2009年9月19日土曜日

西岡の家 開口部取り付け

さて本日、午後からは、西岡の家。サッシが入り庇が出来ています。中央に見える大きな窓の両脇に見える窓は、工務店さんから在庫のものを良心価格で出していただきました。この世に流通というものがある限り、在庫というものが発生しますが、そうしたものに目を向ける動きが最近ずいぶん注目されるようになりました。不ぞろい野菜なんかも、以前は廃棄前提のいわゆる不良在庫、しかし美味しく食べられるのになぜ不良?...なの??という、たいへんまともな意見が最近多くて嬉しいです。このサッシも寸法の誤りで結局一度も使われることなくお蔵入り。でもそんな過去をもつ品だからこそ再生(リフォーム)プロジェクトにはぴったりだと思います。
中央の大きな窓の中心には向かいの公園のプラタナスの大木が見えるようにレイアウトしてあります。2階の階段を下りるときにいつも木々の緑を感じられるように。




通りからの眺めです。

庇は見事に頑丈に付いていました。棟梁にどうせなら60cmなんて言わないで1mくらい跳ねだせばよかったかも??(笑)なんて言ったら「やめましょうよ~」と顔で言われてしまいました。

親子鷹で現場を仕切るS棟梁、お父さんと同じ現場でまして自らが棟梁なんて素適でしょ?お若いのにご覧の通りのきれいな仕事。現在32歳とのことです。

管の貫通部分をしっかりウレタン充填します。
この建物は、圧力を掛けて気密測定を行ないます。今年から自分の現場は全数気密測定を標準で盛り込むことに決めました。道内の建築家の中ではまだまだ珍しいけれど、デザインと性能が両立して長く使える家を作りたいと思います。言い忘れましたが極力窓の上に庇を設けるのも、外断熱の場合は壁の仕上がりよりもサッシを引っ込めるのも、地味ですが窓を湿気から守り、建物を長持ちさせる工夫なんですよ。
それではみなさんよい週末を。


銭函の家 ピンチはチャンス

本日、朝一、スラブ(床のこと)のコンクリートを打設した銭函の家。よい事と、すこし残念なことがありました。以前紹介したとおり、最近は1階の床をコンクリートで作ることが多いのですが、本日の銭函地域は、午後より通り雨。当然現場も降られて床がプールに、床をきれいに均そうと待ち構えていた左官屋さんの仕事が一日伸びてしまいました。工程をリードして進んでいたので少し残念。反対によいことは、とりあえず左官屋さんが床を均し終わるまでは天気がもったことと、残暑の季節の大敵、直射日光と、水不足を回避できたことです。コンクリートは急激に太陽熱で乾かすと必ずクラック(細かいひび)が生じます。理想は散水しながら常時高湿度を保ちつつ20℃以上の温度で穏やかに固まるのを待ちたいものです。そんなわけで左官屋さんには申し訳ありませんが、今回は品質重視ということで...。
日曜出勤よろしくお願いいたしまーす。


うーん水鏡!じゃありません。深さ1cmのプール。
白と黒の斑点が見えます。

黒いところは表面のセメント成分が流されて細骨材(砂)が出ています。隣の白い部分は表面にセメント(トロ)が残った状態です。

こちらはプールにならなかった物置の床、船の上に乗り左官屋さんがコテで床を均してゆきます。見ていると簡単そうですが、やってみると実に繊細な作業で難しいです。

上が仕上げられている床面、下が砂が出ている状態です。そのまま乾くと当然ながら
砂っぽい室内になってしまいます。




2009年9月18日金曜日

庇 ひさし hisashi 

南側の窓の上には、夏場の日差し避けのために庇を付けることが多いです。どんどん、断熱をよくすると、燃費もたいへんよくなりますが、その分窓から入る太陽光に気をつけないと夏場がたいへん。そこで、薄手の庇をシュッと出します。先端の厚さは10cm、出は壁から60cm。しかしこれがなかなか難しく、各工務店さんによって様々なやり方があります。見ていて面白いので紹介しますね。

緑が丘の家

岩内の家


岩内の家と緑が丘の家はこのタイプ、まめに補強を入れて頑張ります。(T棟梁 作)


宮の沢の家



さらに庇全長が長い宮の沢の家は、寸切りボルトで庇がごめんなさいをしないように引っ張って補強しています。(F棟梁 作)

西岡の家では、なんとスチールプレートで跳ね出します。(S棟梁 作)
外から見ると同じようでも、棟梁のみなさんいろいろ工夫してくれています。この場をお借りして御礼申し上げます。
「いつもめんどくさくて、ごめんなさい。そしてありがとうございます。」



2009年9月16日水曜日

銭函の家 床(スラブ)型枠

平均台ではない。(笑)なにかというと...この上にベニアを敷いて鉄筋を組んでコンクリートを打つ準備をしているところ。床が固まると、この平均台のようなものは床下に職人さんが入りばらばらに解体して床の穴から外に出します。何気なくコンクリートを見てるけど元はどろどろ、型に入れて固めてようやく役に立ちます。要は型枠:かた+わくをいかに上手に作れるか?なのです。

定規を布基礎に打ってゆきます。


基礎屋さんは軽くこなしますが、このコンクリート専用釘でも打ち込むのはたいへんです。

オレンジが床下の給気温調整用のエキセルパイプ(樹脂製暖房用管)のサヤ管です。150Φが給気管です。このように基礎伏せ図を確認したときに出る管類を全て確認します。相手がコンクリートなので忘れると厄介です。


こちらは電気屋さんのCD(ガイド)管です。グリーンはアースです。冷蔵庫や洗濯機、電子レンジに暖房便座etcと、最近の家には特にアースは欠かせません。

2009年9月14日月曜日

銭函の家 基礎断熱工事完了

             
基礎の断熱工事が完了しました。 土に接する基礎部分は熱の大きな逃げ道でもあります。今回は消費する熱エネルギ-を最小にする為に通常の基礎断熱の約3倍の断熱材を用いています。


基礎の外部側全周に100mm、基礎巾150mmの内側に75 mm、床下に75mmです。


外部に出る管にも断熱が施されます。給水管を凍結から守ると同時に、室内の熱も不用意に地中拡散しないように考慮 した結果です。

塩ビ管の外周に断熱を施したさや管の中に水道管等を通します。

アースチューブの様子:画面奥の上に見える給気管から吸い 込まれた空気は地熱で予熱され、画面中央の2本の管より 室内に取り込まれます。極力機械を用いないで、外部の冷気を穏やかに加熱するのが目的です。

2009年9月13日日曜日

西岡の家 各部総チェック

壁を貼る、断熱材を貼る、防水をするetcこれらは全て骨組み
を隠すことを意味します。そこで本日はそれらの総チェックです。
*:ちなみに柱の根本がオレンジ色なのが分かりますか?
防腐措置が終わっている証拠です。

開口部の寸法に合った開口がなされているか?上下階の柱
同士の接合は図面指示通りか?現場からの質問も全て聞き
答えられる事は極力その場で明確にしてゆきます。曖昧さは
事故の元です。

水が回りやすい隅の部分の確認。

指定の構造強度をもつ金物が使われているかの確認。


外部を合板で覆うので薄型の同等品に変更して対処する。

2009年9月10日木曜日

銭函の家 布コン打設

本日も雨の前にコンクリートが打ちあがる見事な展開です。今日はコンクリート工事を解説いたしますね~。 青く見えているのがフォームポリスチレン板(通称FP板)商品名でスタイロフォームなんて言った方が分かりいいです。この建物は基礎の外側にこのFP板を100mm、内側に後ほど75mm接着します。副次的なメリットしてコンクリートを外断熱すると紫外線による劣化から守ることができます。いくらコンクリートでも太陽と風雨に平気でさらすような設計では(特に日本の建築用コンクリートは)長持ちさせようとすると相応の費用や手間を覚悟せねばなりません。
             
長い方が32トン引き抜き金物(32KNホールダウン金物)短く細い方が通常の12mmアンカーボルトです。前者は基礎+土台+柱の3つをしっかりつなぐことが目的、後者は土台のみを基礎とつなぐことを目的としています。赤→はHD、通常アンカーはと分けて数日前に打ち合わせたとおりの位置にセットされていることを確認後コンクリートを打設します。

少々分かりづらいですが、HDと通常アンカーの他にリブの付いた鉄筋が多数立ち上がっています。
その意味が分かる人はさすがです。弊社の標準設計では、新築においては1階の床をコンクリート         で作る場合が多いです。理由は、耐久性、北海道独自の使い勝手(1階を土足で使う、ペットと暮らす、雪で濡れるのを気にしない、)、蓄熱を含む優れた温熱環境(床を1階床をコンクリートで作ると冬暖かくて夏涼しい)等のメリットが多いからです。西岡の家でも述べたように日本の在来工法の場合は地面
に近い柱の根本や土台に被害が集中し易いのです。その際、床まで全てばらさないと交換や修理が出来ないつくりなのか、床はいじらなくてよいのかは大きくリフォーム費用全体に影響します。
             
この家には外の空気は地中を通って入ってきます。冬でもこの深さなら凍らないし安定した地温が保たれているので、外気を地中に通す間に暖めてしまえるからです。

何気なく埋めてあるように感じますがしっかり外部に向けて勾配が取られ、もし室内で管の内部に結露しても外部に設けた枡に結露水が流れ出るように工夫しています。
             

西岡の家 2階建て方 完了!

棟梁ありがとう!すごい!綿密な段取りで1日で上棟する。工期圧縮と工事費節減、高さ制限の厳しい1種低層地域でも十分な階高と天井高で北側斜線(高さ制限)をクリアできる新開発の小屋組みで両隣に比べてぐっと建物高さを抑えたプロポーション(縦横比)となります。

屋根があるだけでただの屋外が安心感溢れる室内に変貌します。外が内に(建築)に変わる瞬間です。大梁を倍掛け(90cm間隔)で渡し、梁成(梁のサイズ)にも余裕を見ていますが大梁同士をつなぐことでさらに面剛性と梁の最終降伏強度を最大限使えるようになります。そんなことを棟梁と打合せしました。     

             
必要であってもコンクリート基礎の作れない場合は鉄骨梁による代替法を取っています。こうした「直す、修理する」ノウハウは、新築を前提にした日本の仕様書には載っていません。実際に自らの現場をもって設計者は学ぶしかありません。今後は新築にもまして直し方(リフォーム法)の研究が望まれ            ます。

             
30年前の尺梁(梁の高さが1尺:約30cm)の下に新しい尺梁を補強のために叩き込みます。大工さんは簡単にこなしますが、みなさんも考えてみてください。当然古い梁は中央が下がっています。新しい梁はまっすぐです。普通は簡単に入りません。(笑)

後付けホールダウン金物 。今の建築基準法は新築を前提に仕様基準が書かれている。          しかし30年前にはそんな基準自体がなかった。さてあなたならどうする?(ホールダウン金物:土台と柱は鉄筋コンクリート製の基礎に埋め込んだボルトにより接合せねばならない。*:埋め込むためにはコンクリートが固まらないうち、すなわち新築時しか通常は難しい。そこで新築用と同じ材料規格の平板を同じビス本数で柱の外側から、柱+土台+基礎の順に接合している。■設計者のぼやき古い建物を再生できない訳を今の法律のせいにするのは好き ではありません。でも外観だけは立派で骨組み??なリフォームが世間に多いのも事実。一部の不心得者のために業界全体が悪者にされるのは悲しいことです。
外壁に外貼り断熱の下地と筋交いを兼用した合板を貼り付けます。その際、設計者は釘頭のめり込みに特に注意が必要です。写真は正しく打ち込み深さを調整した釘打機で打ったCN65釘と合板です。
         

2009年9月8日火曜日

銭函の家 そのコンセプト

銭函の家は、私の事務所で初めての0エネルギー住宅です。これからは大きなエネルギーにたよらない暮らしがいいです。実際、今まで私が作ってきた住宅のほとんどが過剰暖房設備住宅でした。銭函の家の発熱容量は3kw、住宅用のオイルヒーター2台分で50坪をまかないます。 建物の総合的な熱性能を示すQ値は0.6~1.0(換気の評価法による差)となり、特別な暖房をしなくても熱収支を常時+に維持するように設計しました。第二期工事で南面の外壁に太陽光パネルを取り付けると、自らが必要とするエネルギー以上の電気を生み出して現金収支上も+となる予定です。        

ECOは経済だ!と誰かが言いました。みなさんはどう思いますか?今のまま地球が温暖化するとほんとうに大変ですが建築家としてできる事はないのでしょうか?そんなことを考えながら作ったのが昨年の新川の家でした。でも残念ながらここまでが建築家個人の私の力の限界です。今ほんとうにECOな建築を作ろうと思ったらもはや私という建築家一人の知見ではとても足りるものではありません。             

新川の家は暖房費的には大成功でしたが、断熱本来の意味、開口部の設計の自由度や性能、パッシブ換気の進化等の部分ではさらに発展の余地がありました。銭函の家ではそれらを強化するために、熱環境コンサルタントや道内のサッシメーカー、商社、先鋭的な工務店といったその道のプロフェッショナル達の協力を得て私は主に全体的な統括や契約業務、クライアントの予算や工程を監理しながら、コンセプトや建築空間の追及に集中できるといった分業システムで楽をしながら設計できました。以前とは違い、熱分野や開口部分野の専属のスタッフが常時私をサポートしてくれます。個人的な美学や好みの押し付けを減らし、彼らを信頼して任せることで思いもよらないアイディアや発想が生まれました。            「建築家の作品ではなく時代の求める美しい道具を作ろう!」きっとコラボレーションが自分の殻を破ってくれる。

2009年9月7日月曜日

西岡の家 2階建て方

2階の床を厚手の構造用合板で補強したところ。空は今にも泣き出しそう。さて何をするのかと見ていると。合板床の養生用ビニールシート(通称:ツーバイガード)で2階の床が雨で痛まないようにまずは養生。実に丁寧な仕事。工務店さん「ありがとう」*:通常屋根から先に出来上がる日本の在来工法では床の養生は特に予算を見ない。逆に屋根が最後に出来るツーバイフォー 工法の場合は常識的に見るのが普通です。リフォームのために変則的に2階全てを解体し再度乗せるかたちで進む西岡の家の場合、全体的には在来工法でも工程的にはツーバイ工法となるためにこうした工夫が大切になります。

ワイパーを用いて空気を抜きながら床面に圧着して行きます。こうすると雨で合板が痛みづらくなります。


長い年月のために2階の梁の上端も各部で水平ではありません。本来は梁の上に隙間なく合板を乗せたいところですが各部の高さが違うためにパック(隙間に入れるフィラー)を挿入しながら水平を出します。
白い柱が新しいもの、それ以外がもとの柱です。まだ壁がないので、仮筋交い(仮設の揺れ止め)で1階を安定させます。

30年前の柱と梁に現代の集成材の柱、木材は腐りさえしなければ、年月と共に強度は上がり続ける。また含水率も人工乾燥のものとは比べものにならないほど安定している。見た目は少々わるくてもまったく使用に問題がないばかりか、かえってそっちの方が良かったりもする。(笑)      


近年の現場の新兵器、リモート式ユニッククレーン。(無線機でクレーンを遠隔操作できる。)つまり1人で材料の荷揚げが行なえる。オペレーターも上手なので僅か2mの巾の足場の搬入口から植木と電線を器用に避けて2階の床に見事に着地させる様子は実に気分がよい。荷揚げが下手だと変な汗をかいたり、最悪、材料が落下したりして危険極まりない。

ブームを精一杯伸ばして道路から10m奥の2階の床まで梁を搬入する。ブームがしなっているのが分かる。左手で材料を回転させ右手のリモコンでクレーンを自在に操っている。

合板の上から敷き土台を釘打ちする。継ぎ手はアリ継ぎ。要は2階の梁とこの敷き土台で2階の合板を締め付けて固定しようというもの。在来だが変則的なツーバイの床のような手順になる。

どうやってつながるかが分かりやすい継ぎ手の配置。継ぎ手の種類は金輪継ぎと尻ばさみ継ぎの一部を省略したもの。ずらしながら双方を叩き込み、中央に込み栓を入れて完成させるのが伝統だけど、今はコースレッドビスや釘打ち機もあるからね。(笑)