収まり復興住宅をどのように作るべきか?もっと広く、今後震災大国である日本の建築が取り入れるべき課題はなにか?作り手や住い手、地域行政との関係をより良く繋ぐ方法とは?自らも作り手の一人として考えに向き合うよい機会をいただきました。

技術をいかに生かし使うのか?そうした計画思想や哲学に大きな変革が求められている。そんな涌井先生の提言に、はっとさせられました。私たちはすぐに便利で楽な技術(方法論)を喜びますが、実はそもそもそれを生かして正しく使っているのか?そう謙虚に問い直す瞬間は意外に少ないのでは?

被災地の建築家である佐々木さんの静かな語り口から、逆にその経験の凄まじさが伝わってきました。地域の建築家としていかに生きるべきか?そんな風に問いかけられているように感じました。

2013年9月30日月曜日

「採光と照明のアイディア」

2013年 10月21日 
 
北海道の11月~12月は一年間で最も日を短く感じる季節です。午後3時ともなると、あたりは夕方の風景となり4時を過ぎる頃には暗くなります。ほぼ北海道と似た気候の北欧の国々と比べ一日中夜が続く極夜こそないものの、夜は約14時間にも及び、日の光が恋しくなります。同じ時期に午後5時半を回ってもまだ日没までに余裕のある沖縄と比べると体感的には二時間以上も夜を長く感じます。長い夜は一方で寒さの裏返しでもあり、冬の訪れは暮らしの中で照明と暖房が心と体の癒しとして欠かせなくなる、最も北海道らしい季節でもあります。前回、自然エネルギーを暮らしに生かすために、従来の冬に縛られたものの見方(作り方)から今後は踏み出すことの大切さを、断熱や開口部の工夫を例にお話ししましたがそれらはまさに長い夜と貴重な昼を楽しむことにもつながっています。長い冬の夜を楽しむ照明としてリクエストが多くよく提案するのが、光源を直接見せない間接型の照明計画です。光を壁や天井に反射させ物に輪郭を与えることで、吹き抜けや構造体の存在が認識できるようになると、昼間のように家を広々と感じることができるようになります。特に冬の備えを背景に発達してきた北海道の住いではLDK空間(居間+食堂+台所)を一まとめの空間として南側に設ける場合が多く、そんな家族の大切な空間を長い夜と共に楽しむ提案に潜在的な憧れがあります。さらに降雪期を迎えると、夜の長さは同じでも雪明りで夜を明るく感じるようになります。雪の白さと寒さが産み出す結晶の輝きは、昼夜を問わず光を楽しむ最高の舞台になります。
 
 

屋根を外貼り断熱とし力強い梁を隠すことなく見せることで印象的な街並みの夜景とした。 (2005星置の家)


貴重な太陽光を明るさと熱として生かすために断熱性に優れた大窓は欠かせない。一方夜間はどんなに性能の良い窓も壁にはかなわない。そこで太陽光よろしく照明器具も光と熱を両方使おうと考えた。
 
 
昼間は豊かな日射を取り入れ、夜間は窓辺に発生する下降気流(ダウンドラフト)の緩和を狙った照明計画。冬型の家から一歩踏み出し新たな観点で断熱を増すことで採光をはじめ自然エネルギー利用のポテンシャルも増すが、設計者には従来の設備機器任せとは異なる設計センスが要求される。(2007ニセコの家)
 
 
 
一日中安定した北側の光は最高の自然照明。画家や写真家のなかには良い光を求めて敷地を探す人さえいる。窓の外に陽光で明るく浮かび上がる街並みは生きた風景画として楽しみたい。寒さが気になる北側の大窓も断熱サッシの進化で従来に比べ難しくはない。(2009銭函の家)
 

 
一方、熱取得に優れ、時間により室内の影が刻々と変化し表情豊かな南側の大開口は、明るさと暑さの調整が可能な工夫を加えて楽しみたい。窓の外に間隔や高さを違えて取り付けた縦格子が外部の視線の遮断や積極的な採光を両立させている。  (2012発寒の家)
 
 

 

2013年9月28日土曜日

「自然エネルギーを生かす」

10/7と10/21に北海道新聞に寄稿させていただいた文章が掲載されることになりました。実際に紙面に掲載されるのは文字数を圧縮したものですが、せっかく文章を書いたのでブログには原文を載せておきます。(笑) 
 
3.11以降急速に再生可能な「自然エネルギー」を社会に取り入れる動きに注目が集まるようになりました。太陽光パネルや風車による発電等はその好例といってもよいでしょう。確かに、様々な自然の力を簡単に電気に換える設備と技術は明解で便利という点で、その趣旨を満たすものかもしれません。しかし私たちの周りにはもっと身近で遥かに豊かな自然エネルギーが存在することは意外に知られていません。またそれらを利用するコツや家づくりは冒頭の設備と技術の持つ華々しさに比べると残念ながら地味な存在です。今日はそんな地味な自然エネルギーをご紹介します。(笑) 

 北海道は北緯43°~44°に位置し冬の厳しさはあるものの、似た気候の国々と比べて遥かに日照に恵まれています。驚くべきことに建物の熱ロスを抑え窓廻りを適切に設計(工夫)すると、年間に必要な暖房エネルギーの3割以上は日射でまかなえるほどです。要は残り7割弱をいかに融通すればよいかで、本来必要な断熱を施せば、家電や調理、人体や照明さえ無視できない暖房熱源に変わります。実は本当に必要な暖房エネルギーとは日射とそれらを差し引いた残りでよく、40坪程度の家なら、厳寒期の全館暖房に要する熱量は余裕を見ても2~3kw/h(カセットコンロ1台程度)で十分です。
        
南側の大開口を夏の強い日射から守る外付けブラインド高断熱建物を日射遮蔽すると、真夏に窓を閉めていたほうが涼しくなる。                   (2010年菊水の家)

太陽光は光と熱が混ざりあった高度なエネルギーですがそれをわざわざ一度電気に変換するのではなく、手っ取り早くそのまま「明るさ」と「暖かさ」として使います。日光の特徴はものに当たると熱に変わることですから設計者の役割はせっかく室内に取り込んだ熱を逃がさぬよう断熱や蓄熱性の高い素材を選んだり、逆に暑くなり過ぎぬよう窓廻りを工夫することです。特にこうした開口部の工夫は日射遮蔽と呼ばれ主に温暖地域で発達してきましたが最近はこれらに冬を背景にした断熱を加え、1年を通じ穏やかでヒートショックの少ない省(小?)エネな家ができるようになりました。温暖地と寒冷地の考え方を上手に融合することで、最大の自然エネルギーである太陽光を発電とは違なる視点でより簡単に暮らしに生かすことができます。
 
 暖房シーズンの室内と屋外には大きな「内外温度差」ができますがこれも有効な自然エネルギーです。断熱気密した建物で冬、同時に1.2階の窓を開けると煙突効果で一気に屋外の空気に入れ替わります。暖かい空気が上階の窓から逃げる分、下階に冷気を引き込むのですが、これを少しずつゆっくりと、引き込む冷気を暖めながら行うと、「パッシブ換気」と呼ばれる優れた換気暖房になります。特徴は暖房と換気を一度に行えることと従来はそれぞれに必用だった専用設備がほぼ必用なくなること、なんと言っても年間を通して換気用に連続運転していたモーターファンとその電源が煙突効果と引き換えに必用なくなることです。
      
しっかり断熱された床下に少量ずつ引き込まれた新鮮外気はこれまた小さなヒーターで予熱され軽くなります。暖かく軽くなった新鮮外気は家中に暖房熱を届けると同時に換気も行い最後は排気口から外部に排出されます。

 「冬の寒さ」もたいへん素晴らしい自然エネルギーです。しっかり断熱材と断熱扉で区画された冷温庫を家の一角に作るとこの素晴らしさを自在に生かすことができます。特に冬場、凍らない程度の低温と湿度は野菜の甘みを増し葉物野菜は驚くほど長くその鮮度を保ちます。お肉やお魚はもちろんお父さんのビールやお母さんのワインもいつだって美味しく冷えていますし、結果的に今までの電気冷蔵庫の役割は冷凍と製氷くらいになってしまいます。夏季こそ必須な冷蔵庫も冬場は自然の寒さにお任せすればその必要性事態が薄れます。しかしこの冷温庫の素晴らしさは実は保存だけではありません。寒さを生かすことは、発酵や醸造といった高度な調理を手軽に行える環境が身近になることを意味します。従来の家中暖かい家では不可能だった様々なお漬物も簡単に作ることができるようになります。保存と熟成、乳酸発酵による調理まで可能にする寒さとはなんと素晴らしいものだと思います。
 

断熱され屋内、屋外から使える冷温庫。冬場は冷蔵庫の必要性が極端に薄れる。(2012年発寒の家)

 現在、高断熱高気密と呼ばれ広く普及している北海道の建物の多くは残念ながら、身近な自然エネルギーを暮らしに使い楽しむためには不十分です。一般的にこうした建物の断熱コストは総工費の2%程度で比較的良いものでさえ厚さ約15~20cmのグラスウールを壁に用いるくらいです。これは依然、寒さの対処療法として消極的に断熱を捉える意識だと思いますが、今や断熱は季節を問わず自然エネルギーを生かす暮らしに欠かせない設え(しつらえ)と捉え直すべきでしょう。せめて倍の厚さの断熱材を使うことが早く、当たり前になってほしいと思います。



中学校の学校祭

昨日は、次男の学校祭。中学校ともなるとなかなか気合の入った展示を見せるようになる。写真は部屋の照明をブラックライトとし蛍光のシールが輝く効果を狙った展示。一時期、クラブ↓(お姉ちゃんのほうじゃなくてダンスのほう/笑)や流行のショットバーなんかで使った時代があるけどこんな風に星空や地球に使うのもまた新鮮!なかなかにかっこよかったです!

ブラックライトは、白いシャツなんかも青白く映し出す。

こちらは海を題材にした展示スペース。手前に見えるのは巨大なジンベエザメ。

ものづくりの街、発寒の子供たちらしく作りものが多くて楽しい。ちなみにこの巨大なジンベイザメは発泡スチロールを根性で削り出したもの(笑)。きっと全身、真っ白になりながらの大奮闘、作った人はほんとうにごくろうさま!(笑)

炊事遠足のときの心境を詠った次男の句、他の子達が定番のカレーとシチューと豚汁で攻める中最後まで「俺はギョーザが食べたい!」と貫いた根性はまあ今日の所は褒めておこう!しかし「おいしくてかたずけがはかどる」とはいかがな意味か?すぐになくなり皿が空の状態を指しているのか?まあいづれにせよ、「かたずけ」ではなく「かたづけ」が正解なことも本人に伝えておこう。(笑)

会場で貴重な戦力になると同時に今回はメイド風のいでたちで登場のお母さま(お姉さま)たち。小学校ともども、学校イベントには一緒に参加する保護者の協力が欠かせません。
心よりごくろうさまです。

屯田の家 内覧会を終えて

お忙しいスケジュールの中、内覧会にお越しいただきましたみなさま、また快く現場をお貸しいただいた建て主さまにもこの場をお借りして御礼申し上げます。なんとかブラインドが間に合い無事お引渡しできました。今は充実感一杯、みなさまほんとうにごくろうさまです。まだ外構が残っていますが、これからがとても楽しみです。

もうすぐ、お引越し。ご家族のお役に立って愛される家になりますように。
心よりお祈り申し上げます。
 
今日は心を込めてみなさんに大好きなキーシンをお贈りします。
もちろんレパートリーはショパンで!(笑)
 
 

2013年9月24日火曜日

西野里山の家 基礎散水養生

今年の北海道はほんとうに異常な気象が続いています。8月の中旬からは、毎度のゲリラ豪雨と蒸し蒸しした日が続き、9月の中旬に入り、雨は減りましたが日中30℃になる日なんていうのもありました。こんな時は少しコンクリートに気を使ってあげたいものです。剛建築工房のI所長自ら散水をしてコンクリートが天日で急激に乾燥しないように養生をします。(住宅の基礎部分は従来からコンクリート造でありながら、コンクリート造用の仕様書が適用されない等、素朴な疑問もありました。(笑) したがって「うちはそんなもんしてないよ!っていう作り手がいても、それは仕方のないことでもあるのです。)
 

この日も薄曇りながら、けっこうじりじり。

基礎は今後のことも考えて、かなりオーバースペックな防蟻処理を行っています。現在はまだ北海道の住宅にシロアリ対策は求められていませんが、今後はどうなるのでしょう?