2011年1月27日木曜日

北海道の寒さは本当に恐ろしいのか?

北海道への移住をためらう理由のひとつに雪と寒さがあると思う。高齢者にとっては雪かきをはじめとする作業は負担だろうし、なにより寒さは健康の敵であるからだ。本日はこんな統計を見つけたのでぜひお付き合い願いたい。
東京ガス都市生活研究所による調査によれば、日本の浴室は先進国はおろか世界的に見ても非常に危険なところらしい。反面、世界的に見れば死因として浴室での溺死はかなり珍しいケースのようだ。果たしてそれはなぜだろう?

この調査も同じく東京ガス都市生活研究所のものだが、入浴中の死亡事故は交通事故の1.5倍以上のリスクのようだ。しかしまた運転と同じように居眠りが原因で溺れるのだろうか?

実は、北海道の人間にとっては不思議なことだが、日本における浴室暖房は各国に比べて非常に遅れている。日本の浴室は床が洗い場の水掛りとなるために、脱衣所と分けて計画するのが普通であることから、浴室内に暖房機を置くことは難しい。こうした既成概念が働くので浴室を暖房しないことに違和感を覚える人が少ないのだろう。しかし隣接する脱衣所には北海道の場合ならばほとんどの場合何らかの暖房をしている。当然ながら脱衣所とドア一枚隔てた浴室も暖房空間なのである。床が水掛りのため浴室内に暖房機を置けないことは他の地域と同様ながら、浴室が暖房空間であるところが大きく異なるのである。

このデーターも数字を見ると北海道の人間ならば驚くと思う。それは浴室内が10℃という状態が珍しいからだろう。気温が10℃の室内で裸になり、42℃のお湯につかることなど現在の北海道の暮らしにおいてはずいぶん少なくなっている。血圧の変化に注目していただきたい。寒いということがどれほど健康にとってストレスになるか実感できると思う。

最後の統計は少々古いものだが、たいへん興味深いと思う。人口10万人中脳卒中で死亡する人の割合を地方ごとに比較したものである。石油ストーブが早くから普及し部屋ごとの温度差が少ない北海道の死亡率が東京とほとんど変わらないのが分かる。反面、北関東においては部屋ごとの採暖が主流であり、部屋ごとの温度差が大きい。

最新のデーターが手に入ったので合わせて掲載しておきます。
全国の47都道府県別の比較データーです。


さていかがでしたでしょうか?健康住宅などというと最近は天然素材や化学物質以外の材料でできた建物をまずイメージしがちですよね~。しかし家を暖房(全室をくまなく暖めること、部分的なものは暖房ではなく採暖と区別します。)すること。その暖房が間違いなく機能するように断熱することは、素材にこだわるのと同じくらい健康な暮らしには欠かせないことなのです。根源的に必要な要素(必須設計項目)といってよいと思います。またこうした事柄が十分理解されず、冒頭の統計のように先進国ながら国全体としては死亡率の高い住宅が多いことがたいへん残念です。

2011年1月24日月曜日

北海道の今

住民基本台帳による平成22年12月末現在の北海道の人口は5,518,088人である。


総合政策部地域行政局統計課企画情報グループ

HP:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tuk

今日は統計のお話し。社会を捉える上で役に立つし、イメージで物事を片付けてしまいがちな悪い癖を矯正するのにも効果的。今、北海道でなにが起こっているのかをちゃんと知りたいなあ~と思いました。

北海道の人口は平成9年(1997年)をピークに減少に転じている。特徴的なことは平成9年以降社会増減(本人の意思又は自然増減以外の理由による増減)が自然増減(出生及び死亡による増減)を一気に逆転し、現在に至るまでその傾向が続いていることである。また平成15年以降はこれに加え、自然増減もマイナスに転じ、死亡が出生を上回る自然減と社会減がセットで北海道の人口減少の主要因となっている。年齢別転入超過数に注目すると平成12年の調べでは20~29才までの層が道外に著しく流失し次いで10~19才層、30~39才層の順になっている。

要は、最近約10年間で、北海道の人口は約20万人弱減少し今後もその傾向が続くと思われる。その中で特徴的なのは本人の意思により北海道を離れる人の増加が著しいことである。さらに平成15年以降は死亡する老人の数の方が生まれる子供の数を追い越し、高齢化が進行しながら全体人口規模が縮小する状況に突入している。中でも10歳から29歳、40歳から49歳といった今後社会の消費を牽引する世代と消費の中心世代が道外に多数流失している中で消費が低迷し物が売れない状況が慢性化している点である。


全国ブロック別による将来的な人口推計比較によれば北海道の人口減少はもっとも急激かつ大きく、同様に高齢化率はもっとも高い。反面、人口減少がもっとも少ないのは沖縄であり高齢化率も最も低い。
同じ地方の一員として、所得も低く公共投資に対する依存度も低くはない沖縄だが北海道との決定的な違いは、労働生産人口の内、消費に積極的な世代である20代から40代の人口が多いこと。当然ながら出生率も高く、人口減少及び高齢化共に穏やかになる。

人口の中で生産の中心となる生産年齢人口が減少しつつも、各地域は必死に頑張り一人当たりの実質総生産を押し上げている。



民間、公共ともに用地取得や設備投資に回す支出が減少傾向にある。実質的な総支出に占めるこれら固定資本形成の割合も他ブロックに比べて低く、攻より守りに入る傾向が見て取れる。全国ブロック別一人当たり投資(平成14年度)を見ると北海道の経済体質がよく分かる。すなわち公的投資(主に公共工事)依存であり民間による投資は全国ブロック中最も低くなっている。地域経済の帳尻を公共投資によりなんとか合わせている苦しい状況が垣間見える。

さてみなさんはこんな北海道をどう思うだろうか?
私らの若い時分は「若者なら東京に行け!地方にくすぶっていてもなんにもないぞ!」だった。しかしつい最近まで、いや今でも「これからは地方の時代!」ではなかったか?そんな意味でこうした統計はある意味ショッキングですらある。しかし自覚症状のない病人ほど治療に困るものはない。たとえば北海道の抱える問題もそうした事柄を乗り越える時期に来ているのではないだろうか?統計によれば、今後、住宅を必要とする若い世代は全国一早く消滅する地域が北海道であるし、消費に対して消極的な高齢層がこれまた全国一の速度で増えるのもそうである。この事実に慄いて道外に脱出を図れば前述の統計結果を自ら肯定する結果となり.....(笑)

そんな意味で統計に向き合う勇気が今必要なのではないでしょうか?
ちなみに読売新聞の調査によるセカンドライフの移住先人気ランキングの第一位は沖縄県、第二位は北海道である。




2011年1月20日木曜日

今年取り組むこと、取り組みたいこと

みなさんお元気ですか?風邪など引いていませんか?
雪がないない...などと言っているうちに、どっさり降りましたね~。(笑)
やっぱり北海道の冬、これから一段と厳しい季節に突入です。

私はといえば、今年も相変わらず1月4日から仕事を始め、昨年から懸案だった仕事用のコンピュータの入れ替えや、22年度の長期優良住宅の実績報告作成、持ち越しの計画案件の見直しや訂正等々...おかげさまで楽しく忙しく過ごしておりました。

新しくなったのはよいが、使い勝手が分からず古いパソコンの電源を切ることがなかなかできない。(笑)前のソフトでは簡単にできていたのに??とばかりに悪戦苦闘。時流とはいえこのパソコン依存体質いかがなものか??

さて今年は情報の発信に力を入れてゆこうと思います。
北海道の建築のよさを伝えることはもちろん。

昨年完成した、「南あいの里の家」、「菊水の家」双方の燃費調査や住み心地のレポート。
市民のみなさんを巻き込んだ建築のイベントや内覧会の企画。
畑作りや庭を取り入れた北海道スタイルの暮らしの提案。
北国の平屋に挑戦。
リノベーションの可能性とは?
高い費用対効果を実現するコストデザインへの更なる取り組み。
新たな生産者の発掘と紹介。

地域に生きる建築家として、いま建築が社会にできることを分かりやすく発信したいと思います。
そしてまた今年、あらたなものづくりの機会を与えてくださいましたクライアントのみなさまと
精一杯、設計を楽しみたいと思います。(でも...どうぞお手柔らかに~/笑)

                                        山本亜耕

2011年1月6日木曜日

新年明けましておめでとうございます。

みなさん新年明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

札幌は雪の少ない穏やかな元日でした。自宅と実家を行き来しながら今年のプロジェクトのコンセプトをあれこれ考えたり、読書をしたりしました。今読んでいるのは「デフレの正体/藻谷浩介 です。なぜ不景気は続くのか?どうしてものが売れないのか?高名な経済学者ですら難儀するこの疑問に作者は、今ならネットで簡単に手に入る統計資料を用いて次々に答えてゆきます。まさに目からウロコの連続。みなさん!バブルが崩壊した90年代前半に実は就業者数が増えていたって知っていました?統計を用いる=過去から学ぶこと、何事も丁寧にデーターを示して説明することの大切さをあらためて考えさせられました。学生さんから社長さんまで、特に建築を志す若い建築家の方々にもぜひ読んでほしい一冊です。ちょっとだけ社会が分かりますよ~。



2010年12月28日火曜日

今年も一年ありがとうございます

今年は昨年に引き続きたいへん有意義な年でした。「南あいの里の家」と「菊水の家」は生涯忘れない仕事になりました。建築業界が深刻な不況の底で喘いでいる中で、北海道のものづくりの力を示せたのではないかと思います。このブログをお読みの方々はもうお分かりのように北海道の厳しい自然は生産者や作り手を育てるばかりか違いの分かる素晴らしいクライアントを育ててくれます。北海道のクライアントなら皆「使いやすく、美しいデザインで暖かく性能の良い家」を望みます。最近ではこれに加えて「環境的で地球と地域にやさしく高いコストパフォーマンス」が加わります。このような当然の思いは、冒頭の厳しい自然を母に生まれるものではないでしょうか?私もさらに勉強に励みクライアントのみなさまにご満足いただけますように来年も頑張りたいと思います。

この場をお借りして今年お世話になりましたクライアントのみなさまに心より御礼申し上げます。
また「チーム菊水」及び「南あいの里」のみなさん、来年もまた素晴らしい仕事ができますようにお祈りしています。そして2011年度のご契約を頂戴したクライアントのみなさま、これからよろしくお願いいたします。どうぞお手柔らかに(笑)、またブログを最後まで読んでいただいた読者のみなさま、応援のメッセージをいただいたみなさま、報道各社さま、STVさま、小学校の皆さま、PTAのみなさま、みなさまのおかげで今年一年を終えることができます。ほんとうにありがとうございます。

それではみなさまよいお年を!                              山本亜耕

2010年12月27日月曜日

熱交換換気装置

寒冷地の住宅設計にとって熱の逃げ道を当初から予想して計画に生かす意識は大切です。開口部:1/3、躯体:1/3、換気:1/3、学生時代の授業で建物の熱の逃げ道と題して北海道の建築系の学生なら習ったおぼえがあるでしょう。現在の北海道の市場においては、断熱材と開口部に関しては、かなり良いものが手に入るようになってきましたが、機械換気装置に関してはなかなかこれといったものが少ないのが現状です。こうした機械ものになると、5%市場の北海道は圧倒的に不利な立場になってしまいます。菊水の家に用いた熱交換換気装置は生産国では特に高性能なものではありませんが、ここ数日の厳しい寒さの中でも力を発揮してくれつつあります。くれつつなどと言うのは、この手の熱交換機は状態をモニターしながらある程度調整を加えないと本来の性能が出難いからです。各階の排気のバランスや機器内流速を最適に調整することで本来の性能が発揮されます。本格的な調整は年明けにして現在はボルトオンの状態のレポートです。



熱交換換気装置の本体。白く太く断熱した管が熱回収後の室内の空気を外部に捨てる排気管。その隣が各階からの使用済み暖房空気を回収する管です。

朝一は冷え込み外気温は約-5℃、この冷気に室内の使用済み空気の熱だけを移して新鮮な冷気から暖気に変えて室内に供給するのが熱交換換気の目的です。

室内に供給される新鮮空気は約13℃。年明けの調整が楽しみです。

2010年12月24日金曜日

ミュージシャンって偉い!

先日CSテレビで小田和正のチャレンジを取り上げていました。彼は特に私の世代ではオフコースのボーカルとして有名ですが、活動休止後もたくさんのヒット曲でおなじみの日本歌謡界の重鎮です。そんな彼が息子のような若手から同世代のミュージシャンを集めて、みんな一緒にお互いの歌を歌おうという企画を立ち上げます。はたして小田和正の号令の元たくさんのミュージシャンが歌ったこともないライバルの歌の練習を始めます。みな売れっ子ですから分刻みのスケジュールの中、時間をやりくりし、ツアーのバスの中で、移動の車中で自分以外の誰かの歌を必死に練習するのです。本番までの間に何度も開かれるミーティングの中で若手の一人が企画そのものに疑問をぶつけます。「その人の歌はその人のものだ、みんなで歌えば歌うほど個性も味もなくなってしまう。そんなことを苦労してまでする必用があるのか?」それに対して小田和正は答えます。「日本の音楽が最近つまんないのは、みんな一人ぼっちだから。俺達認め合ってないよな?」さて喧々諤々のものづくり、はたしてその結末は...

それではみなさんメリークリスマス。

今日は早く家に帰りましょう。好きな人とゆっくり夜をお過ごし下さい

2010年12月23日木曜日

無料相談のウソ?ホント?

はじめて家を建てようとするときまず不安に思うのは、最終的にいったいどのくらいの予算がかかるのか?ということではないだろうか?建築家に頼みたいがいきなり契約を求められるのは困るし、気に入った図面ができたとしても工事費をはじくととんでもない金額が出て全体予算が大きく狂い...といった事も現実には聞く話である。そこで皆さんがよく利用するのは○○無料相談コーナー等々という建築家の登場するwebページだったりする。最近はあちこちで見かけるでしょ?私も数社の登録建築家ということになっている?いるようだ????...

なぜこんな曖昧な言い方をするかというと、私の知らない間にweb上にそんなページができていたりするからだ。「えっ?」と驚くことが実に多い今日この頃である。(笑)
まあ~っ...職業建築家として開業している身分なのである程度仕方がないと割り切っている。


話をもとに戻すがこの無料相談というものは基本的に一般論を目的にしていることをぜひ理解していただきたい。たとえば弁護士会や税理士会が社会啓発の目的で行うものは基本的に個々の問題を解決することを目的にしていない。「法定金利に対する正しい知識なしに契約を結ぶのは控えましょう。」とか、「税に対する意識と正しい知識を身に付けましょう。」といった、個々の問題に対する解決の前段に本来の目的がある。しかし困っていれば「無料」の響きにつられて期待したのにがっかり~なんていう人もいるのでご注意願いたい。

内覧会に一度でも来ていただいた方ならば、ブログで読む内容と現場の印象がずいぶん違うことに気がつくはずである。「建築は足を運んで体感しないとわかんないモンですね~。いい意味で(笑)」こんなありがたいお言葉を最近いただいたのだが、これは建築を表す真理である。

最近では予算や要望に土地の形状をweb上のフォームに打ち込むだけで建築家から飛び切りのプランやデザイン画が送られてきそうな怪しげなものも見受けられるが、基本的にまともな建築家が見ず知らずの人の間取りを現地調査や下調べもなくいきなりタダで書くことなどあり得ないのでご注意を願いたい。無料だから~!!な~んて喜んでいると、実は裏がある場合も少なくはないのだから。また総合的な予算の判定には通常下記の資料が必要となることも覚えておくとよいと思う。
敷地の地盤調査データー(ない場合は近隣のデーター)、建てたい建物の規模及び構造の概略、できれば特に譲れない要望がわかるもの(例:二階建は不可、平屋等)、外構工事の概略が分かるもの(車庫の有無、庭や畑の有無)、傾斜地か平地か?傾斜地の場合は前面道路までの土地の高さ。(概ねの高低測量図)そして最後にというかもっとも大切なのがローンの仮審査に合格している事。(最近は民間の住宅ローンが多くそもそも審査に通らない場合もある。)、また勤め人の場合、最近では借りられる最大額は年収の概ね5倍程度が原則。原則というのはたとえば財形貯蓄が貯まっていたり、公務員のように返済上有利な身分と評価されるような場合は例外もあるという意味。最終的には現在の家計的に見て無理なく払える額を総予算に据えると困らない場合が多い。借家に住んでいる人は現在の家賃を毎月の返済に置き換える発想も現実的で賢い方法でお勧めです。


また建築家の中には予算の管理や運用は本来クライアントの責任範疇と割り切っている人もいるので(この考えは原理主義的には正しい。建築家はクライアントの建築的な要望にこたえる事が仕事であって、ファイナンシャルプランナーではない。たとえば医師が医療費を心配して治療に手を抜くことはあり得ないのと同じように建築家が建設費を抑えるために耐震性を犠牲にすることはあってはならない。原理的に言えば士業の仕事は概ねこのパターンが多い。まあ生命と財産に関係ない部分ではクライアントさんとかなり話し合いますけどね...笑)そんな場合、まずは「総予算の相談もできますか?」とざっくばらんに質問してみるのもよいと思う。困るのが駆け引き型、「山本さんはプロだから僕の話で総予算がいくらかくらい見当がつくでしょ?」といったケース。今までの坪単価の平均なら答えられるが、ほとんど初対面で要望や構造、規模もあやふや、土地を見るのも許されず、「あなたの理想の家は○○万円です!」って答えられるほど悪い人にはなりきれない。要は何らかの処方箋は欲しいが診断は後が面倒なので受けたくない。というタイプ。誤解がないように言うが、建築家の家づくりは「求められた分を大切にお作りする。」そこに特徴がある。基本的に在庫を持たないので、いつまでに売らねば。という必要性自体がない。けして上から目線で言っているのではなく、求めに対して真摯にお答えするところが、既に出来合いの製品をさばくスタイルとは基本的に違う点に気付かねば、ありがちなA社VS B社比較スタイルに陥ってしまう。バイクも車も同じガソリンで走る乗り物だが、どちらか選択するには比較するよりも理解することのほうが早道である。そうしないと車は4人乗れるけどバイクは2人しか乗れないから負け。なんて恥ずかしいレベルの迷信ばかりが深まる。バイク乗りの一人として言うが、バイクはその軽快感が魅力そのものである。人数を重視するなら車同士をお勧めする。しかしそうは言っても建築家をどうやって選ぶかも大切だよね~。そこで提案は、少々勇気がいるが会いに行くことだと思う。ASJのイベントや内覧会を見つけてはぜひ出かけていって話しかけてはどうだろう?ほとんどの人が実際に会うと意外や気さくな人が多い。まあ中には例外もいるんだろうけどね...(笑)。しかしそうは言っても一生に一度の家づくり。話しかけるくらいの勇気はもっても損はないのじゃないかとも思うのですが?

最近は無料プランニングの他に土地の高低測量や地盤調査も無料で行います。といったサービス?(実は営業)も多い。敷居を下げる目的のみえみえ営業トークだが、基本的に間取りは設計者の知的な所有物であるし、人を使って測量や調査をさせてすべて無料な訳がない。特に地盤調査は敷地のどの位置に建物を建てるのか概ね決めて、その下を重点的に行わねば意味がない。調査目的が基礎や杭の強度設計だからである。庭や畑の強度を調べてもあまり意味があるとは思えないのだがいかがだろうか?(笑)、こうした本来ならば必要事項の説明後でなければ得られない成果品を安易に受け取ることは消費者として危険だし、知らないうちに断れない立場に陥ることにも注意が必要だ。そもそも人が働いてなぜタダなのか?素朴な疑問をどうかお忘れなきように。

2010年12月21日火曜日

内覧会を終えて

内覧会にたくさんのご来場をいただきましてありがとうございます。チーム菊水を代表して御礼申し上げます。わずか一日だけでしたが約50名の方々に来ていただくことができました。ほんとうにありがとうございます。また内覧会のために快く現場をお貸しいただきました建て主様にもこの場をお借りして御礼申し上げます。当日は一般の市民の方をはじめ若い建築家の方々にもたくさん来ていただきました。プロに来られるのは毎度緊張しますが(笑)、30cm断熱することでさまざまな心配がおのずと解決できてむしろデザインの自由度が増すことをお話しすると、みなさんの顔が輝いてたいへん真剣に聞いていただけました。断熱や気密はけしてデザインの妨げなどではなく、私たちの先輩達がたくさんの苦労の中から見つけ出した愛すべき暮らしの知恵です。みなさんも北海道の建築家ならこの素晴らしい発見をどうぞ仕事に生かしてください。そしてだれも見たことのない素適な建築を作ってほしいと思います。熱や空気、エネルギーといった見えないものを自在にデザインする力量こそ北海道の建築家の特性そのものなのですから。

夏の日射による室内のオーバーヒートを避けるために導入された遮熱外付けブラインド。札幌第一号が菊水の家です。夜間はカーテン代わりとして、また北国としては緯度の高い北海道においては3月頃より活躍いたします。

向かいの銀杏の並木がトレードマーク。

ウオークインクロゼットから洗面→WC→浴室→バルコニー(外部)と続く動線。

2階にしっかりとしたトイレを設け、3階は寝室群のみなのでトイレはたいへん開放的。

クリナップ特需部、石川氏の手によるエコシラ合板を用いた洗面化粧台。

手摺の美しい断面。菊水の家では縦使いと横使いが特徴。

ガラスの屋根が掛かった南側のバルコニー。屋外ながら室内のような半屋外空間。

断面に美しいペーパーウッドを用いたキッチン

置き床されたキッチン+ダイニングスペース。撤去するとバリアフリーのLDKにいつでも戻せる。

格子の模様が美しく床に影を落とす居間

右より、家事コーナー、階段、居間

3階からの光を落とすスケルトンな階段。


2010年12月18日土曜日

写真撮影

本日は、クライアントへの初お披露目です。気に入っていただけるだろうか?思い通りにできただろうか?何回作ってもこれだけは慣れません。緊張の一瞬です。さて結果は...明日の内覧会にて。(笑)

イチョウの謎をぜひ現場でお確かめください。

仕切らない間取りをどうぞお楽しみに!


2010年12月16日木曜日

なぜ?北側?段差?

菊水の家は積極的に段差を工夫して計画に盛り込んでいる。最近、「段差」などというと高齢化対応やバリアフリーの観点からか、はなはだ人気が薄い。むしろネガティブなもの、あると将来困るものとして扱われることが多い。反面、高齢化を遅らせ身体的な生活能力を長く保つためには、階段の上り下りや段差をまたぐ、体を半身にひねってドアをくぐるといった複雑な動作を暮らしの中にさりげなく安全な範囲で残すことも大切なことなのだ。そこで菊水の家は、いったんフラットな床を作りその上に置き床(段差)を設けている。理由は、言うまでもなく将来バリアフリーの必用な時が来れば簡単に床をフラットに戻せるように考えたからだ。住宅に大切なことに「今その機能を満たす」、ことと「将来その時が来ても困らないこと」の二つがある。近年は高齢化対応への反省から後者の考えが支配的である。でも最終的に高齢化するからと言って、段差を楽しめる時期を棒に振るのはいかがなものか?段差があることで高齢化を遅らせたり、空間が豊かになったり、たくさんの良いことがあることも事実なのだから。

手前が家の奥(客間や食堂に台所)、棟梁がいるところが居間。


家の奥には、階段を二段上がって行く。天井はフラットなので、奥に進んだ人間は天井だけが低くなる。菊水の家では「仕切らないこと」が計画のテーマ。つまり壁や建具で部屋を用途別に仕切ることをあえてしないで、どこまで気持ちの良い間取りができるか否かに挑戦している。

写真は北側のファサード(建物の正面)。道路が北入り(北側敷地)なので、居間の大きな窓は道路側に向きづらい。ともすれば水周りの小さな窓が不規則に並びやすい方角だ。そこで余計な窓や排気口、換気口を縦格子の中に隠し、窓の数を制限してすっきりとした外観のデザインを考えている。北海道の場合は特に南に大きな窓のニーズが高く、反面窓のない北面は貧相な表情になりやすい。それはそれでわるくもないし、一度は「いっそ北側は木の外壁の表情だけで窓なしか?」とも考えたが、子供の行き帰りや、街中にもかかわらず夜間は街路が暗い土地柄であることも考えて窓を整理しつつ北側の表情を考えた。南に大きく敷地が残り大きな窓を設けた「南あいの里の家」とは対照的な表情の理由がお分かりだろうか?

2010年12月14日火曜日

頑張れあと一歩!

足場が取れた菊水の家。外観は木貼り単色仕上げ。建て込んだ市街地にレッドウッドの色が映えます。温かみのあるレンガ色は、クライアントの奥さんの提案。私からの提案は「単色で行きましょう。」でした。理由はメンテナンスと街並みへの配慮。木材は最も長く使えて、最後は土に還り、再生可能な素晴らしい材料です。反面最低限のメンテナンスが必用です。仕上げ材料の中で単位面積当たりの工事単価が最も安く、プロが行っても素人が行っても仕上がりに大差が出ないのが塗装です。ガルバが良い、いやサイディングがよい等々いろいろ言われますが、50年経ったサイディングや100年経ったガルバリュウム鋼板がはたしてどのような姿になるのか見たことがないので私には分かりません。もちろん両方とも悪い材料ではないでしょうが、歴史の観点から「耐久力があってよい材料は?」と聞かれると最近は木貼りの外壁を勧める事が多くなりました。写真は安価な貫材を押し縁で留めつけた簡素なものですが、実はたくさんの工夫がしてあります。内覧会ではその秘訣もお話しますので楽しみにしていてください。(笑)

エコシラ合板と厚物のフラットバー(鋼板)を稲妻型にレーザーカットした階段。適度なしなりと、空間を圧迫しない「軽さ」を演出できる。下階の気配を知るとともに、熱や光をやり取りする大切な仕掛け。木造3階建てのこの家は、階段の上がり降りのリズム感を統一するために一段の高さも各部各階で共通化されています。

美しいキッチンの意匠はクリナップ㈱直需事業部、石川氏とのコラボレーション。もちろんエコシラ合板の流し台は同社のカタログには載っていないのであしからず。菊水の家のために専用にデザインされました。希少なエコシラペーパーウッドを用いて、引き出しやBOXの木口の印象を引き立てています。キッチンスペシャリストの技を感じてしまいますね~。指のかかり具合、耐久性、引き出しを閉めたときの吸い込まれるような感触、断面と白色のバランス等々、大枠のデザインから、ともすればこぼれ落ちそうなディティール(細部)を徹底的に追及してこの流し台は作られています。㈱クリナップ直需部の特徴は大メーカーでありながら既製品より特注物を得意とするところ。自動車で言えばトヨタ直営のメーカーカスタムショップのような感じです。クリナップ製品に使われている高いクオリティーのパーツを用い、時にはエコシラのような新しい材料にも積極的に取り組みながら、世界で唯一つのキッチンを最高のコストパフォーマンスで作ってくれるのです。大メーカーの品質とほとんどのリクエストが可能な対応のきめの細かさにいつも感謝しています。

2010年12月11日土曜日

菊水の家 内覧会のご案内


「菊水の家」の内覧会を行いますので、みなさまお誘い合わせの上ぜひお越し下さい。

今後、北海道において主流になる300mm断熱から生まれる温熱環境、改良型のWスキン玄関ドア、道産木製サッシ(三層希ガス入ガラス)、遮熱外付けブラインド、高効率一種熱交換換気、空気熱源ヒートポンプによる暖房と給湯といった次世代のベーシックスペックに加え、地元の白樺を用いた美しい積層合板による各部の意匠や極力仕切らない間取りの提案、一体空間でありながらスキップフロアによる空間演出、北海道を楽しむための外でも内でもない空間等々、みどころ満載。
もちろん優れたコストデザインで坪単価は50万円台を実現しています。

チーム菊水  プロジェクトマネージャー   山本亜耕


菊水の家とは?
北海道が推進する優れた地域住宅の建設基準である北方型住宅エコプラス仕様(以降ECO+)として最高の提案を目指した「南あいの里の家」に対し、そうした設計思想を踏まえながらも更なる高みを求めたのが「菊水の家」です。Dr.タギ氏による綿密な温熱計画の導入に加え、ECO+では禁止された熱交換換気による①Q値の算定②室内段差の導入による空間演出、③一部階段の規定等々に対して設計者の視点で新たな解釈を提案しています。要は「ECO+」の思想は踏まえつつも「これからの住まいの方法論はけして一つではないのでは?」というメッセージが「菊水の家」です。

①:安易に熱交換換気に頼ってQ値を下げることを禁止するために今年より導入された処置。薄い断熱を防止する意図だがしっかり断熱した人も機械換気によるメリットが生かせない側面も生んでしまった。菊水の家では、壁、屋根ともに30、45cmの断熱を行った上で熱交換換気を導入している。

②:ECO+では基本的に室内のバリアフリーの観点から段差を禁止している。反面、段差による豊かな空間分節や演出が盛り込めない。そこで「菊水の家」では基本の床レベルの上に仮設の置き床をして(必要ならばいつでもバリアフリーに戻せるようにしたうえで)空間計画の自由度を確保している。

③:階段等の設計に関しては、使用者に危険を認知させなければよい等実にそっけない。しかし階段は単なる上下の通路ではない。美しく空間を引き締めながら高い安全性を有し光や空気の通り道としても大切な仕掛け。「菊水の家」ではより自由な立ち位置で階段をデザインしている。

■データー

①:Q値   0.7W/㎡/k(一種熱交換換気、熱交換効率60%時)

②:C値   0.2cm2/㎡(断熱気密工事終了時)

③:必用暖房容量  2.1kw(*:但し外気温-13℃、室温22℃の場合) 

④:断熱  壁:30cm相当、屋根:45cm相当(グラスウール24kg/m3換算)

⑤:換気      一種熱交換換気機(ロータリー型/熱交換効率max83%)

⑥:暖房      空気熱源ヒートポンプによる低温水輻射暖房
           (発熱端末:パネルヒーター)

⑦:給湯      空気熱源ヒートポンプによる給湯器(エコキュート)

⑧:断熱サッシ  木製枠+トリプルアルゴン入りガラス(北欧製、北海道製)
           遮熱ブラインド(ドイツ製)
⑨:断熱材    フェノバボード(フェノールフォーム)90mm+GW24kg/m3
          複合断熱(外貼りヒートブリッジレス工法は菊水と南あいの里
          の家のために開発されたオリジナル。費用対効果に優れ外壁
          のバリエーションにも対応する。手軽に300mm断熱を行う目
          的の壁仕様)

⑩:耐震性    通常設計(但し木造3階建てのために構造計算済み)

⑪:省エネ性   省エネ法による「住宅事業建築主の判断基準」 
           目標達成率171%(1b地域)

⑫:フラット35  フラット35S20年金利引き下げタイプの仕様をクリア。

*:建築主さまのご好意により次世代型北海道住宅の普及のために会場をお借りしています。内覧会終了後はお引渡しが決まっておりますのでご見学の際には、ご配慮をいただきますようお願い申し上げます。また会場は住宅街ですので駐車場はございません。地下鉄をお使いになるか、車でのご来場の際は、近隣の迷惑にならぬようお願い申し上げます。

「チーム菊水」 紹介

■プロジェクトマネージメント(設計、監理)  山本亜耕建築設計事務所

■建築環境計画                  (有)タギ建築環境コンサルタント

■生   産(ゼネラルコンストラクター)    ㈱山謙工業
         ●電気設備:太進電設㈱
         ●機械設備:前谷設備㈱
          ヒートポンプ給湯器:㈱北海道日立
          ヒートポンプ暖房機:北海道エナジテック㈱
                       サンポット㈱       
          一種熱交換換気器:㈱ガデリウス

■断 熱 材                  積水化学北海道 ㈱

■断熱開口部の設計、施工         ㈱エンヴェロッブ

■道産白樺による積層ベニア        滝澤ベニア㈱

■建具及び可動間仕切り           ㈱日新インテック

2010年12月9日木曜日

リプラン12月28日号掲載 「チーム南あいの里」

4ヶ月に渡りみなさんに応援していただいた「チーム南あいの里」の活躍がリプランさんの記事に。先日、雪の日に取材していただきました。はじめはうす曇の空が撮影とともにどんどん晴れ上がり最後にはとうとう青空に。

概要 「南あいの里の家」と「チーム南あいの里」とは?
1988年より北海道が推進する優れた地域住宅の建設基準「北方型住宅」、厳しい北海道で快適な住宅とは何か?を求め、度重なる改定を経て現在に至ります。その北方型住宅のハイエンド仕様が北方型ECOプラス、国の進める長期優良住宅に見事選ばれ、先進的な設計思想が全国から大いに注目されています。南あいの里の家はそのハイエンドに位置する北方型ECOプラス仕様をさらに高めた内容のプロジェクトです。その設計+建設に参加したメンバーが「チーム南あいの里」です。プロジェクトマネージャー(設計+監理含):山本亜耕建築設計事務所、生産(ゼネラルコンストラクター):㈱丸稲武田建設、建築環境計画:(有)タギ建築環境コンサルタント、断熱材:積水化学北海道㈱、構造用製材:物林株式会社、ペレットストーブ及び道産ペレット:㈱イワクラ、道産白樺による積層ベニア:滝澤ベニア㈱、断熱開口部の設計、施工㈱エンヴェロップ。ぜひお楽しみに!

2010年12月8日水曜日

みなさん業界紙はいかが?

最近ずいぶんブログを読んでいただいているようで、ほんとうに設計者として嬉しい限りです。現場から極力ものづくりのリアリティーを伝えたい。そんな思いで始めたブログですがみなさんの応援のおかげでずいぶん回を重ねることができました。あらためて御礼申し上げます。このブログのおかげで、内覧会にもたくさんの方々に来ていただけるようになりましたが、みなさんとお話しをすると意外に多いのは情報の仕入先についての質問です。こんなに便利なIT社会のはずなのに?いやむしろ情報が多すぎてほんとうに必要で大切な情報が見えにくくなっているのかも知れません。いつもブログでお話しするように、北海道は建築技術の先進地、これほど豊富なノウハウが簡単に手に入る地域も日本では珍しいのです。もうひとつ忘れてならないのが住宅関連を扱う業界新聞社のレベルが高いこと。読者はほとんどが工務店さんや設計事務所ですがその分地域的で一目で北海道の住宅事情が分かります。住宅雑誌をたくさん買い込んで読みまくるのも楽しいものですが、たまには業界紙なんていかがでしょう?きっと灯台下暗し。意外な発見があるかもしれません。ご購読は意外にリーズナブル。下記は先日特集していただいた時のものです。

㈱北海道住宅通信社 HP http://www.juu-tsuu.jp/index.htm

菊水の家 椅子製作工事

写真は菊水の家に納める、ダイニングチェアの製作風景です。場所は道北、東神楽町にある㈱匠工芸さんです。弊社のオリジナルダイニングチェアをいつも作ってくれる家具屋さんとしてまた一流ホテルを始めとする製作家具や什器を製作する家具工房として最近ではみなさんおなじみですよね~(笑)。今回は製作の様子をお届けしましょう。シンプルで丈夫、おまけにリーズナブルな価格がクライアントのみなさんに人気のダイニングチェアですが、製作はご覧のとおり全て手作りの一品生産なんです。写真は治具(ジグ)にて締め付けて接着後の養生をしているところです。極力ビスや釘を用いず、楔(くさび)やほぞで組み立てるために発注から仕上がりまで2週間を要しますが、使ってみると実に洗練された座り心地です。良い椅子は一生もの。みなさんはどんな椅子が好きですか?

一見、毎度の形ですが、今回から改良されたニューフレームになりました。

こちらは一体の背と肘掛です。

布貼りバージョンです。

ペーパーコードバージョンです。