2009年9月8日火曜日

銭函の家 そのコンセプト

銭函の家は、私の事務所で初めての0エネルギー住宅です。これからは大きなエネルギーにたよらない暮らしがいいです。実際、今まで私が作ってきた住宅のほとんどが過剰暖房設備住宅でした。銭函の家の発熱容量は3kw、住宅用のオイルヒーター2台分で50坪をまかないます。 建物の総合的な熱性能を示すQ値は0.6~1.0(換気の評価法による差)となり、特別な暖房をしなくても熱収支を常時+に維持するように設計しました。第二期工事で南面の外壁に太陽光パネルを取り付けると、自らが必要とするエネルギー以上の電気を生み出して現金収支上も+となる予定です。        

ECOは経済だ!と誰かが言いました。みなさんはどう思いますか?今のまま地球が温暖化するとほんとうに大変ですが建築家としてできる事はないのでしょうか?そんなことを考えながら作ったのが昨年の新川の家でした。でも残念ながらここまでが建築家個人の私の力の限界です。今ほんとうにECOな建築を作ろうと思ったらもはや私という建築家一人の知見ではとても足りるものではありません。             

新川の家は暖房費的には大成功でしたが、断熱本来の意味、開口部の設計の自由度や性能、パッシブ換気の進化等の部分ではさらに発展の余地がありました。銭函の家ではそれらを強化するために、熱環境コンサルタントや道内のサッシメーカー、商社、先鋭的な工務店といったその道のプロフェッショナル達の協力を得て私は主に全体的な統括や契約業務、クライアントの予算や工程を監理しながら、コンセプトや建築空間の追及に集中できるといった分業システムで楽をしながら設計できました。以前とは違い、熱分野や開口部分野の専属のスタッフが常時私をサポートしてくれます。個人的な美学や好みの押し付けを減らし、彼らを信頼して任せることで思いもよらないアイディアや発想が生まれました。            「建築家の作品ではなく時代の求める美しい道具を作ろう!」きっとコラボレーションが自分の殻を破ってくれる。

2009年9月7日月曜日

西岡の家 2階建て方

2階の床を厚手の構造用合板で補強したところ。空は今にも泣き出しそう。さて何をするのかと見ていると。合板床の養生用ビニールシート(通称:ツーバイガード)で2階の床が雨で痛まないようにまずは養生。実に丁寧な仕事。工務店さん「ありがとう」*:通常屋根から先に出来上がる日本の在来工法では床の養生は特に予算を見ない。逆に屋根が最後に出来るツーバイフォー 工法の場合は常識的に見るのが普通です。リフォームのために変則的に2階全てを解体し再度乗せるかたちで進む西岡の家の場合、全体的には在来工法でも工程的にはツーバイ工法となるためにこうした工夫が大切になります。

ワイパーを用いて空気を抜きながら床面に圧着して行きます。こうすると雨で合板が痛みづらくなります。


長い年月のために2階の梁の上端も各部で水平ではありません。本来は梁の上に隙間なく合板を乗せたいところですが各部の高さが違うためにパック(隙間に入れるフィラー)を挿入しながら水平を出します。
白い柱が新しいもの、それ以外がもとの柱です。まだ壁がないので、仮筋交い(仮設の揺れ止め)で1階を安定させます。

30年前の柱と梁に現代の集成材の柱、木材は腐りさえしなければ、年月と共に強度は上がり続ける。また含水率も人工乾燥のものとは比べものにならないほど安定している。見た目は少々わるくてもまったく使用に問題がないばかりか、かえってそっちの方が良かったりもする。(笑)      


近年の現場の新兵器、リモート式ユニッククレーン。(無線機でクレーンを遠隔操作できる。)つまり1人で材料の荷揚げが行なえる。オペレーターも上手なので僅か2mの巾の足場の搬入口から植木と電線を器用に避けて2階の床に見事に着地させる様子は実に気分がよい。荷揚げが下手だと変な汗をかいたり、最悪、材料が落下したりして危険極まりない。

ブームを精一杯伸ばして道路から10m奥の2階の床まで梁を搬入する。ブームがしなっているのが分かる。左手で材料を回転させ右手のリモコンでクレーンを自在に操っている。

合板の上から敷き土台を釘打ちする。継ぎ手はアリ継ぎ。要は2階の梁とこの敷き土台で2階の合板を締め付けて固定しようというもの。在来だが変則的なツーバイの床のような手順になる。

どうやってつながるかが分かりやすい継ぎ手の配置。継ぎ手の種類は金輪継ぎと尻ばさみ継ぎの一部を省略したもの。ずらしながら双方を叩き込み、中央に込み栓を入れて完成させるのが伝統だけど、今はコースレッドビスや釘打ち機もあるからね。(笑)  

2009年9月5日土曜日

銭函の家 配筋検査


長期優良住宅は構造強度2割UP
従って主筋はSD16×2なんてことに。



狭き門から22m下に敷地がある
ミキサー車も圧送車も小型で。
バイブレーター+筒持+均し手の息
を合わせてコンクリートを打設する。


かわいい8トン(通常は11トン)
ミキサー車。


最近は住宅の布基礎も地中梁

扱いでフック付。


8/31(月)の地鎮祭から5日目にして配筋検査(瑕疵担保履行法)
及びベースコン打設完了!まさに住吉神社のご利益絶大です。
運よく天気が続いたり、土曜日予定のコンクリートが前日 午後に
ぴったり現着したり。検査員が良くテキパキしている等々。
幸運が続き予定工程を1日先行。実に気分の良い一週間です。

2009年9月2日水曜日

西岡の家 解体工事-2”びっくり!


 あったはずの2階がない! 現場を見に来たオーナーさんびっくり。 
「なーんもなくなっちゃうですね~」  リフォームを甘く見てはいけない。
かなりヘビーなリフォームです。  というかある意味新築以上です。
もうほとんどばらばら状態

なにをしているかというと、基礎断熱

そう「き.そ.だん.ねつ」厚さ100mmのスタイロフォームを
きれいにした基礎にコンクリートボンドで接着します。これで1階の床は飛躍的
に暖かくまた燃費が改善します。100mmのスタイロは高価ですがけして
ケチっちゃいけません。




以前の床下換気口はきれいに埋めてしまいます。基礎断熱すると床下に外気を入れる必要がなくなるからです。


土台もボケ(ダメ)てるわ~。やはり33年の月日は伊達じゃありません。
土台交換、柱継ぎ、補強かまし金物継ぎ技を駆使して頑張ります。
おーい全部新品になっちゃうぞー。
それってもうリフォームじゃないよね?
(笑)

2009年9月1日火曜日

銭函の家 地鎮祭に想う

今日は、今年の新築物件である「銭函の家」の地鎮祭です。

オーナーさんは昨年の「新川の家」のお嬢さん夫婦。今年も良いご縁を頂きました。
設計の様子はmixiでもお伝えしたとおり七転八倒。(笑) まあもう収まりましたけど。


大好きな街、小樽の現場ということもあり、今後が楽しみです。


小樽は古い街です。お宮さんも住吉神社さんに来ていただきました。
現場の安全や一家の繁栄を願い宮司さんが述べる口上を、神道の地鎮祭
では祝詞(のりと)と申します。


来られる神社さんによって少しずつ節回しや内容が違うのですが今回の宮司さんの
祝詞はその声の響きといい実に見事なものでした。
まだ勤め人の小僧の時分、同じく港町は羽幌で聞いたものに負けない力強さ。

ほんと気が引き締まりました。 頑張るぞ!








海に向かって祭壇。

2009年8月29日土曜日

西岡の家 解体工事



















築33年の西岡の家


■リフォームなのでまず解体をしてみると



















まず小屋組みは状態良し!




















しかし、外壁が黒く変色している。


むむっ!嫌な予感!





















木材は水分で腐敗すると、虫(主に蟻)の格好の餌になる。




















下地のバラ板もこの通り、蟻のトンネルが見える。




















もともと10cm角はある柱がこんなになる。


これは典型的な壁内結露の状態。室内の湿気が壁内に入り

出口を失い、木材が腐敗→蟻のえさとなる場合が多いです。

対策としては


1:材料の防腐処置

2:外気側通気層の設置

3:防湿層の設置


の3点セットが有効です。


1.西岡の家

■西岡の家(大規模リフォーム)


いよいよ始まった今年の現場、例年より3ヶ月も遅く、完成のころにはすっかり秋。
しかしスケジュールには恵まれなかったけれど、内容は充実したものになりました。


リフォームというと、まだまだ部分的修理の感が強いけれど今回の計画は、完成
するとまったく新築というもの。(要は~そっくさんです。)
耐震性や断熱性、省エネ性能も新築とほとんど変わりません。
今、世の中には中古住宅が余ってきているし、そうした中古住宅のほとんどが便利
な都心近郊の住宅街に建っていることを考えると、壊すよりはしっかり救う手立てを
考える方がこれからの世の中に合っていると思います。


しかし心配なのは、リフォームの中味。
実は日本では今まで新築中心だったがために法律もそう出来ていて、すなわち新築
するならばあれこれ守るべき法律や基準が多々あるのですが、直す(リフォーム)
となるとほとんど野放し状態。結果、「悪徳リフォーム業者逮捕!」なんて報道が過去
にもたくさんされました。
そこで西岡の家では「R住宅」の補助金を使うことで新築とほとんど変わらない品質を
確保しようと考えました。この補助金は北海道独自のシステムで今後建て主の皆さん
にはお勧めです。
ものすごく簡単にその主旨をまとめると、中古リフォーム住宅に新築なみの設計基準
達成を条件に最大200万円(平均約130万円)を補助するというものです。
その基準も北海道で生まれ、たくさんの実績をもつ北方型住宅の基準に概ね則った
ものですから、建て主にとってはさらに安心なのではないでしょうか。
まさに建築も新築からリフォームへ、エコノミーからエコロジーへといった感じがします。

*:詳しく知りたい方は:
北海道R住宅推進協議会HP:http://hokkaido-r.jp/
北方型住宅HP:http://www.kita-sumai.com/
北海道立北方建築総合研究所 http://www.hri.pref.hokkaido.jp/