2011年9月9日金曜日

西野の家 内装工事のちょっと前

西野の家も後半戦に突入です。10月には内覧会も企画していますのでお楽しみに!さて現在の工程で大切なことは、出来上がりをイメージした下地や骨組みができているか否かの確認作業です。どんな家でも工事中の注意書きがそのまま床に残っている家なんてありませんよね~?当然ながら、内装工事の最中に最後の仕上げを待つばかりの壁や床に指示や注意書きなんて書けません。そこで内装工事のちょっと前がすんごく大切になります。上の写真はアイランドキッチンの置き場所と排水の位置を床に書き入れたもの。特に床を貫通する管の位置や大きさには注意が必要です。画面中央に「下の天井はありません」との注意書きが示すとおり、排水の位置によっては1階の天井が残念なことになります。


武田社長自ら、レンジフードの位置や電源コードの位置、隣り合う吊戸棚の高さ等々をグラスウールに直接墨出しして行きます。腰の左右にある黒いボックスはコンセント、天井から下がるのは照明に電源を供給するコードです。

西野の家の内装の特徴は針葉樹合板という気取らない素材を用いて、ざっくりとおおらかに作ろうと思います。繊細な材料を用いる緻密な仕上げも大好きなのですが、今回は気取らず暖かみを感じる仕上がりを特に意識します。頑丈でありながらともすれば素朴すぎる材料である針葉樹合板。着色して板目を生かすのも悪くありませんが、今回は柱や梁と一緒にあめ色に味わいを増すことを狙ってあえて生成りのまま使います。貼り方は「目透かし貼り」。板と板とをぴったりくっ付けるのではなく、一定の巾を空けて貼ってゆく方法です。目地割の規則性が素朴な表情に秩序を与え、最後に印刷をやすりで消せば、一見無愛想な針葉樹合板が、ざっくり暖かなまま適度な緊張感を保って内装に仕上がります。目透かしのコツは貼る材料の厚さと透かす目地の幅の関係性をしっかりとデザインすること。簡単に言えば材料の厚さ以上の目地巾は出来上がりが大味になって誠によろしくありません。今回は9mm厚の合板を5mm目地で貼り込みます。なぜ目地巾を材厚より小さくするか?下の写真のように離れてみると目地の底が影になってピシットした表情になります。上の写真はストロボを焚いているので目地の底が見えていますがなんだか締まらないでしょう?(笑)ちなみに構造金物も平坦部の小さなものを指定して少しでも目に付きづらくしています。

極力柱や梁の芯で割り付けて、構造材の間隔をリズム感として室内のデザインに表現します。古くは日本の真壁(和室は柱や梁が露出し、その間が壁になっている。)のように構造材=内装デザインといった用即美の感性をちょっとだけ意識します。

屋上に飛び出した塔屋、手稲山を望むと共にパッシブ換気の排気口、機械換気の排気口を兼ねます。もちろん等間隔に管径も揃えて割り付けます。

いよいよ来週は外壁に道南杉を貼りはじめます。

さてさて今日はこんな感じでいかがでしょう?秋がそこまで来ています。

2011年9月4日日曜日

JIA.テスクチャレンジ設計コンペ

2011年9月3日は、私の所属する日本建築家協会北海道支部と㈱テスクが主催する設計競技(コンペ)の公開審査がありました。場所は札幌の新たな名所として市民にすっかりおなじみになった、札幌駅前通地下歩行空間です。ブログをお読みの方は設計コンペといってもなじみが薄いでしょう。私たち建築の設計者にとって最も大切なことは「知力を尽くすこと」に他なりません。しかし知力というものは普段から鍛えなければ維持ができませんし、後輩の育成や自らの鍛錬のためにも、考え練り上げた提案を競う機会はたいへん貴重なのです。将来、建築家を目指すのならば考えることに慣れると同時に建築的な頭を鍛えることに絶えず貪欲でなくてはいけません。

実行委員長+司会というありがたいお役目を頂戴し、朝から会場の設営を建築家仲間と行います。作品掲示に使うパーテーションや椅子にテーブル等々が会場に常備され、市民の積極的なイベント開催を前提に計画されているところが、さすがにあたらしい施設を感じさせます。ストリートイベントは近年ではすっかり市民権を得た感がありますが、以前の日本においては路上を舞台にすること自体にかなり偏見があったことも事実です。屋台よりも店、暮らしも路上よりは畳の上といったところでしょうか、しかし近年では特に若い世代がむしろ路上に親しみやすさや自分と等身大の魅力を見つけています。まだまだ屋台やコンサートが一般的ですが、これからはこうした文化的なイベントもどんどんストリートへ飛び出してゆくのも面白いのではないでしょうか。

コンペのテーマは「寒冷地の仮設住宅」持続可能な暮らしに向けて、北海道で起こる震災を想定したさまざまな仮設住宅が提案されました。

応募者に通りがかりの市民も参加し、公開審査にも熱が入ります。

一次審査を通過した8名は、聴衆の前で一人持ち時間5分のプレゼンテーションを行います。

社会人をはじめ建築を学ぶ学生さんもたくさん参加していただきました。

さーて審査の結果は??
ぜひ公式ブログをご覧下さい。 

JIA.テスクチャレンジ設計コンペ公式ブログ http://jiatsc2011.blogspot.com/

この場をお借りいたしまして、エントリーいただいた方々、徹夜で提案を仕上げ作品を提出してくれたみなさまに、心より御礼申し上げます。私はこれからも設計を志す若者を応援するとともに、自らの仕事を通して社会にささやかながら貢献したいと思います。また当日まで準備に献身的にご協力いただいたみなさま、このコンペの社会性の高さに賛意を頂戴し後援をいただいた行政、建築関連団体のみなさま、スポンサーの㈱テスクさん、そして同僚でもある建築家のみなさん、当日イベントを盛り上げてくれた市民のみなさまに心より感謝を申し上げます。また来年ストリートでお会いしましょう。

今日はみなさんにこの曲を。 

2011年8月31日水曜日

コストも設計しています。

建築家としての基本的な能力の中にVE(バリューエンジニアリング)に関するものがあります。VE?なに??とお思いの方もきっと多いと思いますが、実は数多くの要素が補完し合い、複雑に絡み合って完成する建築においては、コストに対する設計能力が欠かせません。どんなに合理的で高性能で美しく知的な建築であろうとも、世間並みの価格を大きく上回るものは建てられる人も限られるでしょうし、結果として希少であるがゆえに価格的な分野で洗練されることはありません。もちろん建設費に制限のない環境は建築家として魅力的ではありますが、反面あまり社会的ではないように思うのは私だけでしょうか?(笑)。前置きが長くなりましたが、旭川の家と宮ノ丘の家(平成開拓者の家)の予算が概ねまとまり、近々着工を迎えます。バランスよくコストを下げ健全な予算の中で着工を迎えられることは毎回ながら大きな喜びです。辛抱強く見守っていただいたクライアントさん、あらゆるコストダウンの検討に嫌な顔一つせず付き合ってくれた橋本川島コーポレーションさんそして剛建築工房さん、積算担当者のみなさん、仕入れ担当のみなさん、営業担当者のみなさん、各協力業者のみなさん。この場をお借りして心より御礼申し上げます。皆さんで力を合わせてよい家づくりにいたしましょう。
                                        建築家  山本亜耕

ところでVE:バリューエンジニアリングとは?
http://www.sjve.org/ve/summary/

デフレパードなんてよくないですか?
http://www.youtube.com/watch?v=somG2lTarE8

西野の家 気密測定

 本日は西野の家の気密測定です。先日、チーム稚内が出した0.2cm2/㎡に近づくために棟梁をはじめ、電気屋さん、設備屋さん各人が自分の割り当て部分をしっかり気密化し検査に臨みます。仕事の確実さが問われるこうした試験は、ヒューマンエラーを防止するためにも、工事中と完成後の最低2回は実施したいところです。しかし断熱や気密に対する意識が比較的高い北海道ですら、完成後の確認に1回のみの現場が多いのが実に残念です。壁や天井が全て仕上がってしまってからでは、たとえ気密測定の数値がわるくても、原因や場所を特定するのは難しいのが実情です。建物の品質を上げることが目的なのですから、工事途中の修正が可能な時期に行うことが大切なのです。

気密測定中の室内の様子。減圧装置で室内の空気を抜いてゆきます。気密が高ければ高いほどビニールは装置の排気口の方向に引っ張られてゆきます。逆に気密が低ければ低いほど、室内の空気を抜いた分すぐに外から空気が入ってきますからビニールが引っ張られることは少なくなります。

室内のビニールがピンと張り、気密工事の成果が出ているのが目視で確認できます。余談ですがもうひとつ気密が高いかどうか感覚的に知る方法に、減圧装置のファンの音があります。気密が高ければ高いほどファンの風切音は静かになります。反対に気密が低いと大きく、ひどい場合には漏気部分に気流感を生じたり、笛鳴りのような現象が生じます。

1回目は0.3cm2/㎡。良い数値ですが、武田社長は少々不満げな様子。さっそく全員で漏気部分を探し、怪しい部分にはウレタンを充填してゆきます。

壁貫通部分が、稚内よりも遥かに多い西野の家ですが、大工さんは頑張ります。そうしてついにサッシの取り付けのビス穴からわずかな漏気部分を発見。さっそく武田社長自らシーリングを行い再検査へ、結果は下記の通り。家全体で23cm2に気密性が向上。すなわち、仮に家中の隙間を一箇所に集めたとしても5cm角にも満たないという結果になりました。1平方メートルあたりの数値に直すと、C値:23cm2÷108㎡≒0.2cm2/㎡、稚内と同等の数値を達成しました。現場全員が「ホッ」と安堵。最終的には計測限界ぎりぎりのC値:0.1cm2/㎡を目指します。


上段の右の数値が総隙間面積(家全体)、私を含め男5人が漏気部分を探して汗をかいたために計測開始時点では25℃だった室温が27.5℃にまで上昇。(上段左)くしくも300mm断熱の効果を体感することにもなりました。ちなみに普段は断熱のおかげで室内は外の暑さとは対照的に非常に涼しい状態です。

本日はきっとビールが美味しいでしょう。(笑)
現場の皆で成果を分かち合いたいと思います。




2011年8月25日木曜日

お宝?

日曜日は現在着工間近の「発寒の家」(平成23年度R住宅の予定)のオーナー夫妻とニセコの家の見学に。ちょうどニセコの家のオーナーと都合が合い、三者で有意義な時間が過せました。久々に見る羊蹄山。やっぱりよいところですね~。(笑)

ニセコの家ではパッシブ換気やらトリプルガラスの木製サッシやら、はたまた全体計画や窓の位置の理由とか、実は部屋の配列自体に意味があるんです。とか、照明器具は極力見えないほうがよいのはなぜか?等々、たいへん有意義なお話ができました。印象的だったのはパッシブ換気があまりに単純な原理で拍子抜けした様子の「発寒の家」のオーナーの顔でした。日本人の平均的な感性で私の仕事を眺めると確かにその単純さに驚く人が多いのも事実です。(笑)みなさんきっと「あっ!!」と驚かせてほしいのだと思いますし、暖房費が簡単に半分になったり、夏場も実に涼しかったりといった事柄に、十分な理由が(素人では想像すらできないほどの)ほしいのだと思います。(笑)確かにその気持ちは分かりますが、種明かしは少々違います。

 簡単に言えば、「自然の法則を注意深く観察して科学的に設計を行う。」これ以外になにもありません。もう少し営業上手ならばよいのでしょうが(笑)残念ながらこれが全てなのです。したがって部分的にパーツを眺めると実に原始的で、人によってはせっかくのわくわく感を裏切ってしまうかも知れません。しかし誤解を恐れずに言えば、そうした当然の設計思想や哲学によって、自然の法則に沿って科学的に北海道の気候や生活習慣に合うように家を考え作ってきた歴史こそ希薄であったことも同様に大切にしてほしいのです。

 今までの北海道の家を簡単に表現すると、「エンジン建築」と呼ぶのがぴったりくるのではないでしょうか?寒さの克服のためにひたすらカイロの数と性能を競った日々、当初のカイロの動力は石油でしたがその後ガス、電気と変わりました。30年前の家と現在の平均的な全室暖房の家では、実は暖房費はほとんど変わらないかむしろ高いのです。もちろん30年前は居間にしかストーブはありませんでしたから、家全体を暖房して価格が同じならむしろ安いと考えてもよいのかもしれません。しかし現実はそんな慰めがむなしくなるほどCO2の排出量は増加の一途をたどり、3.11に東北を襲った大震災は、今まで当然としてきた価値観を簡単に吹き飛ばすと共に、私たちの社会にさまざまな問題を突きつけています。

 「スピード感を持って安価に簡単に問題を解決する知恵」震災以降国民が政治に期待したのはこうした事柄ですが、現実はご覧の通りです。私は北海道の建築もこうした閉塞感を抱えているように思うのです。むしろ私はこうした閉塞感を打ち破るのは、新たな設計思想によるありふれた既存技術の再評価や誰でも知っている自然法則の積極的な活用だと思っています。自動車メーカーのマツダがガソリンエンジンで30km/Lの省燃費を達成しましたが、意外やほとんどニュースになりません。価格も140万円と同性能のハイブリッド車よりも100万円も安いのです。この車ならばすぐに普及が見込めますし、導入の際の国庫補助金もより安価で済みます。車検や保険も既存のものと変わりませんし、最近調達が難しさを増しているレアメタルも使いません。よいことずくめなのに日本人の価値観で見ると地味な感じがするせいか、思うほどは「おっ!」という人が少ないようです。(笑)
電気自動車(EV)やハイブリッドカーが日本的なハイテク感を満足する商品であることを否定はしませんが、必要以上にハイテクでマニアックであれば、インフラが未発達の国では敬遠されるでしょうし、価格の高さや必要以上の便利さは、本質的な価値をかえって見えなくしてしまいます。日本の携帯電話は世界一なのに、発展途上国のシェアは中国や韓国に遅れをとるのはなぜか?世界一の技術が必ずしも世界一の競争力を持ちえなくなった理由を考えること。日本の製品が喜ばれた時代、それを作り出したのは同じく日本人の価値観であったことを思い出す必要がありそうです。


発寒の家のオーナーをお送りした後はニセコの家のオーナーと駅前の倉庫を見学しました。日本でも、地域再生の鍵はもはや中央からの太いパイプ(爆笑)ではなく、自らの歴史の再発見やご当地の食、地域に暮らす人々のかざらない人柄にあることが認識されつつあります。そんな意味でも、ニセコ駅前の倉庫群はまさに町の宝ではないでしょうか?その中でもお宝の中のお宝は室内から見上げた小屋組みの木製トラスです。(三角形に組んだ部材で構成する構造体の事)材料に掛かる力を圧縮と引っ張りに単純化し(日本の和小屋は曲げ力という厄介で難しい力が掛かる)結果、非常に細い部材で安価に経済的に大空間に屋根をかけることが可能になります。ご覧のように左右の壁の上にトラスの両端が乗るので部屋の真ん中に柱は必要ありません。ちょうど体育館のようながらんどうの内部を簡単に作ることができるのです。正しく施工すれば頑丈で、豪雪地帯のニセコでも何十年間も雪の重みに耐えてきました。住宅だってこんな風に作って、高齢化や子供たちが独立又は帰ってきたときに自由に間取りを変えられたらよいと思いませんか?こうした技術はずっと以前から身の回りにあるのに、なぜか市民の多くは知りません。不思議だと思いませんか?

現在も鉄骨でトラス構造の小屋組みを作ることは珍しくありません。しかし木造のトラス構造が圧倒的に優れているのが上の写真です。なぜかって??それは分解することができるからです。溶接で繋いでしまう今の鉄骨トラスト違ってこの当時はトラスは貴重品でありまして、払い下げになった農協の倉庫のトラスが小学校の体育館の屋根に再利用されたりなんてことも普通にあったんです。まさに屋根に合わせて基礎と柱だけ作る。すっごくECOでしよう?(笑)でもなぜこうした思想や技術が発展しなかったんでしょう?

簡単な構造計算でこんな大空間を作っていました。

圧巻なのは以前にも一度登場した、増毛小学校でしょう。うーんこれならB29でも入りますね~。これを80年前に作ったとは...でもなぜ発展しなかったんでしょう?
人の大きさと比較するとどれだけ凄いか分かりますよね~。(笑)これを組み上げた大工の名前や当時の記録が少ないのはいったいなぜなんでしょう?80年後に見たって凄いのに。ここらへんの感性を磨く必要があるように思いませんか?

お話は変わりますが、ニセコの倉庫群を見学していてR住宅の生みの親、都市計画コンサルタントのH氏にばったりお会いいたしました。コンサルタントの仕事を簡単に説明すると「仕組み作り」、私たち建築家は「ものづくり」となるでしょうか?日本の住宅が世界一短いサイクルで使い捨てられていること、物を直す力が衰え、薄っぺらなものを簡単に作る分野がいびつに発達していること、銀行や不動産業から見ると減価償却を終えた建物(要は古いほどに価値がない??/なんと野蛮な!)
したがって建物の安心できる中古市場がない。(車は立派な中古市場が存在し、査定や評価基準も充実し市民に普通に受け入れられています。)そんな誠に??な先進国に一筋の光明、それがR住宅システムという、住宅再生の仕組。ご興味のある方はH氏のHPを覗いてみては?

㈱CIS計画研究所 http://www.cis-ins.co.jp/index.html

本日は、大好きなバンプどうぞご一緒に!

2011年8月20日土曜日

西野の家 上棟式

今日は西野の家の上棟式です。宮司さんを招き家内安全と現場の無事故、なにより立派に出来上がるように全員でお祈りをします。地元の神社の宮司さんは若いのに朗々と響く声が素晴らしく皆で晴れ晴れとした気持ちになりました。

設えられた祭壇。

建物の四隅を払い清める宮司さん。

午前中の雷雨がうそのように晴れ上がり、絶好の上棟の日和となりました。

皆の名前の刻まれた棟札は塔屋に納めます。

稚内へ 気密測定

8月19日は竣工が目前の稚内のオフイス案件の気密検査です。もちろん道中の相棒はDr.タギ氏、弊社の設計上すっかり欠かせないキャラクターになりました。実は今回の稚内のプロジェクトはいつもお世話になっている物林㈱さんのお手伝いです。平屋の事務所ながら、極力環境的な省エネ建築にしたいとのご相談を受け、間取り以外の部分をお手伝いさせていただきました。

外壁は、木材酸化塗料によるナチュラルな風合いが特徴です。


右が無塗装の杉材、左側が塗装したものです。通常の塗装のように木肌に塗膜を形成するのではなく、木材の表面そのものを酸化し皮膜化することで長期間木材を保護します。色はよく見るとグレーパープルの味わい深いものです。

匂いも少なく美しく枯れた風合いに仕上がります。
いよいよ気密試験開始、今回の大工さんは、ここまでの気密施工は初めてとのことですが、たいへん丁寧に取り組んでいただいて、なんと最初の1回目でC値(隙間相当面積)が0.2cm2/m2を達成しました。というわけでなんと30分で検査は終了してしまいました。(笑)今までの現場で新記録です。

押縁にビスを打ち下ごしらえをしているところ。

たいへん丁寧な仕事をしていただいたM棟梁。

現場をまとめるハート建築設計事務所(という名前の工事店さんです。)の齋藤社長さんと、最高の性能が出て満足げなDr.タギ氏、もちろん齋藤さんも大きな「ホッ!」が出ていました。

道北の夏は短い。空には秋の気配が。

大工さんが宿泊するのは、町内に借りた一軒屋。ハートさんの事務員のSさんは、凄腕の料理人でもあります。本日のお昼のカレーライス。これぞ正しき日本のカレー。量も具の大きさも現場で働く男の一人前です。けして大盛ではありません。(笑)
次の日、札幌に帰り着く頃にはオドメーターは900km目前。さてこれから上棟式です。

帰りの車の中で道北の空を見ながらこんな歌が聞こえてきました。

2011年8月12日金曜日

西野の家 上棟

みなさん暑いですね~。お元気ですか?きっと今日あたりからお盆休みの方も多いと思います。そんな中、西野の家が無事上棟を迎えました。棟を上げると書く上棟(じょうとう)は建物が無事建ちあがった大切な節目。棟梁も私も現場を預かる武田社長も一安心です。どんなに優れた設計も実際に現場で作ってみるまで分からない。一見楽に見えて矛盾があるかもしれないし、そんな意味では屋根まで作ることで、はじめて全体が見えるようになるのです。建築家にとっては今まで紙の中にしかなかった建物が実物大のラフスケッチのように現れる時間帯といったらきっと分かっていただけるでしょうか。(笑)

尊敬する先輩建築家の小室さんから教えていただいたシート防水とフラットなテーブル屋根。屋根の排水構造や凍結防止設備が必要ないために、シンプルに陸屋根を作れます。もちろん雪下ろしの必要はありません。雨水はテーブルに溢したコップの水よろしく、軒先から地面へ落ち、一般的な雨水同様、敷地内で浸透処理されます。写真はシートの専用溶着液、シートの溶接に用います。

重ねたシートの中に溶着液を注入しているところです。

屋根屋さんはおなじみ、旭川のプロテックさん。仕事は早くてきれい。屋根の上は灼熱地獄なのでこのいでたちです。

出隅の水切り部は丁寧な仕事が求められる部分。溶着下地を増し張りし対応します。

断熱に限らず、防水や日射遮蔽といった技術力を高めることで建築の可能性が飛躍的に高まります。写真はシンプルな垂木組(屋根組)を断熱された天井の上にちょんと載せていることが分かる写真。屋根の寿命が来たら、写真中央の白い紙の上のみ修理or交換すればよいという設計になっている。一方現在主流の屋根組み自体が建物の構造を兼ねるスタイルだと、屋根の痛みは≒建物の構造の痛みとなってしまう。弊社の設計の特徴は建物の外皮を容易に着替えるスタイル。要は外装と構造(断熱+気密も含んだ)のフィル、インフィルを実現しています。


屋根の上に突き出た3階部分のはと小屋。これにより建物の高さを稼ぎ、安定した自然換気(パッシブ換気)を実現する。(もちろん屋根に出ることも可能です。眺めもよいです。)

垂木と直角方向に空気が流れるよう欠き込みを入れている。現場を担当する内野沢棟梁のきめの細かな仕事です。

現時点で外壁の厚みは25cm、さらに室内側に5cmの断熱材が加わるので合計30cm断熱のGW(グラスウール)の入る西野の家です。

全体の坪数は33坪と、こじんまりした西野の家ですが、LDKは一体で19畳もあります。その写真が上、一見分かりづらいですが、大断面の梁を通常の1.8m間隔ではなく90cm間隔で掛けることで、間口、奥行きそれぞれ5.5mの無柱空間としています。天井は外貼り断熱化されているので豪快な梁姿が室内から楽しめます。構造が隠れていないということは、普段からメンテの目視が利き、天井を貼る事で部屋の高さも低くはなりません。

天井を見上げたときにリズミカルな印象となるように落とし根太としてあります。ハシゴ状の連続が西野の家の天井の特徴です。この状態で梁の下で2.23m、梁の上までだと2.5mもあります。

羽子板ボルトや隠蔽部分の気密化の様子。後から手が届かない部分は幾重にも手をかけておきます。

二階の一部が跳ね出し、下が玄関になる構成。水平線と垂直線でシンプルに外観デザインをまとめようと思っています。先ほどの天井パターンが見えていますね~。(笑)

今日は建築に恋している全ての人に贈ります。